アクセンチュアが会津若松のデジタル化実証事業拠点を強化、その狙い

アクセンチュアが会津若松のデジタル化実証事業拠点を強化、その狙い

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  • 更新日:2019/04/24

2019年4月22日、福島県会津若松市の中心部に「スマートシティAiCT(アイクト)」がオープンした。会津若松市が推進するスマートシティ構想における先端テクノロジーの実証事業や社会実装を促す中核拠点としてICT関連企業やベンチャー企業が入居し、会津大学や地元企業、地域市民とのオープンイノベーションを実践していく場となる。

同日午前にはAiCTオフィス棟の開所式が交流棟で開催され、施設所有者である会津若松市とAiYUMU(あゆむ)のほか、入居するICT企業、会津大学、地元企業、国や福島県などからおよそ250名が出席した。

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会津若松市にオープンした「スマートシティAiCT(アイクト)」。AiCTは「会津ICT」の略だが、“A”にはAIZU、AI、Advance(前進)などの意味も込められている(左手が交流棟、右手がICT企業の入居するオフィス棟)

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AiCT交流棟。休日には市民や観光客にも開放し、地元大学や地元企業が主催する市民講座なども開催する計画。産官学+市民の交流と連携の場を目指す

また同日、オフィス棟入居企業の1社であるアクセンチュアが、2011年から会津若松市内で運営してきた「イノベーションセンター福島」をAiCT内に移転し、センターの規模と活動内容を拡充していくことを発表した。同日午後には同社 代表取締役社長の江川昌史氏、イノベーションセンター福島 センター長の中村彰二朗氏が出席し、2011年の東日本大震災を契機に始まった取り組みのこれからについて説明がなされた。

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AiCTオフィス棟の1階に移転したアクセンチュア「イノベーションセンター福島」。写真は顧客打ち合わせなどを行うスペースで、人が集い交流する“囲炉裏”や“掘りごたつ”をイメージした内装デザインとしている

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イノベーションセンター福島のロゴと、会津の郷土玩具「赤べこ」モチーフの巨大な“白べこ”。来訪者がメッセージを書いた赤いステッカーを貼ることで、徐々に赤べこが完成していく仕掛け

先進ICT技術の研究開発/実証拠点として、首都圏からもICT企業を誘致

AiCTは、観光名所である鶴ヶ城や会津若松市役所やからほど近い会津若松市東栄町にオープンした施設群(エリア)の総称。官民共有施設として地元企業のAiYUMUと会津若松市が所有者となり、管理運営はAiYUMUが行う。

総敷地面積はおよそ9500㎡(約2900坪)で、企業が入居する4階建の「オフィス棟」と、市民や学生も含めた交流の場となる「交流棟」を中心に構成されている。4月時点でのオフィス棟入居企業は17社、約400名(入居予定含む)。入居各社は、アナリティクス、AI/ロボティクス、セキュリティ、ビッグデータ、フィンテックといった先進テクノロジーの研究開発や実証事業のための拠点としてAiCTを位置づけている。

■オフィス棟入居企業(2019年4月時点、予定含む):アクセンチュア、TIS、エフコム、エヌ・エス・シー、イノーバ、エムアイメイズ、イクシング、デザイニウム、フィリップス・ジャパン、SAPジャパン、日本マイクロソフト、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、會津アクティベートアソシエーション、日本電気(NEC)、アイザック、三菱商事、シマンテック

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会津若松市長や地元企業代表、入居するICT企業代表、国のIT政策担当大臣などによるテープカットが行われた

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開所式で登壇した会津若松市長の室井照平氏

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AiYUMU(あゆむ)代表取締役社長の八ッ橋善朗氏

開所式で主催者あいさつに立った会津若松市長の室井照平氏は、スマートシティAiCTは同市が2013年(平成25年)に策定した「スマートシティ会津若松」構想、さらに2015年(平成27年)策定の地方創生ビジョン「会津若松市 まち・ひと・しごと創生総合戦略」の一環に位置づけられる事業であることを説明。そのうえで、今回のAiCT開設によって、国内唯一のコンピューター理工学専門大学である会津大学が立地する優位性も生かしながら「新たな人の流れと雇用の場の創出、若者の地元定着、地域経済の活力維持/発展を図るため、ICTオフィスの環境整備を行い、首都圏のICT企業の誘致をすることができた」と語った。

「AiCTオフィスには、世界的なICT企業の日本法人も含め多くのICT企業が入居する。今後は地方モデルの実証事業とその次の“実装”事業、官民連携や地元企業連携による新事業の創出、技術交流の促進が図られることに期待している」「地方都市でありながら、よりグローバルなICT産業の進展に寄与してきたいと考えている」(室井氏)

