広がる「廃線観光」その魅力とは 廃止間近のJR三江線でも「観光化」、実現なるか

広がる「廃線観光」その魅力とは 廃止間近のJR三江線でも「観光化」、実現なるか

  • 乗りものニュース
  • 更新日:2017/11/13

線路という「いまあるもの」を観光資源に

JR西日本の三江線が、2018年3月末をもって廃止されます。島根県の江津駅と広島県の三次駅を結ぶ約108kmの路線で、沿線市町では代替となるバスの運行計画が策定されるとともに、線路や駅といった施設をどうするかも模索されています。

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JR三江線の宇都井駅。毎年11月には、住民有志が駅をライトアップする(画像:邑南町)。

「廃線」は、そのまま放置されたり、跡地が道路に転用されたりすることもありますが、観光資源として活用されている事例もあります。たとえば三江線沿線の島根県邑南(おおなん町では、町内の三江線跡地を鉄道公園とする計画があるといいます。計画を推進する民間団体「江の川鉄道応援団」の松島副団長に話を聞きました。

――三江線跡地の「鉄道公園」化計画とはどのようなものでしょうか?

町内の口羽(くちば)駅から宇都井(うづい)駅に至る区間を活用し、遊具に近い形での車両運行や、レールバイク(自転車のようにペダルが付いたトロッコ型の乗りもの)の運転体験を提供することを計画しています。行政で施設を保有し、わたしたち地域団体で事業を行う、あるいは事業者を全国に募集する形で行うこともあり得るでしょう。

――「廃線」は観光資源になるのでしょうか?

はい。邑南町には大きな産業がなく、観光を活性化しようとしても、人を呼び込むだけの施設もありません。さらに鉄道路線までもなくなりつつあるなか、線路という“いまあるもの”を活用して人を呼び込むことが狙いです。岡山県の片上鉄道(1991年廃止)や、岐阜県・富山県の神岡鉄道(2006年廃止)、秋田県の小坂鉄道(2009年廃止)など、廃線を観光資源として活用している成功例に学びました。

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邑南町では現在、「江の川鉄道応援団」など住民らの働きかけを受け、線路施設の譲渡などについてJR西日本と協議中だといいます。「民間での施設保有は難しいので、三江線の代替交通機関の営業に必要な施設とともに、観光活用のための施設についても個別に協議している」そうです。松島さんと邑南町によると、沿線のほかの自治体でも観光活用の構想はあるといいますが、それについて市町レベルで協議されているのは、現在のところ邑南町だけだそうです。

ちなみに、高さ20mの高架橋上に位置し鉄道ファンから「天空の駅」とも呼ばれる宇都井駅では、「江の川鉄道応援団」および地域住民により、「INAKAイルミ」と題したライトアップが毎年11月に行われています。2017年は11月25日(土)、26日(日)に開催予定で、松島さんは「過疎の地域を元気づけるべく始めたイベントで、2017年で8年目です。周辺の田畑や民家にもイルミネーションを配置し、宇都井駅のある谷全体でひとつの空間を構成します。これも、行政が施設を保有することになれば、回数を増やすことができるかもしれません」と話します。

「廃線活用事業者」の全国組織も 「廃線観光」は大きなうねりに?

前出のように、「江の川鉄道応援団」が三江線における廃線後の活用案として参考にしたもののひとつが、旧・神岡鉄道の事例です。NPO法人「神岡・町づくりネットワーク」により、旧・奥飛騨温泉口駅(岐阜県飛騨市)を拠点に廃線をレールバイクで走る「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」に利用され、年間4万人以上が訪れる人気スポットとなっています。2016年4月には、現役時代の車両を走らせることも行われました。

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旧・神岡鉄道の線路をレールバイクで走る「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」(画像:神岡・町づくりネットワーク)。

廃線の活用事業を営む団体の連携組織「日本ロストライン協議会」の設立総会も開催され、全国から事業者が集まりました。その幹事でもある神岡・町づくりネットワークに、廃線活用の現状について話を聞きました。

――廃線はどのように活用されているのでしょうか?

わたしたちのように線路も駅もあり、レールバイクのような“乗りもの系”のアクティビティを提供しているところもあれば、線路がなくトンネルや橋といった施設だけがあり、廃線のトレッキングツアーを主体としているところなどもあります。

――廃線観光の魅力とはどのような点でしょうか?

現役の地方鉄道にわざわざ乗りにくるのは、鉄道に興味のある方が大半だと思いますが、廃線の観光はその“ハードル”がぐっと下がると感じています。訪れる方の多くは単に「きれいな景色を楽しみたい」「暗いトンネルを通ってみたい」「そこでライトな乗りものがあるなら乗ってみたい」といった動機で、鉄道の知識を必要とすることなく、それぞれの楽しみ方をされています。

一方で、廃線に残るレールや、トンネル、橋といった遺構は当然ながら、かつてそこで使われていた“本物”です。レールバイクで線路を走り、レールの継ぎ目を通過するときのガタンゴトンという音を体で感じたり、線路跡を歩きながら「昔の車窓はこうだったんだね」と想いを馳せたりと、鉄道に興味のない方でも本物ならではの体験を味わうことができるのです。

――廃線の活用で課題になるのはどのようなことでしょうか?

遺構の持ち主は誰か、ということでしょう。安全基準なども、その持ち主の考え方によって異なります。第三セクターからの廃線の場合は、自治体が持ち主である場合が多いので、廃線の活用事業も比較的スムーズに運ぶケースが多いですが、たとえばJRからの廃線でしたら、どこが施設を譲り受けるのか、どんな条件かといった調整が必要になり、その後の施設維持はどうするか、といったことも問題になります。このため、廃線の活用事業者はそれぞれで発足の経緯がまったく異なり、それぞれに実現までのドラマがあるのです。

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神岡・町づくりネットワークは、「10年前にわたしたちがレールバイクを始めた当初は、神岡鉄道のファンや地元の方しか来ないだろうと思っていましたが、ふたを開けてみると、そのような方はむしろ少数派」だといいます。営業路線としては廃止されたものの、その廃線を活用することで、新たな観光客の獲得に成功しているようです。

実際、廃線を巡るツアーも全国で数多く実施されており、自治体や民間団体による主催のほか、大手旅行代理店の阪急交通社でもこれに着目しているといいます。

「移動手段でなくなった鉄道を、コンテンツのひとつとして盛り込むツアーが増えています。というのは、廃線が遊歩道などとして整備され、桜や紅葉のスポットとなっていることもあります。それだけでも観光の価値がありますが、そこに『廃線』という要素があることで、一般の方にとっては『新しい』形のツアーとして受け入れられ、鉄道ファンならずとも広く人気があります」(阪急交通社)

廃線のツアーだけでなく、三江線など廃止間近の路線をめぐるツアーも人気が高いといいます。

三江線の廃止後に向け活用法を構想する「江の川鉄道応援団」の松島さんは、「今後、廃線は全国でさらに増えるはず」といい、「わたしたちの取り組みがひとつの模範になれば」と意気込んでいます。

【地図】三江線と、記事中に登場した廃線の位置

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三江線は島根県・広島県の山間部を結ぶ。廃止された片上鉄道や神岡鉄道、小坂鉄道では、レールバイク体験や、かつての車両を走らせることなどが行われている(国土地理院の地図を加工)。

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