“リアル後妻業”結婚相手や内縁関係にある高齢男性が相次いで死亡――青酸連続死裁判を読む

“リアル後妻業”結婚相手や内縁関係にある高齢男性が相次いで死亡――青酸連続死裁判を読む

  • 文春オンライン
  • 更新日:2017/11/13

▼〈青酸連続死裁判 筧被告、無罪主張し結審「言うことはありません」〉10月12日、朝日新聞大阪版(筆者=安倍龍太郎)

新聞、テレビ、雑誌に関わらず、ニュースが報じられる際には、その事象の重要性によって、優先順位と扱われる大きさが変わってくる。

とくに国政選挙についてのニュースは、報道各社にとって最重要項目のひとつであることは間違いない。たとえば10月10日の衆議院議員総選挙の公示なども、新聞、テレビともにトップニュースとして大きく取り上げられた。

一方で、たまたまその日と重なってしまったばかりに、本来ならばもっと大きなスペースを割くはずが、小さくしか報じられなかったニュースも生まれる。そのひとつが、今回私が取り上げた京都、大阪、兵庫で起きた青酸化合物による連続不審死事件の、京都地裁で開かれた裁判員裁判を報じた朝日新聞の記事だ。

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筧千佐子被告 ©共同通信社

2007年12月から13年12月にかけて、結婚相手や内縁関係にある高齢男性4人に対する、3件の殺人と1件の強盗殺人未遂で起訴された筧千佐子被告(70)に対して、京都地検は10月10日に死刑を求刑した。同公判は翌11日の最終弁論で結審しており、判決は本誌発売前の11月7日に下されている。くしくも10月10日は新聞休刊日。さらに翌11日は公示日の翌日ということもあり、新聞での扱いは事件の重大性に比して小さくなった。それはテレビも同様である。

この事件は13年12月に死亡した京都の筧勇夫さん(当時75)の体内から、青酸化合物が検出されたことが端緒だった。京都府警が妻の千佐子被告について捜査したところ、彼女がこれまでに年配の男性と結婚や交際を繰り返し、そのいずれもが死亡。さらに結婚相手からは遺産を、内縁関係の相手からは事前に作成した遺言公正証書により土地などの相続を行ったことに着目したことで、連続不審死事件へと広がりを見せた。とはいえ捜査過程は決して平坦なものではない。

私は千佐子被告が逮捕される14年11月の8カ月前である3月に、京都府警が内偵中であるとの情報を入手して取材を始めた。すると1994年に大阪で最初の夫を病気で亡くして以降、彼女は筧さんを含めた3人の男性と結婚。ほかに7人の男性と内縁関係にあり、いずれも短期間で死亡していることがわかった。しかし筧さん以外の男性については病死との判断で、死亡場所も大阪、兵庫、奈良だったため、筧さんの京都を合わせると4府県に跨っている。これを捜査するためには4府県警の協力が必須だった。

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小野一光氏(ノンフィクションライター)

さらに、いったんは病死と判断された死因の事件性を捜査することは困難を極める。なにしろ解剖等が行われていないため、死因をカルテや死亡時の状況などから再検討するほかないのだ。

結果として、千佐子被告が処分したプランターから青酸の付着した小袋が発見され、同種の袋が自宅で発見されたことを下敷きに、保管されていた血液から青酸化合物が検出された2件と、死亡時の状況が青酸中毒の症状と矛盾していない2件を合わせた計4件の事件について、彼女は逮捕、起訴されるに至った。

当該記事では37回の全公判を傍聴した記者が、高齢男性が彼女にひかれた理由を分析。非情な犯行と明るい性格のギャップについて、短い文章のなかで例を挙げながら解き明かそうとしている。

事件性の有無については司法の判断に委ねるほかないが、この事件の背後には孤独な高齢者の心の隙間を狙った犯行が今後も多発する可能性が見え隠れする。さらにいえば同裁判で弁護側は、千佐子被告の認知症の進行を理由に訴訟能力を争点にしている。つまり今後の日本の高齢化社会において、問題となる点に焦点が当たる裁判でもあったのだ。

(小野 一光)

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