欧米で大論争!「クリスマス」をめぐって深刻な分断が起きている

欧米で大論争!「クリスマス」をめぐって深刻な分断が起きている

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/12/06
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クリスマスをめぐるデリケートな事情

神戸市の世界最大のクリスマスツリープロジェクトが賛否を呼んでいるが、アメリカでもクリスマス・デコレーションが話題だ。

近年、欧米では、クリスマスはそれなりにデリケートな問題になっている。

多くがキリスト教を国教としてきた欧米では、クリスマスを中心に休暇をとる習慣がある。日本のお正月休みのような感覚だろう。デパートなどの小売店にとっては絶好の商機であり、店のディスプレイや装飾はクリスマス仕様に一変する。

しかし、公的な場面となると話は別だ。大統領が聖書に手を置いて宣誓し、演説でしばしば神に言及するといった点では日本とは異なるが、米国は政教分離を掲げる国だ。国家が特定宗教集団だけを益するような振る舞いは基本的には認められない。

だが、イエスの誕生日を祝うクリスマスは間違いなく宗教的な慣習だ。価値観・世界観が多様化した社会において、特定宗教の信仰対象の祝祭は問題にならざるをえない。

このあたりについては、クリスマスがそもそも消費文化として定着した日本では、むしろルーズになっているのかもしれない。

トランプの立場は「メリー・クリスマス」

近年、欧米においては、公的な場面では「メリー・クリスマス」ではなく「ハッピー・ホリデイズ」と言い換えるべきではないかといった議論も起きている。

2015年には、スターバックスのクリスマス・シーズンのカップデザインが問題になった。それまでスタバはサンタクロースやもみの木などをあしらったカップをリリースしてきたが、同年、非キリスト教徒にも配慮して赤一色のデザインにした。

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〔PHOTO〕gettyimages

だが、これに対して保守的なキリスト教徒から批判が生じたのである。

さまざまな調査があって正確な数字は不明だが、米国民の半数以上は「メリー・クリスマス」と言うことに違和感はなく、「ハッピー・ホリデイズ」と言い換えるべきだ、あるいは何も言うべきではないといった意見は少数派のようだ。

ただ、高齢の人々はクリスマスにこだわり、若年層ほど中立的な「ハッピー・ホリデイズ」を好むという世代間の違いもあるようだ。政治的な立場によっても有意な差異がでるだろう。

一見、呼称をめぐる些細な問題のように思われるが、つまりはキリスト教文化を卓越した伝統として特別扱いするかどうかということであり、保守かリベラルかといった政治観とも結びつく問題なのである。

この点に関して、トランプ大統領の立場は明確で、米国の伝統である「メリー・クリスマス」を使うべきだと主張している。

11月末には英国の極右団体による反イスラーム的な動画をリツイートして批判を集めたが、ここでも保守的なキリスト教徒の立場を打ち出している。

ホワイトハウスの異教デコレーション

しかし、そのトランプ大統領が執務を行うホワイトハウスをめぐって、意外な事態が生じている。

問題になっているのはホワイトハウスのクリスマス用のデコレーションだ。オバマ前大統領の時もデコレーションは行われ、その時はミシェル夫人がデザインを考えた。

そして今回は、メラニア夫人の案で飾られたのであるが、これが思わぬ波紋を呼んでいるのだ。

デコレーションの様子は下記のような動画で公開されている。

美しさを称賛するコメントも無数にある。

しかし、このうち廊下の部分を全体的に暗めに撮影した写真がツイッターで出回り、メラニア夫人が「異教(ペイガン、pagan)」を信じているという情報が拡散されているのだ。

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I get it! Melania is honoring pagan rituals! Bringing the real holiday back! @realDonaldTrump
— Con rruption (@kenjstarr)
2017年11月29日
from Twitter

上のように、同じ場所のオバマ時代の写真と比較して、異教の儀式を行うメラニア夫人から本物の休暇を取り戻せといったツイートも存在する。

さらに問題なのは、こうしたツイートに対して、メラニア夫人が下記のようなツイートをしたという画像が出回っていることだ。

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#maddow This is a pretty weird Whitehouse Christmas display.

