宿泊費がタダになる?「変なホテル」が描く冗談のようなホントの未来

宿泊費がタダになる?「変なホテル」が描く冗談のようなホントの未来

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/12/08
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ハウステンボスにある「変なホテル」では、ロボットが接客や掃除等で多数稼動している。世界初のロボットホテルとしてPR効果がある上に、将来、ロボットを活用することで生産性がどう上がるかの実証実験も進んでいるのだ。

「変なホテル」成功で見えてきた未来について、澤田氏本人が詳しく明かした『変な経営論 澤田秀雄インタビュー』(講談社現代新書)から、澤田氏のインタビューを公開しよう。

インタビュー前編はこちら(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53673

なぜ恐竜だったのか

「変なホテル」の名物といえば、フロントにいる恐竜型ロボットだ。いまや「ああ、あの恐竜のホテルね」と言われるようになった。まさに「変なホテル」の顔である。だが狙って恐竜にしたわけではない。

高い生産性の象徴として、フロントにロボットを立たせることは開業前から決めていた。そこで、さまざまなロボットをテストしたのである。ところが、9割がたは耐久性がなくて使えなかった。数時間もすればモーターが焼き切れてしまう。人間の世話をするべきロボットが、介護を必要とするのでは、話にならない。

結局、もっとも強かったのが、博物館で使われていた恐竜型ロボットだった。人間がフロントにいる必要はないと考える私たちだって、「恐竜はさすがにやりすぎかな……」との思いはあった。おちょくられている気分になるお客様もいらっしゃるのではないかと。ただ、「テーマパークにあるホテルだから、恐竜でも許されるのではないか」という結論になった。

要は、耐久性が最優先だったわけだ(1号店だけにいる人型ロボット「夢子」も、同じメーカーの作った強いロボットである)。

開業から2年がたつが、これらのロボットは一度も壊れたことがない。チェックアウトとチェックインのあいだの4時間は、このロボットを止める。部屋を掃除する時間帯だから、お客様にチェックインされては困るからである。それでも毎日20時間、壊れず働き続けている。人間なら、ここまで元気に働けない。

消去法でホテルの顔に決まった恐竜型ロボットは、逆にホテルのインパクトを強める結果になった。特に子供たちの人気が高いので、その後も使い続けている(1号店・2号店では小型肉食獣ヴェロキラプトルだったが、3号店では大型肉食獣ティラノサウルスにパワーアップさせた。恐竜シフトがより鮮明である)。

ただ、1号店はハウステンボスにあり、2号店は東京ディズニーリゾートの近所、3号店はラグーナテンボスにある。いずれもエンターテインメント性が求められる場所だ。大都会のビジネス街に「変なホテル」を出店する場合は、恐竜以外のほうがいいかな、とも考えている。

大切なのは、お客様を飽きさせないことだ。「3号店はティラノサウルスだったけど、7号店は何かな?」とワクワクさせないといけない。「『変なホテル』はよく知ってるから、もう泊まらなくていいや」と思われるのが最悪だ。

「変なホテル」を同じように名乗りながら、すべて違うホテルであっていい。例えばビジネスマンが主な客層なら、1階に診療所やマッサージ店を入れるとか、それぞれ違いを出す。どうすればもっと泊まり心地が良くなるか、どうすればお客様が楽しんでくださるか。それをつねに考える。変化するホテル、進化するホテルというのは、何もテクノロジーに限った話ではないのである。

現時点で4号店以降は大阪市内、東京都内、台北、上海に出す予定で、準備を始めている。その後もベトナム、インドネシア、タイなどアジアを中心に、3~5年で100店まで増やす予定だ。

お客様の問い合わせを減らす

博物館で使われている恐竜型ロボットをフロントに設置し、会話機能をもたせる。では、どの程度の機能が求められるのか? 議論になった。

いずれは人工知能が発達して、学習するロボットが登場するだろう。会話もスムーズになるし、お客様の表情も読み取るようになる。「お客さん、その帽子格好いいですね。どこで買われたのですか?」とか、お客様がニコニコしているのを見て「今日は何かいいことがあったのですか?」なんて言葉を発するようになるはずだ。

