エベレスト登頂に成功して、待っていたのは「拉致監禁生活」だった

エベレスト登頂に成功して、待っていたのは「拉致監禁生活」だった

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/08/12
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大人の遊びを知り尽くした伝説の編集者・島地勝彦が、ゲストとともに“男の遊び”について語り合う「遊戯三昧」。今回は、1999年に25歳で7大陸最高峰最年少登頂記録を樹立したアルピニスト、野口健さんをお迎えした。世界的登山家と島地との、知られざる接点とは――。

全身編集長とアルピニストの出会い

島地: おい、日野! 会いたかったぞ。

日野: え、昨日も一昨日もその前の日も会ってましたが、そんなにぼくのことを気にかけていてくれたんですか?

島地: バカ、お前の顔なんて見飽きてる。今回のゲストの野口健のことだよ。前から「会いたい会いたい」とリクエストしてたのに、お前の怠慢でなかなか実現せず、今回ようやく久しぶりに会えたのがうれしいんだ。

日野: 怠慢というか、野口さん、海外に行ってることが多くて、なかなかうまく予定を合わせられなかったんですよ。

野口: どうも! お久しぶりです、社長!

島地: おお! 元気そうでなにより。初めて会ったのはオレが集英社インターナショナルの社長になったばかりの頃だから、20年くらい前だね。

野口: ぼくが25歳のときだから、18年前になります。

島地: ということは、野口は今、43歳か。いつ会っても変わらないね。

野口: いやぁ、脳が高山病で、成長が止まってるのかもしれません。

日野: それより、運動嫌いのシマジさんとアルピニストはどこで接点があったんでしょうか。

野口: 23歳からエベレストの登頂に挑戦して、23歳、24歳と2年続けて失敗していたとき、3回目のアタックの前に月刊プレイボーイのインタビューを受けたんですね。そこでお会いしたのは島地さんではなく、当時の編集長ですが、「登頂したらエベレストの山頂でこの旗を持って写真を撮ってください」と言われました。で、手渡されたのが「PLAYBOY」のウサギのロゴが入った旗でした。

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標高8000メートルで引き返す

島地: 後で写真を見せてもらったら、顔は凍傷になりかけで、鼻水は凍ってぐちゃぐちゃになりながら、素晴らしくいい表情をしていた。「これだ!」と編集者魂をくすぐるものがあり、月刊プレイボーイの表紙に使ったんだよ。

日野: あ、なんかそれ、学生時代に見た記憶があります。あの頃、月刊プレイボーイの表紙に男性って珍しかったですよね。

野口: 初めてだったようですよ。あの写真は、個人的にものすごく印象深いものでした。初めてのエベレスト登頂というのはもちろんですが、実は最後のキャンプを出発したとき、テントの中に旗を忘れてしまっていたんです。

島地: え! でも写真にしっかり写っていたよね。合成じゃないでしょうに。

野口: キャンプを出て1時間半ほど歩いたところで、突然、「いけね! 忘れた」と思い出しまして、そこから旗を取りにいったん引き返したんです。

日野: なんて律儀な。8000メートルを超える極限の状況で、よく引き返しましたね。旗ごときのために。

野口: 正直、ちょっと迷ったんですが、編集長のタナカさんがとても熱心な方だったので、その顔を思い浮かべたら「忘れました」じゃ申し訳ないと思って。

島地: そこで往復3時間無駄にしても、結果的には登頂に成功したわけだよね。ひょっとしたら、その律儀な行為を山の神様が見ていて、導いてくれたのかもしれない。

よく覚えているけど、タナカが感動していたのは写真の撮影順だよ。ネガのスリーブを見たら撮影の順番がわかるんだけど、最初がPLAYBOYの旗で、次が大学、そして国旗だった。

日野: 国旗や大学よりPLAYBOYの撮影が先だったんですね、それはすごい。

野口: そこは正直、意識が半分飛んでいるので……。

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帰国するなり、赤プリに拉致監禁

島地: 人間、無意識のほうが本音が出たりするものだ。野口にとって一番大事なのは「PLAYBOY」だった、ということでしょう。

日野: また都合のいいまとめ方をする。そういえば、野口さんの最初の著書は集英社インターナショナルから発行されたのでは?

島地: そう、『落ちこぼれてエベレスト』。オレと野口が最初にあったのはそこだったね。25歳で当時の7大陸最高峰登頂最年少記録を樹立ということで、日本のマスコミでも話題になっていた。帰国したら大騒ぎになるから、タナカに「ホテルにカンヅメにしてインタビュー、どこよりも早く出版するぞ」と。タナカが偉かったのは、帰国が成田ではなく関空だという情報をちゃんとかぎつけて、拉致に成功したことだね。

日野: 拉致って……。

野口: いや、ほんとにそんな感じでしたよ。空港のロビーに出たらなぜかタナカさんがいて、挨拶もそこそこに東京へ連れて行かれ、赤坂プリンスホテルの一室に2週間くらい監禁されたんです。そこに現れたのが、今よりふっくらしていた島地さんでした。

島地: 感動の出会いだったよな。

野口: 部屋に入るなり「おめでとう。さあ、私の胸に飛び込んできなさい!」と。

日野: ……意味がわからないです。

野口: ぼくもわからなかったけど、けっこう疲れていたので何も考えず、胸に飛び込んだらギューッとハグされて……。

島地: ははは、それは覚えてないけど、なかなかいいシーンじゃないか。

野口: ぼくの父親も葉巻を吸うんですが、島地さんの胸に飛び込んだら、葉巻のいい匂いがふわっと漂って、少しホッとしたのを覚えてます。というか、あれほど第一印象が強烈な出会いはそんなにありませんから。

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酒池肉林!? 懐かしの拉致監禁生活

日野: それで、拉致監禁生活はどうだったんですか?