またAiCTの運営者であるAiYUMU代表取締役社長の八ッ橋善朗氏は、今回のAiCT開設は「東日本大震災以降8年間、復興への多くの人々の努力がなければ成し遂げることができなかった事業」だったとあいさつ。スマートシティ構想の議論を深めてきた市議会、地元金融機関からの支援、さらに会津大学における産学協同の取り組みと成果がなければ実現しなかったとしたうえで、今後はAiCT入居企業からのグローバルな視点に基づく知見も生かしながら、取り組みをさらに発展させていきたいと語った。

そのほか開所式では、情報通信技術(IT)政策担当及び内閣府特命担当大臣、福島県知事、国会議員らによる来賓祝辞やテープカットが行われ、「地方創生」の先進モデルとなっている会津若松市の新たな取り組みと、世界への発信拠点となるAiCTへの期待が語られた。

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ちなみにAiCTは鶴ヶ城、会津若松市役所のいずれにも徒歩数分で行ける立地に位置する

「旧態依然としたモデルとは違う」地方創生モデルを提唱し、実践

AiCTオフィス棟の1階には、アクセンチュアのイノベーションセンター福島が移転し入居した。フロア面積はおよそ300坪で、ここで250名の従業員が働く予定だという。同日午後に行われたアクセンチュアの記者説明会では、同社 社長の江川氏、センター長の中村氏が登壇し、会津若松市における8年間の取り組みの変遷やイノベーションセンター福島拡充の狙い、従来型の「地方創生モデル」との違いなどについて説明された。

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今回のAiCTオープンは、首都圏からの先端技術事業/機能の移転プロジェクトとも位置づけられている

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アクセンチュア 代表取締役社長の江川昌史氏

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同社 イノベーションセンター福島 センター長の中村彰二朗氏

江川氏は、2011年の東日本大震災をきっかけとして始まった会津若松市におけるアクセンチュアの取り組みを大きく3つのフェーズに分けて紹介するとともに、アクセンチュアが提唱する、従来型とは異なる「地方創生モデル」の特色を説明した。

同社では東日本大震災発災直後の2011年8月、被災地域の復興と産業育成を支援する拠点として、会津若松市内にイノベーションセンター福島を立ち上げた。2011~2012年当時は“震災復興支援”の色合いが強く、復興に向けた新たな道筋を示すべく、デジタル/オープン/市民中心といったキーワードを軸とする「会津創生8策」を策定。また会津大学でアナリティクス人材育成のための寄付講座を提供するなどして「一歩一歩、会津の土地、皆さんと近づいていった」と江川氏は語る。

続く2013~2016年のフェーズでは、会津若松市を「全国の先端を行く地方創生モデル都市」とすることが目標となった。震災による経済的ダメージからの復興だけでなく、より一歩踏み込んで「震災前にはなかった価値を会津にもたらしたいという理念」(江川氏)に基づく取り組みである。具体的には、アクセンチュアが仲介役となってスマートシティ領域におけるアムステルダム市との連携協定を結んだほか、全国からデジタル活用の実証事業を会津地域に誘致。その結果、2015年には「地方創生モデル都市」として総理大臣からの認定を受けている。

そして直近の2017年からは、会津若松市でノウハウを積み重ねてきた地方創生モデルを「スマートシティの共通プラットフォーム」として構築/整備し、全国へ発信/横展開していく活動を展開してきた。オープンAPIを通じたビッグデータプラットフォームを共通基盤として、産/学/官それぞれの取り組みもつなぎつつ、地域産業の活性化や安定的な雇用創出、新しい街づくりにつなげていくというモデルだ。

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オープンなビッグデータプラットフォームを構築し、それを基盤としてプロジェクトも展開、幅広い地域産業の活性化と成長につなげる狙い

そして、アクセンチュアが考える地域創生モデルは「これまでの旧態依然としたモデルとは違う」と江川氏は説明した。具体的には、従来型の「垂直分業モデル」ではなく「水平分業モデル」を志向しているという。

「従来の『垂直分業モデル』は、事業戦略/企画といった機能は首都圏に、営業/開発拠点を地方中核都市に、そして工場やコールセンター(製造やアウトソーシングの機能)を地方に配置するというものだった。しかしこれでは、地方に割り当てられる仕事はスキルが低く、給与も低いとなりがちで、新興国への雇用流出も容易に起きてしまう。こうしたことを繰り返しても、長期的な視野に立った地方創生はできないのではないか」(江川氏)