恐竜から「格好いいですね」と言われたら、なんとも愉快な気分になる。早くそんな日がやってこないか、心待ちにしている。

とはいえ、現時点の技術では、そこまで求められない。莫大な費用をかけてコンシェルジュロボットを作ったとしても、その能力には限界がある。まず方言やイントネーションの微妙な違いを聞き分けられない。仮に正確に聞き取ったとしても、相手が何を求めているかを正確に理解し、的確な回答のできるロボットは存在しない。

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ハウステンボス内で何かが生まれつつある

ここは割り切りも必要だろうと、フロントのロボットはチェックイン・チェックアウトに特化させることにした。

ということは、通常のホテルのフロントで交わされるような会話がないということだ。疑問があればすぐスタッフに問い合わせられるよう、ロボットの横に呼び出しボタンを設置した。従業員を呼び出す宿泊客はそこそこいたし、客室から電話で問い合わせる方もいたので、生産性が下がった。

そこで、よくある質問を整理した。「チェックアウトは何時ですか?」「ビールの自動販売機はどこに置いてますか?」「朝食の会場はどこですか?」「送迎バスは何時に出ますか?」……。こうした疑問に対しては前もってFAQにまとめておいて、部屋のタブレットで確認できるようにした。Q&Aコンテンツの充実とともに、宿泊者がフロントに電話することはほとんどなくなった。

なかにはFAQで対応できないリクエストもある。例えば「乳児用のベビーベッドが欲しい」と言われたとして、ロボットが部屋にベッドを運び、設置することは不可能だ。その場合のみ、従業員が出動する。ロボットホテルだと思ってお越しになったお客様には、人間が出てきて興ざめかもしれないが、現時点では仕方がない。

なお、実際に開業してみると、予想外の結果が出た。

「フロントのロボットにいろいろ質問されたらどうしよう? 本当にロボットだけで対応できるのだろうか? コンシェルジュ的なものが必要なのではないか?」

それが最大の心配事だった。ところが、意外なことに、ロボットに質問をぶつけてくる人がほとんどいなかったのだ。

もちろん、ロボットに話しかける人はいる。人型ロボットに「お姉さん、可愛いねえ」とか、恐竜型ロボットに「ガオーッて吠えてみてよ」とか。でも、それは冗談で話しかけているのであって、答えを期待しての質問ではない。

フロントには「このロボットはチェックイン・チェックアウト専用です」とは書かれていないので、お客様が質問してもおかしくない状況にある。それでも「新鮮な魚が食べられる居酒屋はどこ?」なんて質問する人はいない。

現時点のロボット技術の限界に理解があるというか、ロボット・リテラシーが高いのかもしれない。面白い発見だった。

フロントで現金は扱わない

意外に気付かれないことだが、フロントを完全にロボットに任せるために、欠かせない必要条件がある。現金を扱わせないことだ。

無人の場所に大量の現金を保管するのは安全性に問題がある。無人だと、ごく一部にはお金を払わずに帰ってしまう人だっているだろう。フロントの恐竜型ロボットが猛スピードで追いかけてくるなら、話は別だが。

そこで、宿泊代を現地で支払うのではなく、予約時にいただく形にした。すでにお支払い済みのお客様だけがいらっしゃるのだ。

通常のホテルにあるような「部屋付け」もない。例えば朝食の予約をしていないが、食べたくなったケース。普通なら朝食会場で食べたあと、ルームキーでも見せて「○○号室だから、部屋につけといて」と言う。しかし、これを認めると、チェックアウト時にフロントで精算する必要が出てきてしまう。この場合は、朝食会場で代金を支払っていただく形にした。

その結果、ホテル内で扱われる現金は、自動販売機だけになった。飲み物だけでなく、軽食もお土産もグッズも、すべて自販機で販売している。これらの現金だけ、たまに従業員が回収すればいい。

フロントで現金を扱わない結果、嬉しい副産物もあった。普通、ホテルには必ず経理担当者が常駐しているものだ。つねに一人はいる必要があるから、シフトを考えると最低二人は用意しないといけない。一方、変なホテルでは経理担当者が必要ない。だから1~2人で回せるのである。これも画期的だと思う。

