50代は不要...!大企業でいよいよ「バブル世代切り」が加速し始めた

50代は不要...!大企業でいよいよ「バブル世代切り」が加速し始めた

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/23
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普通に生きてきたつもりなのに、入社した時代のイメージが拭えず、上からも下からもバカにされる。挙げ句の果てに、人減らしが始まればいの一番に削減対象にされる――。もう目も当てられない。

辞めたくないのに!

「知っての通り、ウチの会社の経営環境はとても厳しい。希望退職に応じれば、再就職支援のサービスも利用できます。あなたのお考えを聞かせて欲しい」

東芝の子会社に勤める50代のAさんは、5月下旬、西日の差し込む会議室に呼び出され、上司から開口一番こう言われた。

それは、紛れもない「早期退職勧奨」だった。

「私はローンも返し終えていないし、会社を辞めるつもりはさらさらなかったので、断りました。でも、以降は何度同じ意思表示をしても、たびたび面談に呼び出されるようになった。

4回目には、『あなたの能力と仕事内容を考えると、もういまの場所で働いてもらうことはできません』とまで言われました。

むろん強要すると違法になるので、会社側は『辞めろ』とはっきり口に出して言うことはありません。でも、制度に応じると言うまで面談はずっと続きます。

同じ東芝グループの中には、希望退職への応募を拒んだ結果、これまでのキャリアとまったく関係のない部署にまわされて四苦八苦している同世代の社員もたくさんいる。

会社側は我々のことをはなから『必要がない』と決めつけていて、今後の希望を聞こうとする様子すらなかった」

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結局、会社の希望退職募集は9月でいったん打ち切られ、Aさんはいまも同社で働いている。

「なんとか残れたものの、周囲からは『必要ないのに居座っている』という目で見られている気がするし、いつまた退職の募集がかかるかもわからない。ずっと気分が落ち着かず、仕事も手につきません」

東芝グループのように経営が厳しい企業だけでなく、ありとあらゆる企業で希望・早期退職制度の募集が進められている。

そうしたなか、最大のターゲットとなっているのが、現在50代となったバブル入社世代だ。

9月下旬には、'18年度の決算で過去最高益を稼ぎ出したキリンビールが、主にバブル入社世代の管理職を対象に、早期退職の募集を実施することが明らかになったばかりだ。

「現在、日本経済は『不況の真っ只中』という状況ではなく、むしろ少し良いくらいでしょう。企業としては、まだ余裕があるうちに退職金の割増額を多くしてでも、早期・希望退職を進めておきたいというのが本音です」(人事ジャーナリストの溝上憲文氏)

バブル組が就職した'80年代半ば~'90年代初頭は、家電メーカーを中心に1000人を超える採用を行う会社が続出した。

試験会場への交通費は言い値で支給され、簡単な面接を受けるだけで即採用。そこそこの大学を出ていれば、前後の世代よりずっと簡単に大手企業に入れた。囲い込みのために、入社前から手厚い接待を受ける学生までいた。

その結果、会社では「お気楽に好き勝手ばかりしてきた世代だから使えない」というレッテルをはられてきたのがこの世代である。

経営を圧迫する塊

若い頃にさんざんいい思いをしたのだから、お荷物になったのなら、さっさといなくなれ――。そんな囁きがバブル世代の周囲を取り巻いている。

だが、果たしてそうだったのか。

「バブル期の大量採用のあと、採用を絞りすぎたせいで、バブル入社組は年次が上がっても変わらず『下っ端仕事』をさせられるケースが多かった。

望んでいても、高いスキルが要求されるような仕事にはなかなか携われずに年齢を重ね、部下が少ないぶんリーダーシップもあまり身につかない。

そんな『宙ぶらりん』の状態をひきずったまま、彼らは会社人生の終盤を迎えてしまった。なんとも不運です」(人事コンサルタントの林明文氏)

みんなが遊んで暮らしてきたわけじゃない。人数が多いぶん、出来の悪い社員もいたが、優秀な者もいた。

しかし、50代になった彼らは、上からも下からも「経営を圧迫する邪魔な塊」としか見られなくなった。そして、ただ一括りに扱われ、会社を追い出されようとしている。

「実際、給料が高く、人数も多いバブル入社世代の賃金は企業の経営に重くのしかかっている。

一方、下の世代からも、『モチベーションが低いのに給料が高い世代』と見なされやすい。かくして、高額な退職金を払ってでもバブル入社世代の50代を減らしたいという流れはどんどん加速しているのです」(前出・林氏)

こうした、バブル入社世代を狙い撃ちするような人員削減の波がもっとも露骨に現れているのがメガバンクだ。

すでに三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と三井住友FGはそれぞれ1万人、5000人相当の業務量削減を掲げている。みずほFGに至っては1万9000人の人員削減を目指す。

現在、銀行は既存の定型的な業務をAIに置き換え、人員の効率化を進めている真っ最中。さらに、ネットバンキングの技術が発達したことで、これまで巨額のコストをかけて維持していた支店の統廃合も進んでいる。

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ここでも、若い世代に比べてデジタルへの順応力に劣るバブル入社世代は、格好の「削減対象」となっているのだ。