そこでアクセンチュアでは、これまで首都圏に配置されていた高付加価値業務の一部を地方へ移転する「水平分業モデル」を提唱し、自社でもそのモデルを実践している。今回のイノベーションセンター福島では、市内にあった旧センターを移転しただけでなく、東京ソリューションセンターからも一部の業務、人材を切り出して移転し、その機能を拡充している。

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アクセンチュアが目指す地方創生モデルは、高付加価値業務も地方に移管する「水平分業モデル」だと説明した

この水平分業モデルの場合、ある事業の戦略/企画から実装、運用までがひとつの地域に移管されるため、地域ごとに明確な「特色」が持たせられる点もポイントだ。アクセンチュアの場合、会津を「先端デジタル技術の実証フィールド」と位置づけているほか、札幌は「先端クラウドソリューション」、福岡はRPAなどの「業務プロセス自動化」、熊本は「BPOサービス」と、異なる色合いが与えられている。

「東京でやっていてもおかしくない仕事を、意味ある形で(地方へ)切り出していく。地方での雇用創出や人口増加、さらに国の(ICT関連の)実証事業にも寄与したい。ここで発明されたアイデアやイノベーションが、日本のみならず世界に打って出られるかたちになれば最高だ」(江川氏)

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アクセンチュアでは複数の地方拠点に事業を分散させ、さらに各拠点には特色を持たせる戦略をとっている

「社会のデジタル化には実証フィールドが必要」会津若松を選ぶ理由

イノベーションセンター福島 センター長の中村氏は、これまでスマートシティやデジタル化社会に関する実証事業を積極的に誘致してきた結果、実証フィールドとしての会津若松の優位性が知られるようになり、ベンチャーを含む多くの企業が注目、AiCTへの企業入居にもつながったと説明。たとえば自動運転など、今後は他地域での実施が難しい先端技術の実証を行い、さらには「日本中に横展開できる『実装フェーズ』まで持っていきたい」と抱負を語った。

インターネット上で完結するビジネスとは異なり、スマートシティや既存産業のデジタル化(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは、それを現場で試すための「実証フィールド」が必要であり、「どこかの地域とタッグを組んで成果を出さなければならない」と中村氏は指摘する。人口およそ12万人という会津若松市の規模は大きすぎず、「議論を重ねながら、3カ月単位で小さなプロジェクトを回せる」機敏さがあるという。

また、デジタル化の取り組みは“都会”“若者主体”といったイメージで語られがちだが、現実にはむしろ地方において強く求められていることも指摘する。地域社会の高齢化や過疎化が進む中で、遠隔医療や電子行政、自動運転などは「会津においては『明日にでもほしい』ソリューション」であり、「都会で(実証事業を)やるよりもこちらのほうが結論が早く出るだろう」と中村氏は語った。

これまでイノベーションセンター福島における取り組みでは、具体的に「社会をどう変革するか」というアウトカム(成果)にこだわってきたという。その具体例として、1200世帯が参加し最大27%の削減を実現した「省エネ推進プロジェクト」、市民の20%が利用する会員登録型の行政情報サイト「会津若松+(プラス)」、会津地域7市町村連携で海外向け観光ブランディングを実施し外国人宿泊者数を5.3倍に伸ばすことにつながった観光サイト「Visit Aizu」などを紹介した。

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イノベーションセンター福島が手がけてきた事例。なお会津地域だけでなく、中通りや浜通りといった福島県全域で取り組みを展開していると説明した

中村氏は、AiCT入居企業や地域企業との協業を通じてどのような「効果」を求めているのかという質問に対し、地域発展のためのコラボレーションモデルを模索し、構築していくことだと答えた。

「地域発展のためにデジタル産業(ICT企業)と地域企業がどのようにコラボレーションするのか、そのモデルを作るのはこれからのチャレンジ(課題)だ。それが作れなければ、日本全体の生産性は上がらない。モデルを構築し、その効果をここ(会津)で実証して日本中に広めることを求めている。同じような取り組みをグーグルはトロントで、アマゾンはシアトルでやっているが、会津ではアクセンチュア1社ではなく、地域企業も含めていろんな企業がコラボレーションしてやっていく。1社がすべてやるのではなく、みんなでやっていくというのが、われわれが選んだ地域プラットフォームのモデルだ」(中村氏)

■関連サイト

アクセンチュア

会津若松市「スマートシティ会津若松について」

AiYUMU(あゆむ)

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