クーポン3月復活、「すかいらーく」反転攻勢の勝算

クーポン3月復活、「すかいらーく」反転攻勢の勝算

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  • 更新日:2018/02/16

「11年間のファンド経営が終了し、すかいらーくは新しい時代に入りました」――。2月14日に開かれた2017年度の決算説明会で、すかいらーくの谷真社長はこう宣言しました。

しかし、強気の言葉とは裏腹に、同年度の業績は、本業の儲けを示す営業利益が前年度比で1割のマイナスという状況でした。それでも、谷社長は「事業の根幹に問題はない」と言い切ります。

2ケタ減益にもかかわらず、強気の姿勢を崩さないすかいらーく。その背景には、どんな事情があるのでしょうか。

誤算続きだった2017年度

同日に発表されたすかいらーくの2017年12月期業績は、売上高が前期比1.4%増の3,594億円だった一方、営業利益は同10.1%減の281億円となり、増収減益の着地となりました。会社側は当初、営業利益で前期比5.0%の増加を見込んでいたので、計画を大きく下回った格好です。

特に急ブレーキがかかったのが、第4四半期(10~12月期)でした。それまでの9カ月間は前期比3.3%の減益ペースで進捗していたので、最後の3ヵ月で巻き返すことができれば、少なくとも増益を達成できる可能性も残されていました。

しかし、予期せぬ事態が重なります。稼ぎ時の週末ディナータイムを2週連続で台風が襲いました。また、株主優待制度を拡充したことで個人株主が会社の想定以上に増えてしまい、そのための引当金も膨らみました。

さらに、店舗のオペレーションを改善するために割引クーポンの発行枚数を10分の1以下の減らした結果、既存店の売り上げが停滞。会社側は既存店が前期比1%の増収となる計画を組んでいたため、そこに実態との大きな乖離が生まれてしまいました。

作業の複雑化が店舗運営を阻害

この既存店の売上高は、外食産業にとって大きな意味のあるものです。

確かに、新規で出店したお店のほうが売り上げは立ちやすいのですが、一方で開業初年度はさまざまな費用もかさみ、利益面での貢献は期待できません。つまり、開業から1年が経過した既存店の売れ行きが、会社の利益に直結するのです。

しかし、開業から1年が経過すると、通常、客足は落ち着いてしまうもの。開業2年目に初年度の売上高を超えるのは簡単なことではありません。そこで、割引クーポンなどを配布して、客足の維持を図ることになります。

ただ、すかいらーくの場合、このクーポンが300種類以上まで増えてしまい、逆に店舗のオペレーションを阻害する事態となっていました。レジでの業務に人手が取られると、他の業務にも支障が出ます。たとえば、料理の提供に20分以上かかると、客数は毎日3人ずつ減っていってしまうといいます。

「作業量の複雑さと店舗運営状況の悪化は正比例の関係にあります。いったん整理することで、2018年のスタートを切りたかった。第4四半期の落ち込みは、新しいすかいらーくを作るために必要な過程でした」(谷社長)

2018年度は店舗運営“改善元年”

2006年にMBO(経営陣による買収)によってファンドの傘下に入ったすかいらーく。昨年11月にファンドが保有株を売却し、11年に及んだファンド経営に幕が下りた格好ですが、この間、企業価値を最大化するため、利益率を重視する経営を進めてきました。

確かに、売上高営業利益率は2008年度を底に、2016年度には8%超の水準まで上昇。400億円規模の売上高を誇る外食企業としては、異例の高利益体質となりました。ただ一方で、現場では上記のようなオペレーションの歪みも生じていました。

「レストランとして、当たり前の運営状況に引き上げていく」(谷社長)。そのための施策を2017年度の第4四半期から打ち始め、いよいよ2018年度に本格化させていくフェーズに入ったというわけです。

店舗環境を大幅に改善

7月には70億円を投じて、店舗システムを大幅に刷新する計画。ハンディターミナルをスマートフォンに切り替えて、アルバイトの学生にも使い勝手が良く、覚えやすいものに切り替えます。また、釣り銭機のスピードを1会計当たり2秒ほど改善し、レジ作業を効率化させます。

