藤浪晋太郎が抱く危機感 野球教室で子どもたちに伝えたかったこと

藤浪晋太郎が抱く危機感 野球教室で子どもたちに伝えたかったこと

  • 文春オンライン
  • 更新日:2019/01/13

言われてみれば、少なくなったのかもしれない。自宅近くの公園に行って目に入ってくるのは、ドリブルするサッカー少年に、親子でラリーを続けるテニス少女だったり……。至る所で凧を浮遊させていた少年たちは、正月だから例外として……グローブやプラスチックバットを手にした子どもは、いなかった。

そんなことを思ったのは、阪神タイガース・藤浪晋太郎の言葉が頭にあったからだ。「自分として(グラウンド外で)強くやりたいと思っていることが野球振興で。どんどん子どもが減っていく中で、野球が“見るスポーツ”としては人気ですけど“やるスポーツ”としては(人気が)落ちてきている」。減少の一途をたどる野球人口の現状に24歳は危機感を抱いていた。

今に始まったことではないし、野球振興への取り組みはプロ、アマ問わず注力している。阪神も18年から「アカデミー」を開校し、OB選手がコーチを務めて子どもたちの「阪神」、「野球」との接点作りに励んでいる。昨年12月には契約更改した巨人・菅野智之が、「そういうものを目にしたら、野球選手になりたい人も増える」と将来的な10億円プレーヤーの出現について持論も語った。

何もタイガースの若きエースだけが、憂慮している問題ではない。ただ、藤浪が有言実行で取り組む地道な活動こそ、今後、多くの子どもたちの心に確実に響いていくのではないかと思っている。

藤浪が野球教室に込める思い

1月6日、ジャージに身を包んだ藤浪は、早朝から兵庫県小野市で野球教室を開いた。契約するZETT社の協賛も得て、昨年、同市で初めて単独で開催し、2年連続。前回240人だった小学生の参加者を今回は、より密着度を高めるため約70人に絞った。

キャッチボールでは「野球は捕らないと投げられないスポーツ。捕ることも意識して」と丁寧に指導。最後は足のステップを使って10球ずつ投げさせ「1日10球意識すると、1年で約3600球違ってくる。胸に投げろとかは指導者から言われると思うので。違う視点で教えられればと思って」とプロのこだわりを言葉に込めていた。

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野球教室で子どもたちに熱心に指導する藤浪晋太郎 ©チャリコ遠藤

自らがノックバットを握っての守備練習に、子どもたちから7人を選抜して夢の1打席対決。「勝負事は勝たないといけないんで」とガチンコで打席に立って、子どもたちの全力投球にフルスイングで応えた。みんながお楽しみの「じゃんけん大会」ではサイン色紙、サインボール、打撃手袋、ネックウォーマーの大盤振る舞いで、開始直後は緊張の面持ちだった子どもたちにも笑顔が咲いていた。

「自分が子どもの時に、プロ野球選手に指導してもらったりとか、話してもらったりとか、すごい嬉しかった記憶があるので。子どもの時に憧れの目で見てたのが、今は見てもらってるとは思ってるので。逆にそういう立場になった時に、こういうことができればと思っていた。(野球教室を)できて自分ではすごく嬉しい」

少年時代にKKコンビからもらったプレゼント

藤浪には忘れがたき“成功体験”がある。小学4年だった2004年12月に大阪ドームで開催された「プロ野球昭和42年会」の野球教室に参加したという。昭和42年会を言い換えればKK世代。清原和博、桑田真澄、佐々木主浩らが間近にいた。「本当は6年生が行くやつなんですけど、6年生が大会に行っていて、たまたま自分が行けて。皆さんが甲子園から持ち帰った砂をビンに詰めてもらったり。すごい嬉しかったですし」。会の最後には、選手たちが高校生の時に持ち帰った甲子園の土をプレゼントされたといい、当時のスポニチの記事によれば、清原が「この中から甲子園に出てプロ野球選手になって、その時に野球教室のことを覚えていてくれたら最高」と呼びかけていた。

甲子園で春夏連覇し、ドラフト1位でプロ入りした男はあまりに出来すぎだが、自身が目を輝かせ、心躍らせた体験を“還元”したい思いが根底にある。だから、藤浪の言葉には「自分もこういう野球を楽しめる時期があった。野球って楽しいもんやろ、って小学校から中学校で野球を続けてもらえるように1人でもなれば良いと思う」と純度100%、混じりっ気なしの「野球愛」が溢れる。

「自分が活躍したら、テレビで見てくれているでしょうし“藤浪選手が!”と思ってくれるし、頑張らないといけないなと思います」。かつての藤浪少年がKKコンビにもらった「聖地の砂」のような“夢のバトン”を静かに少年、少女に託していっている。

遠藤礼(スポーツニッポン)

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(遠藤 礼)

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