iPhone 5Gの道筋が立ったアップルとクアルコムの和解

iPhone 5Gの道筋が立ったアップルとクアルコムの和解

  • ASCII.jp
  • 更新日:2019/04/25
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イメージ:pixabay

クアルコムは通信技術の大手企業で、これまでもモバイルの発展を支えてきた企業です。アップルもクアルコムの技術をライセンスし、チップを採用してiPhoneを作ってきました。

しかし両社の関係が急速に悪化したのは2017年。

アップルはiPhone全体の価格に対してライセンス料を設定しようとするクアルコムに対して異議を唱えました。思えば、2017年9月にリリースしたのは999ドルのiPhone X。一気に高価格へと押し上げる戦略を採っていたアップルにとって、ライセンス料の高騰を避けたかったという背景も見えます。

論争としては、「スマートフォンの価値を構成しているのは何か?」という議論でした。

クアルコムとしては、通信あってのスマートフォンであり、デバイスメーカーはそこに付加価値を作り出すことができているという考え方。アップルとしてはiPhoneの価値はアップルが作り出したという考え方で、折り合いはつきません。

時を同じくして、世界中で、クアルコムの「ライセンスとチップの抱き合わせ」によるビジネスモデルが批判され、各国の公正取引委員会から制裁を課される事態になっていました。これを追い風にアップルは他のデバイスメーカーを仲間に引き入れつつ、クアルコムに対して訴訟を起こしました。

アップル優勢かに見えましたが、直近の米国での裁判ではクアルコムの主張が認められ、アップルが知的財産を1件侵害していると判断されました。これは米国へのiPhoneの輸入が差し止められる可能性を示すものでした。

●早く和解したかった?

この件について筆者は、「アップルはクアルコムと和解する以外に道はない」と考えてきました。クアルコムは米国の通信技術の企業で、2019年以降普及していく次世代通信技術5Gへの対応に欠かせない企業です。

アップルは昨年モデルのiPhoneで完全にクアルコムを排除し、インテルからの通信チップ供給を受けていましたが、インテルはスマホ向け5Gチップの開発が難航。アップルも独自開発の道を模索していたかもしれませんが、ライセンスや技術的に上手くいくかどうかの保証はありません。

そこでアップルはクアルコムと和解し、世界中の裁判を取り下げることで合意しました。その上で、両社は6年間(さらに2年のオプションつき)のライセンスとチップ供給の契約を結び、iPhone向けにクアルコムの通信チップの供給が復活することになります。CNBCが伝えたところによると、UBSの試算でアップルは50〜60億ドルを支払い、今後iPhone1台あたり8〜9ドルのライセンス料を支払うことになったとみられています。

また、このニュースが出た直後、アップル向けに通信チップを供給していたインテルがスマートフォン向けの5Gチップ製造から撤退。唯一の顧客だったアップルがクアルコム採用へと動く中、素早い決断を下しました。

結果的には元のサヤに収まり、クアルコムは大口顧客を取り戻し、アップルとしても5G対応のiPhoneをリリースする道筋を立てました。

今年はさすがに間に合わないでしょうが、2020年に最新通信技術に対応するiPhoneの登場が現実的になったというわけです。ただ、この和解がなければ、いつまでたっても5GのiPhoneが登場しない可能性もあったわけで、アップルはもちろん、既存のiPhoneユーザーにとって大きな不利益は回避された、と見て良いでしょう。

●ラブコールを送っていた相手とは

そうした和解劇の背景で、もう1つ、面白い動きがありました。中国の通信機器大手ファーウェイのCEOが、アップルに対してチップ供給を行うことについて「オープンだ」と発言していたのです。もちろん、アップルと具体的な話があったり、実際にアップルがファーウェイを採用するかどうかは別の問題です。

というのも、米中貿易戦争の主要テーマの1つである次世代通信技術の覇権争いで、米国はトランプ政権以前からファーウェイやZTEといった中国の通信技術企業を閉め出し、同盟国にも同様の対処を行うよう要請してきた背景がありました。そうした中、米国籍の企業であるアップルがファーウェイを採用することは、現実的ではなかったはずです。

そのファーウェイの「オープン」発言は、これまで他社のスマートフォンにチップ供給をしてこなかったファーウェイとしては異例の発言とも言え、そちらの方面でも注目に値します。

アップルのように、自社チップを自社で活用することで、チップ単体をビジネス化しないままにするのか。はたまたサムスンのように半導体も主力ビジネスとし、競合に自社チップやディスプレイパネルを供給して競争優位性を切り売りするのか。

今回の発言はあくまで、貿易戦争にかこつけたジャブのようにも見えますが、5Gを巡って、通信チップ、スマートフォン、その他の製品の勢力図は、まだまだ変動が続きそうです。アップルは現在の地位を守ることができるのか、注目していきましょう。

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筆者紹介――松村太郎

1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログTAROSITE.NET
Twitterアカウント@taromatsumura

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