学費は“出世払い”でOK 入学希望者が殺到した米大学の正体

学費は“出世払い”でOK 入学希望者が殺到した米大学の正体

  • ITmedia NEWS
  • 更新日:2017/10/13
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学費は出世払い、在学中の支払いは不要──そんな一風変わった大学が、米国にある。

日本でも社会問題化している「奨学金制度」。学費の高騰、非正規雇用の増加による収入の低下などから、返済に悩まされる人は少なくない。

学費が高額なことで知られている米国でも、学資ローンは深刻な問題だ。学生が卒業時に抱える学資ローンの平均残高は3万4千ドル(約380万円)に上り、4400万人もの米国人が返済途中だという。

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そんな米国・サンフランシスコでとあるスタートアップが9月に開講した教育機関「MissionU」は、入学時に支払う学費がなんと無料。しかも、既存の大学では珍しい、社会に出て本当に必要とされるスキルが身につくよう企業がカリキュラムを監修している。入学希望者が殺到したわけだが、一体どのような仕組みで運営されているのだろうか。

年収5万ドル超えで初めて返済

MissionUは、サンフランシスコのスタートアップが始めた、入学時に学費のいらない1年制の「大学」だ。その代わり、卒業して就職した生徒は、給料が5万ドル(約560万円)を超えた時点から3年間、15%の学費を支払うことになる。いわゆる「出世払い」だ。

運営するスタートアップは2017年3月に創業、9月にMissionUの第1期を開講したばかりだ。同社サイトによると、1月、5月、9月の年3回コースがスタートし、現在11月5日を締め切りに18年1月スタートの生徒を募集中だ。コース内容は全て「Data Analytics+Business Intelligence」だが、今後科目を増やすことも計画されている。

2018年1月スタートのコースは現在受講者を募集中

1年間の講義は、4つのパートに分けられる。始めに「ファウンデーション」と呼ばれる、自分の能力やスキルを洗い出し、キャリアのロードマップを描く期間が設けられる。

続いて、数人のチームで自分たちが選択した分野に関するプロジェクトに取り組む「スペシャリゼーション」期間。そのあと、実際に企業で働くインターン期間の「ワークエクスペリエンス」を経て、最後6週間の「キャリアローンチ」期間で、仕事の応募から面接、給料の交渉まで就職活動のポイントを学ぶ。

講義の大半はオンラインでの受講となるが、録画されたものではなくライブ配信となる。ほかの生徒と実際に顔を合わせるのは、2週間に1回のミーティング時のみ。とはいえ、MissionUが提供するコースはフルタイムとして設定されており、生徒には仕事との両立ではなく、学習に専念する高い意欲が求められる。

MissionUは、カリキュラムの作成方法も既存の大学と異なる。サンフランシスコにある地の利を生かし、SpotifyやLyft、Uber、Warby Parkerなど有名ベンチャーと提携。企業から職場で必要とされるスキルに関する助言を受け、カリキュラムを作っているのだ。

さらに、ハーバードイノベーションラボやスタンフォード大学経営大学院、MITメディアラボといった有名大学に所属する専門家の監修も受けているという。

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カリキュラム作成に携わるエキスパートたち

生徒に「投資」するシステム

MissionUへの出願は、同社サイトから行う。SATやGPAといった、大学進学のための適性試験の結果は必要なし。19歳以上であれば、高校卒業の資格も必須ではないという。

ただ、2週間に1度ミーティングがあるため、サンフランシスコにあるMissionU本社から50マイル(約80キロ)圏内に居住しているのが条件となる。

選考は3段階。まず出願ページで基本情報を入力したあと、定量的な質問に答える。その結果適正だと判断されれば、4人1組で行う45分間のグループチャレンジに参加。グループチャレンジの選考に合格した出願者のみ、最後の個人面接へと進むことになる。

現在開講中のコースには、30人の定員に対して4700人からの出願があったという。合格率「1%以下」の狭き門ではあるが、卒業後一定の収入を得てから授業料を返還できるこのシステムは、将来いくら稼げるか分からないまま返済額が増えていく既存の学資ローンのシステムと比べ、挑戦しがいのある魅力的なものといえるだろう。

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開講を喜ぶ30人の学生たち(Ryan CraigのTwitter:@ryancraiguv

さらに、既存の大学が生徒から授業料を集めて授業を提供するのに対し、MissionUはまず生徒に無料で授業を提供し、就職を支援することを重視する。いわば、投資だ。

MissionUは、人工知能などテクノロジーが高度化し、近い未来失くなる可能性がある職種もある中、21世紀を生き抜ける人材の教育を目指している。また、卒業生の初任給は7万ドル(約790万円)をターゲットとしているという。

創業の背景にある、米国の厳しい現実

MissionUを立ち上げたのは、08年からこれまでに世界中の発展途上国に400以上の小学校を設立した非営利スタートアップの創業者、Adam Braunさん。

現在33歳の彼は、妻のTehillahさんが経済的な理由から大学を中退し、そのときすでに借りていた10万ドル(約1130万円)以上もの学資ローンを返済するために働くことを余儀なくされていたことから、MissionUを着想したという。

米国の学資ローンの全残高は年々上昇しており、ニューヨーク連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of New York)によると、16年の時点でその額は1兆3千億ドル(約146兆円)に上り、10年前に比べて170%の上昇となった。なお、同国では自己破産を申し出ても学資ローンは清算されず、完済するまで返済する義務があるというから驚きだ。

Adamさんは、「経済的な理由で学習意欲のある学生やその親が人生を棒に振ることはあってはならないこと。学生たちが経済面で悩まずに将来のことを考え、トップクラスの教育を受け、21世紀でキャリアを築いていけるようMissionUを創立した」と語っている。

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創業者のAdam Braunさん

MissionUはまだスタートしたばかりだが、軌道に乗ればサンフランシスコ以外での開講も考えており、将来的には既存の大学と肩を並べるような存在を目指している。学生に「投資」するという概念が、教育業界に広がっていくか。今後に注目だ。

執筆:中井千尋(Livit

編集:岡徳之(Livit

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