ロボットと会話している感じを

フロントのロボットは、この2年間で飛躍的に進化した。

オープン当初は、いまから考えれば、なんとも面白くなかった。ロボットと会話している感じがゼロだったのだ。

宿泊者は手順に従ってボタンを押すだけだった。1番のボタンを押すと、ロボットが「宿泊者カードを書いてください。書き終わったら2番を押してください」としゃべる。そこで宿泊者カードを書いて2番のボタンを押すと、ロボットは「宿泊者カードをこちらにお入れください。入れたら3番を押してください」としゃべる。そこで宿泊者カードを入れて3番のボタンを押す……。

たしかにロボットはしゃべっている。でも、これは会話でも何でもない。押したボタンの内容を機械的に音声に置き換えているだけだ。博物館などに「3番、東京タワー」のボタンを押すと、地図上の東京タワーが光って場所がわかる装置があるが、感覚的にはあれと変わらなかった。なんともローテクだ。もう少し「ロボットとやり取りしている感じ」は出せないか?

そこで、センサーを利用することにした。すでにセンサーはあって、宿泊者がフロントの前に立つと、自動的に「いらっしゃいませ」としゃべるようにはなっていた。これを応用できないかと考えたのだ。

宿泊者カードを投函する場所にセンサーを設置して、書き終わったかどうかを感知する。そしてボタンを押さずとも次にやってもらいたいことを自動的にしゃべらせるようにした。お客様としては、自分の行動をロボットに見られている感覚になるので、少し会話感が出た。これが第1弾の進化だ。

次に考えたのは、そもそも宿泊者カードが必要なのかということだった。ボールペンで紙に書き込むところが、悲しいぐらいに未来的じゃない。未来のホテルをイメージしていらっしゃったお客様はガッカリするだろう。

そこで、紙をなくしてしまった。電子台帳にしてしまえば、宿泊者カードを読み取る手間も、保管する手間もなくなる。旅館業法の定めでサインだけは必要なのだが、住所や電話番号を書く手間がなくなれば、お客様も大喜びだろう。

インターネット予約の際にお客様の情報はわかっているのだから、目の前の人とその情報を結び付ければいいだけの話。そこでタブレットにお名前を入力していただき、それで宿泊者情報を引き出すようにした。これが第2弾の進化である。

しかし、タブレットに入力する手間すらなくしてしまいたい。そこで音声認識を導入した。フロントロボットの前に立つと、センサーが感知して「お名前をお願いします」としゃべる。そこでマイクに向かって自分の名前を言うと、予約時に登録した情報がタブレットに表示される。問題なければ電子ペンでタブレットにサインする。書くのはサインだけだ。これが第3弾の進化だった。

音声認識を導入したのはホテル業界初だが、チェックインの時間が劇的に短くなった。名前を言って、確認してサインするだけだから、数十秒で終わってしまう。ここまでチェックインが速いホテルは世界に存在しないだろう。

パスポートをかざすだけ

フロントロボットの言語対応は、当初は日本語と英語だけだったが、いまでは韓国語と中国語も含めた4言語に対応している。

ただし、音声認識は日本語だけである。技術的には多言語化が可能なのに、やっていないのは、その必要がないからだ。外国人の場合、パスポートで本人確認ができてしまうからである。

旅館業法では、外国籍の方を宿泊させる場合、パスポートのコピーをとることが義務づけられている。ロボットにコピー取りはできないので、当初は外国籍の宿泊者がいらっしゃるたびにスタッフが出ていき、パスポートをお預かりしてコピーしていた。
日本人のチェックインはどんどん速くなったのに、外国人のチェックインは時間がかかるままだった。時間がかかるというのは、従業員の生産性も下がるということだ。解決の必要がある。

パスポートリーダーでスキャンして電子情報として保存しておけば、必要なときにいつでも印刷できる。

お客様はパスポートの顔写真が載ったページをパスポートリーダーにかざす。名前を文字解析して、予約時に入れた宿泊者情報がタブレットに提示されるので、電子ペンでサイン。これなら数分で終わる。