「これまでも銀行は、40代の後半の行員向けに『黄昏研修』と呼ばれる、退職後に向けた研修を行ってきました。数年後には訪れる出向や転籍という事実上の『定年』を前にして、サラリーマンとしての覚悟を決めさせるためのものです。

ところが、合併を繰り返して誕生したメガバンクにはバブル入行組の同期が1000人近く存在する代もあり、出向や転籍の受け皿を十分に用意することが難しくなっている。

そこで、バブル入行世代に対しては『カネは払うから、後のキャリアは自分たちで切り開いてくれ』と突き放すつもりなのです」(金融ジャーナリスト)

むろん、企業側にもバブル入社世代の人員を整理しなければならない事情がある。

現状でさえ、企業は国から希望する社員を65歳まで雇い続けることが義務付けられているうえ、将来的にはそれが70歳まで延長される見通しだ。人数の多いバブル入社世代をすべて70歳まで雇い続けることになれば、会社の屋台骨が揺らぎかねない。

再就職先も決まらない

「結局、会社からすれば私らは一人の社員ではなく、まとめていなくなってほしい『バブルの世代』に過ぎないんです」

こう寂しげに語るのは、大手百貨店の三越伊勢丹を早期退職した50代男性のBさんだ。

同社は'17年の秋に早期退職制度を見直し、11月にはそれまでの対象年齢を従来の50歳から48歳以上に引き下げた。

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近年の大企業による「早期退職ブーム」に先鞭をつけたのが、三越伊勢丹だったといえる。

「早期退職希望者を募る面談が始まったのは'17年の11月からで、私が退職したのはその翌年のこと。私は大学を卒業して三越に入社して以来、店舗への商品の買い入れ、いわゆる『バイヤー』の仕事をずっとやっていました。

ところが、店舗が次々に閉鎖され、人がいらなくなったタイミングで担当部長に呼び出された」(Bさん)

部長からは、Bさんに対して「ネクストチャレンジの場」と称して、いくつかの再就職先が提示された。しかし、その内容を見てBさんは愕然とする。

「紹介されたのは、介護施設のマネージャーとか、クルマのセールス会社などで、いずれもいままでやってきた仕事とは、あまりにも畑が違いすぎた。

自分としては、バイヤーの仕事は続けられないとしても、愛着のある三越の店舗で働き続けたかった。でも、上司は『会社に残ったとしても、あなたの経験を活かせる仕事はありません』とにべもなかった」

結局、悩んでいても退職金の上乗せ額がどんどん減っていくと知ったBさんは、'18年に三越伊勢丹を退職した。

「退職してからすでに1年半ほどになりますが、再就職先はまだ決まっていません」(Bさん)

仮に会社に残れたとしても、一度「いらない」と判断した人間に対して、会社が居心地の良い働き場所を用意してくれるはずもない。

去るか、しがみつくか

富士通は昨年の10月、関連会社の吸収を発表、事務部門の社員の約3割にあたる約5000人の配置転換を打ち出した。

そんななか、経理部門から営業へ転換させられたのがCさん(50代)だ。

「私はもともとシステムエンジニアです。ソフト開発の技術者として入社した人間で、経理の専門家でもなんでもない。

それでも、必要とされるうちが華だと思い、黙々と働いてきました。でも、今回の吸収で間接部門の人員が増えたからと、業務転換の対象になった」

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Cさんは転換を了承したとはいえ、異動させられた先はこれまでとはまったく畑の違う営業部門だった。

「私は、もともと人と話すのが苦手だからエンジニアを目指したクチでしたからね。

それでも経理の仕事は数字との勝負ですから黙々とこなすことができた。営業は違う。50を過ぎてから製品を売れと言われても、どうしていいかわからず、営業先でも上手く話せません」(Cさん)

そして、昨年12月、会社は追い打ちをかけるように早期退職の募集をかける。だが、Cさんは会社に残った。

「相変わらず、営業でロクな成績を挙げられず、とても肩身が狭いです。でも、何歳まで生きるかわからない時代に、おいそれと会社を辞めるわけにはいかない。恥ずかしい思いをしてでも定年までしがみつくつもりです。

『必要とされる側』になれるよう努力してこなかったのが悪い、と言われればそれまでなのですが……。一体どうすれば、私たちは幸せな会社人生を送れたのか。最近は、独りで思いにふけることが多いです」(Cさん)

作家で『会社人生、五十路の壁』の著書もある江上剛氏が言う。

「バブル組をひとまとめにして『お荷物』と言うのは簡単でしょう。ただ、当事者である彼らからすれば、いい時代に運良く入社できた会社で、淡々と働いてきただけ。

それをいまになって、経営者たちからも下の世代からも『諸悪の根源』のように言われている風潮はあまりにも忍びない。

社員の大幅削減を進めている会社で、幹部が数億円の収入を得ているなんてニュースを聞くと、『人生とはいったいなんなのだろう』と哀しい気持ちになります。

『失われた30年』とよく言いますが、バブル世代が黙々と働き続けたからこそ、底が抜けなかったのだということに、もっと光があたってもいいのではないでしょうか」

会社を去り、職探しに明け暮れる者もいれば、アルバイト暮らしの者もいる。腹を括って会社にしがみつく者もいる。バブル世代は、入社時には想像もしなかった日々を今日も生きている。

「週刊現代」2019年11月2日・9日合併号より

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