キッチンディスプレーも各店舗に5台ずつ設置。これまではプリントされた紙に提供メニューなどを書き込んでいましたが、そうした作業の改善が期待されます。また、商品の販売量から食材が自動で発注されるシステムも導入。マネージャーの負荷が下がり、1店舗当たり2~3時間の労働時間が短縮されるといいます。

すかいらーくでは昨年、初めて5万人のアルバイトが採用できました。しかし、離職率も高く、トータルの在籍数としては微増にとどまりました。安定的な成長のためには、店舗網の拡大が不可欠。しかし、それには店舗スタッフの増加が欠かせません。

「店舗の“余裕”として出てくる分は、生産性の向上に充てる。利益に落とし込む方針は取りません」と谷社長。店舗システムの刷新以外にも食器の数を24種類から15種類に減らすなど、店舗環境の改善を図ることでスタッフの定着率引き上げを目指します。

クーポンがグレードアップして復活

既存店の底上げ策は、これだけではありません。「ウーバーイーツのような多業態のエリア配送」(谷社長)を拡大させることで、宅配サービスの強化を進めます。

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宅配サービスの拡充で既存店の底上げを狙う(写真:すかいらーく会社紹介動画より)

これまでも2015~2017年の平均で売上高が約7%伸びてきたという宅配サービス。2018年はこれを約11%まで高める計画です。そのための施策が、ガストだけでなく、ジョナサン、藍屋、夢庵などグループの主要業態のメニューを一括して宅配する新サービスなのです。

すでに3エリアで実験を始めており、これらのエリアでは売上高が15~30%増加しているといいます。年内にソフトウエア開発が完了する予定で、それに合わせて多業態エリア配送を全店舗に拡大。「成長の大きな源泉」(谷社長)にする狙いです。

さらに、3月からはグループ共通のアプリを投入するのに合わせて、大幅に削減したクーポンの配布を復活させます。このアプリでは、顧客を800種類のライフスタイルに分解したうえで、それぞれのニーズに沿った形で、クーポンなどの告知が自動配信されます。

たとえば、気温が30度を超えた日には、過去にグループ店舗でビールを飲んだことがあるお客さんにビールのクーポンが届く仕組みです。あるいは、雷雨の日には宅配のクーポンが届いたり、誕生日にはスイーツのクーポンが送られてくる、といった具合です。

ライフスタイルに寄り添えるか

「クーポン復活がフルに効いてくるのは4月以降。7月のシステム刷新も店舗には負荷がかかる」(谷社長)見込みで、2018年度も前半は収益が停滞すると予想されます。ただ、通年では営業利益で2.1%増と、反転攻勢を狙っています。

外食産業にとっては、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げや、2020年の東京オリンピック後の景気不透明感、2022年に始まる団塊世代の後期高齢者入りなど、厳しい外部環境が想定されています。

「日本の胃袋が小さくなっていく中で、1店1店の品質・満足度を上げていくことが、企業の存続・安定成長のために最も必要な基本方針」。谷社長はそう言い切ります。

なお、2017年度業績の足を引っ張った一因である株主優待の拡充ですが、2018年度もさらに個人株主が増加することを見込んで、2億円ほどの利益引き下げ要因になる計画です。それでも、谷社長は「株主優待で、すぐさま大きな変更は考えていません」とのこと。そして、会見の最後をこう締めくくりました。

「国民の3分の2はデフレの時代を長く過ごしています。景気が良くなっても、消費に回るとは考えにくく、自分のライフスタイルに合ったものだけを使う。そのライフスタイルにフィットしたものを提供できる企業だけが、景況感に沿った業績を謳歌できます」

はたして、すかいらーくもシステム刷新や多業態宅配、クーポン施策の見直しによって、顧客のライフスタイルに寄り添う企業になれるのか。2018年度の下半期の業績は、今後の浮沈を占ううえで重要な指標となりそうです。

(文:編集部 猪澤顕明)

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