姜尚中「今回の衆院選は日本の議院内閣制に禍根残した」

姜尚中「今回の衆院選は日本の議院内閣制に禍根残した」

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  • 更新日:2017/12/06
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姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

*  *  *

ドイツのメルケル首相のキリスト教民主同盟は、第2党の社会民主党との大連立政権を目指すことを明らかにしました。ドイツの連立交渉をめぐっては、キリスト教民主同盟と自由民主党、環境政党との3党連立交渉の決裂後、少数与党内閣の道を選ぶのか、あるいは解散総選挙か、と大いに揺れました。これらのドイツの連立騒動からわかることは、「解散権の行使」は日本のように簡単ではないということです。

一方で10月に行われた日本の衆議院選挙は事実上解散権の乱用に近く、これをめぐっては様々な議論が出ていました。しかし、残念なことに選挙後はほぼ議論されていません。この解散権の行使を考えるときにカギとなるのは、憲法第7条です。第7条には天皇の国事行為として衆議院の解散がありますが、天皇は政治に参入する権能を持っていませんから、結局内閣の助言と承認を盾に、あたかも内閣総理大臣の専権事項であるかのように行使されました。

ドイツは大統領が解散権を持っています。しかし日本の天皇と違うのは、ドイツの大統領は内閣首相と交渉したり、野党党首と会ったりできるということです。今回のキリスト教民主同盟と社会民主党の協議も、社会民主党出身のシュタインマイヤー大統領の仲介がありました。

また第69条には「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と規定されています。この条令での解散は、宮澤内閣のとき以降、一度も起きていないということからも、今回の解散権の行使は異常です。

「大義名分の中で有権者に選ばせる機会を与えているのだから、より民主的だ」というレトリックが使われましたが、それもおかしな理屈です。内閣の不信任決議が出ているわけでもない。有権者も何を問いただしたらいいのかわからない。そんな状況での選挙は、野党の分裂で与党大勝という結果になりました。

今回の衆議院選挙は大義がないだけでなく、日本の議院内閣制に大きな禍根を残しました。解散権については、憲法上の問題も含めて徹底的に議論すべきです。

※AERA 2017年12月11日号

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