ただ、ややこしいのは、外国人でも日本在住者の場合、パスポート提示の必要がないことだ。この見極めが難しかった。

英語が話せるお客様なら、まだスタッフも対応できるが、韓国語や中国語などしか話せないお客様だと混乱が生じる。こちらは「外国人はパスポートを提示する義務がある」と伝えたい。先方は「たしかに外国人ではあるが、いまは日本に住んでいるので提示の義務はない」と伝えたい。ところが、言葉が通じないから、時間ばかりが過ぎていく。そんなこともあった。

そこで、画面で「日本に住んでいるかどうか」を選んでもらうことにすると、問題はたちまち解決した。

つまり、こういう形だ。まずはタブレットで使用言語を選ぶ。日本語を選んだ人は、音声認識へ進む。英語・中国語・韓国語を選んだ人は、次に日本に住んでいるかどうかを選ぶ。住んでいない人はパスポートをかざす。住んでいる人は名前を入力する。こういう手順で進むわけだ。

面白いことに、「変なホテル」は外国人の方のほうが喜んでくださる。日本旅館の「おもてなし」に慣れた日本人のなかには、人間の出迎えさえないホテルが味気ないと感じる人もいる。ところが、海外では最小限のサービスがスタンダードで、なるべく宿泊者に干渉しないようにする。外国人のほうが慣れているわけだ。

最初から「おもてなし」を期待しないので、失望がない。そのぶん働くロボットの魅力に目がいく。「こんなクールなホテルは見たことがない」と言ってくださる方も多い。

無人ホテルへの道

技術を応用すれば、顔認証でチェックインすることだって可能だろう。2度目以降のお客様は顔パスの世界だ。チェックインなんて5秒もかからない。初めて宿泊される方でも、事前にスマホから顔の画像を送っておけば、同じことが可能だ。

もちろん、プライバシーの問題があるので、こちらから一律に導入するというわけにはいかない。チェックインからチェックアウトまで一度もスタッフに会わない、つまりプライバシーが完全に守られるという部分で、「変なホテル」を気に入っていただいているお客様もいるからだ。

その一方で、便利さのほうを優先したいお客様もいるだろう。そこで顔認証チェックインをご希望のお客様だけには対応するとか、研究を続けている。

そうなると、もうチェックインレスの時代になる。フロントの前を通りすぎるだけでいい。部屋番号もスマホに送られてくるから、その部屋に向かうと、また顔を見ただけで鍵を開けてくれる。ここまできたら、フロントのロボットさえ不要になる。

チェックインレス――。たしかに便利ではあるのだが、それでお客様に喜んでいただけるのだろうか? 私はなんだか味気ない気がする。何事もバランスが肝心で、「あまりやりすぎるな。愛嬌がなくなるじゃないか」と言っている。

タブレットだって改良の余地はまだまだある。空中の何もないところに画面が見えて、そこで操作する技術の開発も進んでいる。タブレットという物質がないのだから、ここまでくると、かなり未来的だ。これはまもなく実現できるだろう。

「変なホテル」はいま現在も進化を続けている。いずれは無人ホテルも可能になるだろう。一つの中央コントロールルームで、すべてのホテルを管理すればいいのだ。完全無人になれば人件費はゼロ。ホテル代はさらに安くなる。

お客様が必要とされるときは、いつでも人間を呼び出せる。空中の画面に現れるわけだが、遠くのコントロールルーム(外国にあるのかもしれない)にいるのに、まるでそこにいるように感じられる技術も開発されるだろう。

もちろん、お客様の安全が第一だ。火事や地震のような緊急事態が起きたり、お客様が体調を崩されたりしたときは、すぐに人間が駆けつける必要がある。警備サービス会社と組んで、フロントに人間がいた場合と同じぐらいのスピードで駆けつけられないか研究している。

これがホテル革命だ

ここまでの説明で、「変なホテル」の生産性がいかに高いか理解していただけたと思う。コストはどんどん減っている。いずれ宿泊代5000円でも利益が出るようになると確信している。このクオリティでこの値段なら、競争力は圧倒的だ。

オリジナル商品を開発しては、自販機で売っている。売店を作らず自販機で売るのは、もちろん人件費カットのためだ。人気が高いのは「変なカレー」で、お土産に買って帰る人が多い。黒練りゴマを入れたレトルトカレーで、パッケージにはフロントの恐竜型ロボットの写真。

