『おんな城主 直虎』、終盤に来て神がかり的面白さ...本能寺の変の新説が最高のリアリティ

『おんな城主 直虎』、終盤に来て神がかり的面白さ...本能寺の変の新説が最高のリアリティ

  • Business Journal
  • 更新日:2017/12/05
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柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第48回が3日に放送され、平均視聴率は前回より0.6ポイント増の11.9%だったことがわかった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

駿河を拝領して歓喜に沸く徳川家のもとに、織田信長(市川海老蔵)からの使者が訪れる。甲斐からの戻りがてら、遠江の名所を訪ねたいというのだ。家康(阿部サダヲ)は粗相があってはならないと万全の体制を敷き、信長を丁重にもてなす。信長はたいそう喜び、もてなしの礼がしたいので家臣一同安土城に来るようにと家康に伝える。家康はこれを、誘い出して殺害しようとする罠ではないかと疑う。

一方、井伊谷では謎の捨て子が見つかり、後に今川氏真(尾上松也)がかかわっていたことが判明する。氏真に仔細を問いただした直虎は、信長が家康を招いたのはやはり罠で、明智光秀(光石研)はそれを逆手にとって信長を討つつもりだと聞かされる。捨て子は光秀の実子で、この計画に氏真の協力を得るために人質として彼が自主的に氏真に差し出していたのだ。直虎は計画の全容を知り、信長に代わって天下取りをめざすようにと家康に迫る――という展開だった。

信長による家康暗殺計画が本能寺の変の背景にあったという、これまであまり取り上げられることがなかった説を採用してきたことを評価したい。この説は、信長は家康を京に招いて暗殺する手はずだったが、暗殺の実働部隊となるはずだった光秀が裏切ったため、本能寺で命を落としたというものだ。数ある説のなかでも、信長が自分で自分の描いた策にはまったとするところにおもしろさがある。

もちろん、本能寺の変の真相などわかろうはずもないし、別にNHKもこれが正しいと言うつもりはさらさらないだろう。とはいえ、大河ドラマで繰り返し描かれた歴史的大事件を真正面からとらえた上で、一般的な説ではなくマイナーな説を自然な展開で取り入れた脚本はドラマとしては大成功といえるのではないか。

今作の信長は、表情ひとつ変えずに静かな口調で淡々と冷酷な命令を伝えることが多く、一貫して人間性の感じられない不気味な人物として描かれた。劇中では一度も声を荒立てたり暴力を振るったりしたことがないのに、信長の登場シーンにはいつも「何がきっかけで怒り出すかわからない」「一度キレたら何をされるかわからない」という極度の緊張感が漂っていた。「手に入らないのなら殺してしまえ」理論で家康の嫡男・信康(平埜生成)が死に追いやられた事件は視聴者の記憶にも新しい。

信長を徹底的に“恐怖の魔王”と描いてきたからこそ、光秀は氏真が計画への協力を持ちかけた際に語った、この機を逃せば「血も涙もない男が天下を握ってしまう」との言葉が生きてくる。大河ドラマにおける本能寺の変といえば、1965年放送の『太閤記』において「信長を死なせないで」との嘆願が視聴者から殺到したというエピソードが有名だが、逆にこれほど「この信長は死んでも当然」と視聴者に思わせた大河ドラマも珍しいのではないか。本能寺の変の計画は事前に周囲に漏れていたが、誰もが口をつぐんで事が起こるままにさせたという描写もなかなかリアルに感じる。

あくまでも井伊直虎を主人公に据えた本作において、ここまで本能寺の変をしっかりと描いたのも意欲的だし、直虎と氏真、直虎と家康という2つの人間関係をガッチリと絡めてきたのも見事だ。大河ドラマは終盤に失速する例が少なくないが、『直虎』は終盤におもしろい波が何度もやってくる。龍雲丸(柳楽優弥)が登場した中盤の中だるみがなければもっと名作になっていたと思うが、次週はそんな龍雲丸も再登場するようだ。最後の最後に「やっぱり龍雲丸は、このドラマにいらなかったな」と言われないような活躍を期待したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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