「ムー大陸」の存在を本気で立証しようとする研究チームがいた!

「ムー大陸」の存在を本気で立証しようとする研究チームがいた!

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/08/13
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一筋縄ではいかない調査

「1万年以上もの昔、太平洋には広大な大陸が存在した。そこには多くの人が暮らし、高度な文明が栄えていた。ところが大陥没によって大部分が海に沈み、わずかに残った大地がハワイや南太平洋の島々となった。大都市は全て津波に襲われて壊滅し、高度な文明は失われた」

これはジェームス・チャーチワードという人が書いた『失われたムー大陸』という本の内容である。誰もが「それは、ただの伝説であり、実話ではない」と思っているであろう。だが本当にそうであろうか? 太平洋の海底にムー大陸の痕跡は存在しないのだろうか?

実は太平洋の海底には「海に沈んだ大陸」のように見える広大な台地が存在し、「巨大海台」と呼ばれている。巨大海台の中には日本国土の4~5倍もの面積をもつ台地もある。

私はこれら巨大海台に興味を持ち、この十数年間、太平洋で調査を行ってきた。調査を進めていくと、巨大海台は過去に水面から頭を出して陸化していたことが分かってきた。これはまさにムー大陸なのであろうか?

しかし結論を急いではいけない。頭が海面に出ていても大陸とは呼べない大地もあるからだ。さらにムー大陸伝説を検証するためには、巨大海台が海底に沈むメカニズムについても知る必要がある。そのためには地質学の知識が必要である。

海に沈んだ大陸の謎』(講談社ブルーバックス)は、ムー大陸伝説を地質学的に検証するというかたちで書いた解説書である。本書は、地質学の基礎から説明し、大陸と海洋底とを比較しながら、大陸の形成過程、地球の歴史における大陸の成長史などについて解説していく。そして太平洋の海底に存在する巨大海台とは何なのか(ムー大陸?)について答えを出していく。

巨大海台の中には「第7の大陸」として地質学的に認識されているものもあるが、これについては本書を読んでのお楽しみとしておきたい。

いまだ多い大陸の謎

本書で解説している地質学についての内容を少し紹介しよう。簡単に言ってしまえば海洋底は単純なのに対し、大陸は複雑である。例えば、海洋底は、玄武岩およびはんれい岩と呼ばれる化学組成がほぼ均質な岩石から形成されているのに対し、大陸は堆積物、角閃岩、花崗岩、グラニュライトなどの様々な化学組成の岩石からつくられている。

大陸の形成過程も複雑である。海洋底は地下深部(マントル)が融けてできたマグマが固化するという単純なメカニズムのみでつくられるが、大陸は様々な種類の岩石の溶融、固化、再溶融、変成、破砕、堆積などが起きることによって形成される。

そしてなによりも複雑なのが大陸の成長史である。大陸は地球がつくられた46億年前から現在に至るまでに成長して体積を増やしてきたが、この成長過程がまだよく分かっていない。ある研究者は、ほぼ一定の率で成長したと提案しているのに対し、別の研究者は、ある時代に急成長したと主張しているのである。

極端なアイデアとしては、36億年前には現在と同じ体積の大陸が存在し、それからは大陸の体積変化はない、という案まである。つまり、大陸の成長史は、現在も解明されていない問題の一つなのである。

さて、ムー大陸伝説が一般の人々に興味を持たれている理由は、天変地異によって国が滅んだという悲劇が注目されるからであろう。優れた文明が大洪水に襲われて壊滅したという話は、人々の記憶に恐怖として強く残るからである。

実は、ムー大陸伝説で語られているような天変地異が地球の歴史において繰り返し起きている。原因として考えられてきたのは超巨大火山の噴火と巨大隕石の落下であり、本書の最終章ではこれらに関する解説も行っている。

この本はムー大陸伝説に興味のある中高生に読んでもらうために地質学の基礎から解説をしているが、大学で地質学を専攻している学生や理科の先生にも満足してもらえるように、最新の研究成果についても紹介している。ムー大陸伝説を通じて地質学に興味をもって頂ければ幸いである。

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読書人の雑誌「本」2017年8月号より

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