中国人の眼に映る今の日本は「20世紀」のままだった...

中国人の眼に映る今の日本は「20世紀」のままだった...

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/06/13
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北京人から見た東京の印象

けやきの樹々がキラキラと万緑の葉をなびかせる東京六本木・けやき坂通りのフレンチ・カフェ。私はそこで、5年ぶりに北京人のAさん(32歳)と再会した。

私は2009年から2012年まで講談社北京に勤務していたが、彼女は私がその時に採用した中国人社員の一人だった。当時、彼女は東京の名門大学の大学院を出たばかりで、大変優秀な社員だった。

私が帰任してまもなく、彼女は講談社北京を辞め、北京のIT企業に転職して成功した。結婚してマンションも買ったが、このたび日本の大手IT企業に中国事業の統括者候補としてヘッドハンティングされた。そこで意を決して、中国人の夫と共に東京に住むことにしたのだという。

いまや高級スーツに身をかためた「六本木ヒルズ族」となった私のかつての部下は、開口一番、こう言った。

「私が東京へ来て最初に買ったものは何だと思います? これですよ」

そう言って彼女は、可愛らしい柄の財布を、ポンとテーブルに置いた。

「中国ではもう数年前から、キャッシュレス社会になっています。スーパー、コンビニ、タクシー、レストランから屋台に至るまで、すべてスマホ決済です。カバンの中には一応、10元札(約160円)を一枚だけ入れていましたが、それは万が一スマホをどこかに置き忘れたときのためです。

私は現金を使うなんて、20世紀の映画かドラマの世界のことと思っていました。だから北京から東京に引っ越したら、まるで21世紀の世界から20世紀の世界に舞い戻ったような気分になったんです」

私はやおら興味を覚え、他にも東京の印象を聞いてみた。

「そうですね、ひと言でいえば、何もかも安いなという感じです。例えば、東京のデパートやスーパーで買い物をしたり、レストランで食事したりしていても、北京よりだいたい2割ぐらいは安いイメージです。

東京ではアパートを借りたのですが、家賃も北京より2割安かった。ちなみに給料も2割くらい下がったので、生活レベルとおしてはトントンですが」

そう言って彼女は、屈託なく笑った。

私は彼女に、「それではなぜ東京に来たの?」と聞いてみた。

「東京には、北京にはない3つのものがあるからです。それは安静(静けさ)、幹浄(清潔さ)、安全です。

安静(アンジン)というのは、街が安静ということもありますが、社会が安静ということでもあります。例えば、世界最大の競争社会である中国では、24時間365日気が休まる時がなく、私がいたIT業界では二人の知人が過労死しました。それが日本企業に入社したら、残業がほとんどないので驚いています。

幹浄(カンジン)というのは、何と言っても空気のおいしさですね。長年、のどの痛みに悩まされてきましたが、東京に来て一週間で治りました。

安全(アンチュエン)というのは、東京では北京と違って、手荷物検査なしで地下鉄に乗れます。食品を買う時も、わざわざ安全を確かめなくても大丈夫です。

総じていえば、北京での生活は疲れますし、これから子育てをしたりすることを考えたら、東京の方が暮らしやすいと思ったんです」

過去の栄光にしがみつく日本人

私はそんなAさんとコーヒーを飲んでいて、「20世紀と21世紀」という言葉が引っ掛かった。たしかそんな話を少し前にもどこかで聞いたような気がした。

それは3ヵ月ほど前、青山のカフェでひとりでランチしていた時だった。

たまたま隣席に、スーツ姿の4人の中国人の若者が座った。その4人は、近くの日本の大手総合商社に勤める中国人社員たちで、中国語で会話していたが、周囲に日本人しかいないと思ってか、言いたい放題だった。

「まったく、うちの会社の幹部たちは、21世紀の世の中で、いまだに20世紀のような発想でいるんだから、やってられないよ。

日本が多額のODA(政府開発援助)を与えて中国に経済支援を行っていたなどというのは、20世紀の話だろう。いまや中国(台湾)の鴻海(ホンハイ)がシャープを買収する時代だよ。

中国には十分な資金も技術もあるんだから、これからの日本の商社というのは、中国企業による日本買収をサポートするところにこそ勝機がある。なのに20世紀にオイシイ思いをしてきたうちの会社の日本人幹部たちは、いつまでたっても『過去の栄光』にしがみつこうとする……」

4人の中国人商社マンたちは、そうやって約1時間にわたって、日本人上司の批判をブっていたのだった。そこでもキーワードは、「20世紀と21世紀の違い」だった。

時はまさに「第3次華僑ブーム」

最近では、多くの日本企業で、中国人社員を採用するようになってきた。それにつれて、在日中国人の数も急増している。

法務省のデータによれば、2016年末時点の在日中国人数は69万5522人で、全外国人居住者の29%を占めトップである。前年比3万人増で、2位の韓国人とは、すでに10%もの差をつけている。その意味で、現在は、「第3次華僑ブーム」とも言える。

古くは1894年の日清戦争から1911年の辛亥革命の時期に、祖国の混乱を逃れた多くの中国人が、横浜、神戸、長崎などにやって来た。この時期、多くの留学生も来日し、そのまま日本に住みつく人たちもいた。