Is @flotus Melania Trump a Wiccan? Wicca is Pagan Witchcraft
— vlh (@coton_luver)
2017年11月30日
from Twitter

メラニア夫人は「クリスマスは異教の祭りが起源であり、単にオリジナルに戻ろうとしているに過ぎず、一部の人々は古い神々の崇拝の仕方を忘れてはいない」とツイートしたことになっている。

しかし、この画像はフェイクである。なぜ、このようなフェイク・ツイートが出回っているのだろうか。

学問的に見た場合、フェイク・ツイートにあるように、クリスマスは異教の祝祭がキリスト教に取り込まれたものであると考えて良いだろう。

そもそも聖書にはイエスの誕生日に関する記載はない。キリスト教以前の宗教において、冬の終わりを告げる冬至が祝われたのが、救世主の降誕に読み替えられたものと思われる。古い宗教の神や祭が後続の宗教に引き継がれることは珍しくない。

キリスト教において最も重要な復活祭が3月下旬から4月上旬に祝われるのは春の到来を祝った習慣の名残りだろうし、教会が東側に祭壇を置くように造られるのは太陽崇拝の痕跡を思わせる。

しかし、キリスト教の信仰世界では、自然崇拝は原始的な宗教観として忌避される傾向が強い。

したがって、ペイガンという言葉も、単にキリスト教との差異を意味するだけでなく、キリスト教と対立する野蛮な信仰という攻撃的なニュアンスで用いられることが多い。

要するに、ペイガンは、「非」キリスト教というだけでなく、「反」キリスト教を含意する表現なのである。

「闇に包まれたホワイトハウスに光を」

ホワイトハウスのデコレーション批判やフェイク・ニュースの拡散はトランプ批判の一環ととらえて良いだろう。実際、「闇に包まれたホワイトハウスに光を取り戻そう」という主旨のツイートが見られる。

他方で、トランプ批判のために「ペイガン」という表現でメラニア夫人を攻撃し、しかもそれがある程度有効に機能する背景には、やはりキリスト教文化とそれに由来する独特の想像力があるように思われる。

ヨーロッパの古い街では、城壁で囲まれた領域の中心部に城と教会がある。中心に政治権力と宗教権力が位置しており、そこから離れるほど人間性と聖性が低下するのだ。

とりわけ城壁の外の森は、ペイガンの魔女たちが跋扈する非人間的な世界として想像されてきた。

そしてヨーロッパの民話やそれを元にしたディズニー・アニメでは、常に魔女は城の中に入り込もうとする。『白雪姫』でも『眠れる森の美女』でも、魔女が災いをもたらし、国が暗い影につつまれる。

前述のフェイク画像をツイートした人は、「メラニアはウィッカ(女神崇拝)なのか?ウィッカは異教の魔女だ」と告発気味に書いている。

出回っている画像には、廊下の画像に『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のジャック・スケリントンや、『マレフィセント』(原作は『眠れる森の美女』)でアンジェリーナ・ジョリーが演じた魔女を合成したものもある。

さらに、ペイガンのメラニア夫人が実は真の大統領であり、トランプはその操り人形にすぎないといったツイートもある。こうした語りには「城の中に入り込んだ魔女」という独特の想像力があるように思われる。

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〔PHOTO〕gettyimages

ホワイトハウスに入り込んだ魔女

周知のように、メラニア夫人は生粋のアメリカ育ちではなく、ヨーロッパからの移民である。

しかも英仏独といった西ヨーロッパではなく、旧ユーゴスラビアのスロベニアの出身だ。古いヨーロッパのしかも僻地からやって来た女性といったところだろう。その分、ペイガンや魔女といったイメージと結びつけやすい。

メラニア夫人はユーゴ内戦のために学業を断念して渡米した。モデルとしても通用した美しさもあってトランプの後妻となり、永住権を獲得してから20年も経たずにファーストレディに上りつめた。

メラニア夫人の来歴は、従来であれば、アメリカン・ドリームの物語として賞賛されたかもしれない。しかし、トランプ批判と結びつけられることで、権力中枢に入り込んだ魔女の物語に読み替えられたのだ。

トランプ大統領やメラニア夫人の政治家としての是非を問うことは本稿の関心ではない。

だが米国において、反トランプでリベラルを自称する人々も、批判のためにメラニア夫人の魔女イメージを強調したがる状況には違和感を覚える。

その根底にあるのは、自文化中心主義や移民排斥といったきわめてトランプ的な価値観かもしれないのである。

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