野口: 島地さんがいうには、「昼間はびっちりインタビューをする。でも夕方以降は好きに過ごしてもらってかまわない。ルームサービスもバーも好きなだけ使っていいし、女を連れ込んでもいいぞ」と。赤プリのスイートルームに泊まって、飲み食いもぜんぶ集英社モチですよ。ぼくはまだ学生だったんで、それはもう、夢のように楽しい日々でした。

島地: 連れ込んだな。

野口: いや、そりゃ、あの状況なら、自然とそうなりますよ。

島地: そうやって心身ともにも充実したから、いい本が出来たんだね。

野口: 今では考えられませんけど、初版3万から始まり、あれよあれよという間に増刷されて、ほんとうにありがとうございました。

島地: いやいや。旬の素材を料理する経験は編集者冥利に尽きるので、こっちも感謝しているよ。

日野: エベレストとか、8000メートルを超える山にアタックするときは、その心身の充実はどうするんでしょうか。ひたすらストイックに過ごすんですか?

野口: エベレストの場合、5300メートルのベースキャンプまでは、ヤクに荷物を載せていろいろ運べるんです。人間、食べないとどうにもならないので、そこまでは日本食が食べられるようにしてました。日本酒も、瓶のままだと割れてしまうからペットボトルに移して、テントの下に穴を掘って入れておくと、ちょうどいい冷酒になります。

島地: 上に行って酸素が薄くなると、動くのも億劫になるだろうから、せめてベースキャンプでは気分転換しないとね。

野口: ずっと低酸素状態が続くと精神のバランスを崩すこともあるので、ベースキャンプにはテントにちゃんとしたベッドを設営したり、食事には漆器を使ったり、自分なりに寛げる空間にしてました。

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山男たちを慰めるメイド・イン・ジャパン

島地: 山は男だらけの世界だと思うけど、アッチのほうは?

野口: テレビとビデオデッキがあれば、やっぱりアダルトビデオですね。息抜きにはもってこいというか、その瞬間だけは別の世界に飛んでいけるから。ただヘッドホンをしないと、ヒマラヤにAV女優の艶めかしい声が響くことになります。

日野: それはなかなかシュールな光景ですね。でも、標高が上がっていくとビデオは無理ですよね。

島地: そこはやっぱりエロ本の出番だろう。

野口: おっしゃる通りです。標高の高いキャンプには、それこそ世界各国の、いろんな言語のエロ本が山積みです。書いてあることはわからなくても、写真で載ってるのは万国共通なので。

島地: その中で一番人気なのは日本のエロ本?

野口: 実はそうなんです。

日野: 低酸素状態なら、そのものズバリの洋ピンのほうが話は早いのでは?

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島地: まったくお前は、情緒というものがわかってないな。いい歳して風俗通いなんかしてる場合じゃないぞ。

野口: 情緒は大切ですね。そのものズバリだと、すぐお腹いっぱいな感じになってしまいます。そりより、見えそうで見えない日本のエロ本のほうが、「ああ、この薄い布一枚の向こう側はどうなってるのかなぁ」と妄想することになるので、置かれている環境の厳しさを一瞬でも忘れられるんです。実はそこが重要。

いろんな国のエロ本を見ましたけど、女性の肌をしっとり見せるために、霧吹きで濡らしているのは日本だけですからね。

島地: 確かに、「濡れる」っていい響きだよね。低酸素で意識がもうろうとしていても、そういう感性を失わないとは、やっぱり野口は、このシマジが見込んだだけのことはあるね。では改めて乾杯といきましょう!

後編につづく〉

(構成:小野塚久男/写真:峯竜也)
〔撮影協力〕D'arbre's Bar

野口健(のぐち・けん)
アルピニスト、亜細亜大学客員教授、了徳寺大学客員教授。1973年、アメリカ・ボストン生まれ。亜細亜大学卒業。植村直己の著書に感銘を受け、登山を始める。99年、エベレスト(ネパール側)登頂に成功し、7大陸最高峰最年少登頂記録を25歳で樹立。以降、エベレストや富士山に散乱するごみ問題に着目して清掃登山を開始。2007年、エベレストをチベット側から登頂に成功。近年は清掃活動に加え、地球温暖化による氷河の融解防止にむけた対策、日本兵の遺骨調査活動などにも力を入れている。2008年植村直己冒険賞受賞。2015年安藤忠雄文化財団賞受賞。主な著書に『落ちこぼれてエベレスト』(集英社)、『写真集 ヒマラヤに捧ぐ』(集英社インターナショナル)など。

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