国が東電の不作為が招いた悲劇? 津波の安全性よりプルサーマル稼働を優先か

国が東電の不作為が招いた悲劇? 津波の安全性よりプルサーマル稼働を優先か

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  • 更新日:2017/10/12
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保安院の指示で、JNESが東北電力女川原発の津波に対する安全性を確かめた報告書。福島・宮城県沖の大津波を4種類想定していた(撮影/写真部・片山菜緒子)

今年7月13日付で原子力規制委員会は、旧原子力安全・保安院が2010年4月30日に指示し、旧原子力安全基盤機構(JNES)により同年11月30日にまとめられた報告書を開示した。それは、国や東京電力が主張する福島第一原発事故が「津波予測不能」を覆す新資料だった。ジャーナリスト・添田孝史氏がレポートする。

【写真】津波の影響を軽減するため進む盛り土工事の様子

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そもそもこの報告書がこれまで公開されていなかったのも不可解だ。保安院の当時の耐震安全審査室長で、現在は原子力規制庁で耐震審査実務のトップを務める小林勝・耐震等規制総括官に取材を申し込んだが、規制庁は「開示した文書が全て」とし、取材拒否。当時、小林氏の上司だった森山善範審議官(現・経済産業省資源エネルギー庁原子力政策課原子力技術戦略総括研究官)に尋ねてみると、「JNESに指示したことは記憶にない」という返答だった。

だがちょうどこの頃、非公開の動機ともなる事態が進んでいた。福島第一原発で10年に動き始めた国策のプルサーマル(プルトニウムを通常の原発で燃やすこと)だ。

10年2月、福島県の佐藤雄平知事(当時)は県議会で、福島第一原発3号機のプルサーマル計画について、耐震安全性の確認など3条件が満たされれば同意する方針を表明。これを受け、保安院側では3号機の耐震安全性の確認について、津波まで進めるのか、それとも揺れだけに留めるのか、意見が分かれたようだ。

政府の事故調査委員会による聴取の記録に、小林氏の発言内容はこう書かれている。

<「森山審議官は、当時、貞観地震が議論になり始めていたことから、福島県知事の発言に係る・耐震安全性の検知から、貞観地震の問題をクリアした方がいいんじゃないかと言い始めた。私も森山審議官の考えに賛成だったが、結論として、1F-3《福島第一原発3号機》のプルサーマル稼働を急ぐため、■■■■■■■■原案委に諮らなかった。

私は、野口安全審査課長(当時)に対し、かような取扱いに異議を唱え、『安全委員会に■■■■■話を持って行って、炉の安全性について議論した方がよいのではないか。』と言ったが、野口課長は『その件は、安全委員会と手を握っているから、余計な事を言うな。』と言った。また、当時ノンキャリのトップだった原広報課長から『あまり関わるとクビになるよ。』と言われた事を覚えている。当時の状況は、私や森山審議官のように、貞観地震について懸念する人もいれば、1F-3のプルサーマルを推進したいという東電側の事情に理解を示す人もいたという状況だったこともあり、■■■■■■■原案委に諮らなかった。>(原文ママ、■は聴取結果書の黒塗り部分)

要は、担当者が「原子力安全委員会と手を握っているから余計な事を言うな」「あまり関わるとクビになるよ」と言われる状況下で、女川原発が貞観地震の問題をすでにクリアした事実を公開できなかったということだろう。

規制庁の内部資料によれば、この報告書だけでなく保安院の指示文書など少なくとも32点の関連資料が政府事故調には提出されていたとみられる。しかし、政府事故調委員で貞観地震の津波を熱心に調べていた作家の柳田邦男氏は「委員レベルには一切上がってきていない」と断言する。政府事故調の報告書は、前述した「クビになるよ」と言われた小林氏の聴取結果にも触れていない。

結局、国策のプルサーマル推進のため、政府は10年当時、津波対策で先行する東北電の対策状況を伏せ、東電の不作為を助けたと受け止められてもおかしくない経過だ。そしてあろうことか、政府事故調の事務局は、それを知りながら報告書に記載しなかった可能性もある。

9月22日、千葉地裁は、福島第一原発事故における国の責任を認めない判決を下した。3月の前橋地裁判決とは真逆だ。10月10日には、福島地裁で被害者約4千人が国や東電を訴えた裁判の判決もある。だが司法判断のもとになる、国の責任にかかわる重要な事実は、まだ、隠されている。(ジャーナリスト・添田孝史)

※AERA 2017年10月16日号より抜粋

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