2017年の秋には、1号店の共用棟にロボットバーがオープンした。これも人件費がかからないから、かなり安い値段設定にしても利益が出るはずだ。人間のいないところでロボットが稼いでくれる。

こうして宿泊代以外の部分で稼ぐシステムが整えば、何が起こるか? 冗談のような話だが、「宿泊費タダ」のホテルができる。そのシステムから上がる利益が、諸経費より多くなればいいのだから、理論的には可能だ。タダだと批判を浴びそうだから、部屋代200円ぐらいはいただくかもしれないが。

生産性を極限まで高める。その先に待っているのは、われわれが予想もしていなかった世界だ。「変なホテル」は、これまでのホテル業界の常識を覆す、まったく新しいビジネスモデルなのである。

1号店は144室で、年間3〜5億円の利益を出している。100室のホテルでも、少なく見積もって2億~3億円は利益が出るはずだ。3~5年で100店舗に増やすので、200億~300億円の利益。それをまたロボットの研究開発に回すから、どんどん人件費は減り、さらに宿泊代を下げられる。

世界に先行して始めているし、観光ビジネス都市ではノウハウ蓄積のスピードが圧倒的に速いので、後発組は追いつけない。

直営だけでなくフランチャイズ化も考えているので、出店スピードはさらに加速するだろう。500店舗、1000店舗まで増える頃には、本当に無人ホテルやタダのホテルが実現しているかもしれない。もうホテル革命だ。

もちろん人間のサービスのほうがいいという人もいるだろう。私も五ツ星ホテルに関しては、人間による高品質なサービスが不可欠だと考えている。ハウステンボスでも、ホテルヨーロッパに対してロボット化は求めない。

しかし、「変なホテル」のような三ツ星ホテル、四ツ星ホテルに関しては、10年以内に大半がロボットホテルに置き替わっていくのではないか?

人口の多いアジアで海外旅行ブームが起きたことで、世界的にはホテルの部屋数が足りなくなってきている。伸び盛りの分野なのだ。だからエイチ・アイ・エスはこの分野に力を注ぐ。海外での展開のほうが多くなるが、おそらくうちが作るホテルの7割がたは「変なホテル」になるだろう。

世界初の移動するホテル

実はロボットホテル以外にも、新しいホテルの構想はある。いま開発中で、数年以内にデビューさせるのが水上ホテルだ。強化プラスチックで作ったカプセル状のホテルで、4人ぐらいが泊まれる。

大村湾に長島という離島を買い、ハウステンボスの飛び地にしたのだが、その離島との往復に使うことを考えている。モーターボートなら20分程度の距離を、一晩かけてゆっくりゆっくり進む。ゆっくり進むから揺れは感じず、ぐっすり眠れる。朝起きたら、離島に着いている、という寸法だ。

この水上ホテルがどう発展していくかまだ読めないが、世界初の「移動するホテル」である以上、話題になるはずだ。こうした技術は、いずれ深海ホテルや宇宙ホテルに結びつくかもしれない。世界に出ていく日もあるだろう。

観光地ハウステンボスを舞台に、画期的なテクノロジーが生まれ、新しいビジネスモデルがゆえに利益を生み、世界へ出ていく。私の言う「観光ビジネス都市」のイメージが少しは伝わったのではないだろうか。

「変なホテル」はあくまでその第1号であって、あとにも続々と出てくる。ロボットもそうだろう。もちろんロボットが21世紀の産業の柱になることは、私も理解していた。でも、それが自分のビジネスになるとは考えてもいなかった。

ところが、「変なホテル」で気付いたのだ。ロボットの性能は、ハードウェア、ソフトウェア、運用の3条件で決まる。ハードウェアだけでやろうとしても、ソフトウェアだけでやろうとしても、決してうまくいかない。どこまでをロボットに任せて、どこを人間がやるべきか。それを見極める運用ノウハウが非常に重要になる。その部分ではわれわれ非メーカーにもビジネスチャンスがあるわけだ。