続いて、第二次世界大戦後の国共内戦の時期(1946年~1949年)にも、一定数の中国人が日本の中華街などに辿り着いている。

1949年の新中国建国前に日本に住みついた中国人を、「老華僑」と呼ぶ。老華僑の特徴は、中華料理店の経営者が多いことだ。

それに対し、1978年の改革開放後に日本へやって来たのが「新華僑」である。新華僑は主に、中国の国費留学生出身の超エリートと、レストランの皿洗いなどに従事する単純労働者に二分される。前者は高学歴の学位を取得し、現在、日本で企業経営者や大学教授になっていたりする。

こうした20世紀の「老華僑」及び「新華僑」に対して、21世紀の現在の新たな華僑ブームの呼び名はない。そこで私は「超華僑」と名付けたい。

私が若かりし頃、日本の若者は「新人類」と呼ばれたものだが、いまの中国の若者は本国で「超新人類」と呼ばれているからだ。

「超華僑」の眼に映る日本

「超華僑」の特徴は、第一に一人っ子であることだ。中国は1979年から一人っ子政策を採り始めたため、「80後」(バーリンホウ)「90後」(ジウリンホウ)と呼ばれる1980年代生まれ、1990年代生まれの若者たちは、ほぼ全員が一人っ子なのである。

中国で一人っ子は、父母と父母それぞれの両親という「6人の親」に育てられるため、「小皇帝」と呼ばれる。子供の頃から贅沢三昧で、「幼年太り」が指摘されるほどだ。そのため彼らは、来日しても決して皿洗いのバイトなどはやらない。

「超華僑」の第二の特徴は、超エリートではない日本留学組が多いことだ。彼らの世代のトップエリートは、ほとんどがアメリカに留学する。二番手は、イギリスやドイツなどヨーロッパに行く。その次の三番手グループが留学先に選ぶのが、日本やオーストラリアなのである。

私は2008年から週に1回、明治大学で東アジア論を講義している。最近の中国人留学生たちに来日した動機を質ねると、「高考(大学入試)に落ちたから」「アメリカ留学への準備として」「親からどこか留学に行ってこいと言われたから」…と、消極的な理由が多い。私が学生時代を送った1980年代のような超エリート中国人は、いまや皆無である。

「超華僑」の第三の特徴は、親日的でありながら、日本をどこかクールに眺めていることだ。

彼らは、日本のマンガやアニメを観て育った世代なので、親日か反日かといえば、それは圧倒的に親日である。日本のアニメの話をしだすと、何時間でも話が尽きない。そして抗日ドラマを夢中になって観る親の世代を、心中でバカにしている。

だが、そうは言っても、彼らは中国が日進月歩で成長していく中で育った裕福な世代である。中国のGDPは2010年に日本を追い越し、まもなく3倍に達しようとしている。そんな中で、彼らが就職先や留学先に選んだ日本は、「失われた20年」といわれ、いまや急速に進む少子高齢化にアップアップしている。

ひと言で言えば、「超華僑」の眼に映る日本は、輝いていないのである。それなのになぜ彼らが日本に居住する選択をしたかと言えば、それはやはり冒頭のAさんのように「安静・幹浄・安全」という「3点セット」が魅力なのだろう。

日本的「21世紀思考」とは

彼ら若い「超華僑」やいまの中国人留学生たちと接していて痛感するのは、われわれ日本人の側もそろそろ、発想の転換をはかっていかねばならない、ということだ。

日本のテレビをつけると、相変わらず「ジャパン・アズ・ナンバーワン」のような番組が多いし、書店へ行ってもそのような本がズラリと並んでいる。そして中国は相変わらず、蔑視の対象にされている。

だが現実はと言えば、中国は先月14日と15日「一帯一路国際サミットフォーラム」を開催した。6月に入っても、先週8日、9日にはカザフスタンで「上海協力機構(SCO)首脳会議」を開き、従来の6ヵ国にインドとパキスタンを加えてしまった。そして来月7日、8日には、中国はドイツG20首脳会議で、EUと準同盟のような関係を築こうとしている。

私は先週、来日したバングラデシュのシャリアール外務担当国務相に短時間、お目にかかる機会があったが、中国の話になると頬をほころばせてこう述べた。

「中国は最高に大切な友人だ。昨年10月に習近平主席がダッカを訪問し、計27項目、136億ドルもの開発計画にサインしてくれたのだ」

同大臣は、「2016年のバングラデシュ」と題した30ページの冊子を記念にくれたが、何と1ページ目から、習主席が右手を振る写真がドーンと掲載せれていた。

アメリカの経済誌『フォーブス』は、毎年年末に「世界に影響を与える人物ランキング」を発表している。昨年末に出された最新版では、習近平主席が4位で、安倍晋三首相は37位。これがいまの世界の現実である。

同じく昨年末に内閣府が発表した外国に関する世論調査によれば、「中国人に親しみを感じない」と答えた日本人は80.5%。だがその一方で「日中関係の発展は重要である」と答えた日本人も、72.9%に上った。

日本も「21世紀思考」に立ち、巨竜と化した中国を最大限活用する術を模索していく時に来ている。同時に「超華僑」も新たな日本の資源と捉え、日本社会に取り込んでいくべきである。

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さらに最終章では「普通の国」になろうとする日本と「普通の国」に戻ろうとするアメリカの新たな関係について説いている。
宮崎氏の主張は、平和とは戦争と戦争の間にある「休憩時間」でしかないので、日本は憲法を改正し、防衛力を強化せよというものだ。そして自主憲法、自主防衛、領土保全、正しい歴史認識の「4つの主権」を取り戻せと結論づけている。「三島由紀夫の弟子」の熱い1冊である。

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