2017年1月にはロボットの導入支援や研究開発を行う子会社「ハピロボST(hapi-robo st)」を設立した。ハピロボではいずれ自社開発もやる予定だ。ロボット事業は近いうちにエイチ・アイ・エスを支える事業の一つに育つだろう。

人を感動させるのが自分の仕事だと、私は思っている。どうやればお客様が感動してくださるか、必死になって考える。感動させるには、誰もやっていないことをやる必要がある。お客様が見たこともないもの、見たら誰かに話したくなるようなことを。それはテーマパーク事業でも旅行事業でもホテル事業でもロボット事業でも、どの仕事であっても同じだ。人間の仕事は創造的であるべきなのだ。

創造的に考える以外に、人間にしかできない仕事があるとしたら、人間をマネジメントすることぐらいではないか? あとの単純作業は人工知能に奪われてもいい。人間にしかできない仕事は必ず残るのだから、恐れる心配はないと思う。

いずれにせよ、ハウステンボスでの経験があったからこそ、こんな発想が生まれてきたのである。私自身、変わったということだ。そもそもハウステンボスがなければ、観光ビジネス都市なんてことは考えなかったのだから。

ゼロ号店だから社長直轄

繰り返すが、ビジネスはスピードである。特に経験の通用しないフロンティア領域の場合、少人数で進めるほうがいい。どうせ技術的なアドバイスは、外部の専門家に頼るのだ。内部の意思決定をするだけなら、少人数のほうが早く進む。

だから、「変なホテル」の設立準備までは、事業開発室の一人に任せた。彼は中途採用組で、いきなり新事業を担当したから、ハウステンボスの営業を手伝うこともない。「いったい何をやってる人なの?」と、スタッフたちからうさんくさい目で見られたという。

開業3ヵ月前からは、総支配人を置いてバトンタッチさせた。エイチ・アイ・エスから連れてきた、30代前半の若手だ。ハウステンボスの5つ星ホテル「ホテルヨーロッパ」にGM(ジェネラルマネジャー)は不可欠だが、「変なホテル」にGMは要らない。お客様の前に出て、ちゃんとした挨拶をするようなシーンがないからだ。総支配人の仕事は裏方というか、新しいシステムの開発や管理だから、若手に任せても問題ない。

この事業開発室長も総支配人も、社長である私の直轄にした。余計な雑音をはさまないようにしたのである。せっかく奇抜なアイデアが出てきたとしても、途中で潰されてしまってはたまらない。

「変なホテル」というネーミングは、ロゴも作ってくれた外部デザイナーのアイデアで、私が決めた。私ですら最初はギョッとした大胆なネーミングなのだから、もし普通の流れで平社員→課長→部長→役員と上がってくるとしたら、当然、私のところまでは届かず、途中で潰されていただろう。

ちなみに総支配人は当初、この名前が嫌で嫌でたまらなかったという。いまではこのネーミングのおかげでヒットしたと理解しているが、ホテルが認知されるまでは、どこで口にしても笑われた。

ロボットを仕入れるのは彼の仕事だが、例えばメーカーに「『変なホテル』と申しますが」と電話すると、イタズラ電話だと思われてガチャンと切られてしまう。「いえいえ、変なホテルなんて卑下されずに、正式なホテル名をおっしゃってください」と言われたこともあるらしい。

重要なのは、二人ともホテル経営は素人だったことだ。従来と同じようなホテルを作っても仕方がない。ホテル業界に革命を起こすほど、オリジナリティのあるホテルにしたかった。だから既成概念に縛られないよう、素人を選んだのだ。そういう点では、ここが「奇妙なホテル」であることに間違いはない。

その後、2017年3月に舞浜の2号店が、同8月に蒲郡の3号店がオープンした。ホテル事業の管轄で、これから続々とオープンする店も同様の扱いになる。しかし、ハウステンボスの1号店だけはテーマパーク事業の管轄で、社長直轄のままだ。

もちろん、新しくオープンする「変なホテル」には、その時点での最新技術を導入する。ただ、将来に向けたさまざまな実験をしていくのは、今後もハウステンボスにある1号店。いわばゼロ号店の位置づけであり、だから社長直轄なのだ。観光ビジネス都市でなければ、大胆な実験はできない。(聞き手・構成/丸本忠之)

後編に続く

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