「いきなりステーキ」快進撃の理由

「いきなりステーキ」快進撃の理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/11/22
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大人気となっている「いきなりステーキ」を展開するペッパーフードサービスの株価がすさまじい状況となっている。今年に入って同社株は急上昇を開始し、あっという間に7000円を突破した。2016年末時点と比べると、約12倍という高騰ぶりである。

株価上昇の背景となっているのは、もちろん「いきなりステーキ」事業の急拡大である。同社はさらに業容を拡大する意向を示しているが、果たしてこの株価上昇は継続するのだろうか。また、いきなりステーキ事業が快進撃できる理由はどこにあるのだろうか。

わずか3年で急成長

いきなりステーキは、立ち食い形式のステーキ専門店である。2013年12月に1号店を銀座に出店したが、破格の値段で本格的なステーキが食べられると評判になり、たちまち店舗網を拡大した。

スタートから1年後の2014年12月には30店舗に、2015年には77店舗に、2016年には115店舗まで増えた。2017年に入っても出店ペースは衰えず、9月末時点では155店舗となっている。

店舗数そのものは、他の外食産業大手と比較するとそれほど多くはないが、激安とはいえステーキは高額商品である。評判が評判を呼んだことで来客数が増加し、店舗の売上高は急拡大した。

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Photo by iStock

いきなりステーキを展開しているペッパーフードサービスは、ステーキを中心としたレストラン「ペッパーランチ」を展開してきた外食チェーンである。2016年度のいきなりステーキの部門売上高は141億円で、すでに全社的な売上高の6割を超えている。いきなりステーキは開始からわずか3年で同社の大黒柱となった。

同店は立ち食い形式ではあるが、ステーキ専門店なので品揃えはなかなか本格的だ。量り売りが原則となっており、価格はグラム単位で表示されている。

例えばリブロースの場合、グラムあたり6.9円なので300グラムをオーダーすれば2070円(税抜き)となる。店舗では店員がその場で肉を切り分けてくれるので、目で見て楽しむこともできる。

ランチメニューは100グラム単位の価格体系になっており、一部店舗ではランチメニューを夜の時間帯でも利用できる。ただし基本はグラム単位で、自分が欲しい量をオーダーするという方式なので、「肉好き」に特化した店舗といってよいだろう。

また同店では、「肉マイレージ」という食べた肉のグラム数に応じてポイントが付与される仕組みを導入しており、リピーターの囲い込みにつながっている。

本格的なステーキが低価格で味わえることから、評判が広がり、一部の店舗では行列ができるほどの人気となった。今年の10月には大手ラーメン・チェーンの幸楽苑が、いきなりステーキとフランチャイズ契約を締結するなど事業が拡大している。肉好きを対象としたニッチな店舗という領域から踏み出しつつある状況だ。

原価率が異常に高い?

それにしても同店はなぜこれほどの低価格でステーキを提供できるのだろうか。その秘密はメニューの原価率と来店者数の関係にある。

一般的な飲食店における原価は25%から30%程度といわれている。意外と安いと思うかもしれないが、このくらいのコストに抑えておかないと、人件費や店舗の減価償却費など各種経費を捻出できなくなる。だが、いきなりステーキの原価はこの水準よりはるかに高い。

原価が高いと店の儲けが少なくなってしまうが、これをカバーするのが来店者数の多さである。飲食店の業界では、店舗の顧客が何回入れ替わるのかを示す回転率という用語がよく用いられるが、回転率を高めて、大勢の顧客を呼び込めれば、1食あたりの利益は少なくても最終的な利益総額は大きくなる。

圧倒的な安さで多くの潜在顧客を確保するとともに、立ち食い形式にすることで顧客の滞留時間を短くし、より多くの顧客をさばく。これによって原価率が高くても一定以上の利益を確保することができる。

いきなりステーキの原価率は7割に達するともいわれている。筆者は以前、経営コンサルタントの仕事をしていたので、直感的に理解できるのだが、いくら人気店で回転率が高くても、原価率が7割を超えてしまうと利益を出すのは極めて難しい。

食肉の卸価格などの情報から筆者が推定した「いきなりステーキ」の原価率は約6割だと思う。この水準なら十分な来客が見込めるエリアであればそれなりの利益を出すことが可能だ。

同店の1店舗あたりの年間平均売上高は1億3000万円に達する。ステーキなので客単価が高いという特徴はあるが、店舗面積が狭いことを考えると、外食産業としては驚異的な数字といってよい。

まだまだ拡大基調

質の高い料理を低価格で、しかも立ち食いのスタイルで提供する業態というと、多くの人は「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」を思い浮かべるだろう。俺のイタリアン・俺のフレンチは、中古本販売のブックオフ創業者である坂本考氏が経営している話題のレストランチェーンである。

高級店と同レベルの素材を使い、一流シェフが手がける料理を5000円で食べられるとあって、一時は、どの店舗にも長蛇の列が出来るなど、ちょっとした社会現象を巻き起こした。両店の原価率は6割を超えているとみられるが、利益が少ない分、顧客の回転率で補うというビジネス・モデルはいきなりステーキとまったく同じである。

というよりも、いきなりステーキと俺のイタリアン・俺のフレンチは兄弟に近い存在といってよい。ペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長は、俺のイタリアンや俺のフレンチから大きな影響を受けたことや、坂本氏からも直接、ステーキの業界で同じ事をやってみてはどうかと背中を押されたことなどを経済誌「週刊ダイヤモンド」で語っている。

俺のイタリアン・俺のフレンチに続き、ステーキでも同じビジネス・モデルが成立するということは、この手法にはある程度の普遍性があるとみてよいだろう。そうなってくると、市場が飽和状態になるまで多店舗展開が可能ということになり、ペッパー社にはまだまだ拡大の余地が残っているとの解釈が成立する。

株式市場において、驚異的な水準まで株価が上昇していることには、こうした背景があると考えられる。

だが同社の快進撃に死角はないのだろうか。もしあるとするならば、この業態そのもののリスクである可能性が高い。

天井にぶつかるのはいつ…?

いきなりステーキや俺のイタリアン・俺のフレンチが大人気になっていることと、マクロ経済的な動きには、実は密接な関係がある。

経済が順調に拡大し、消費者の所得が順調に伸びている状況では、高級品を低価格で提供する業態は大きなビジネスにならない。むしろ高級品をより高く販売する企業の方が業績を拡大しやすいのだ。80年代のバブル経済はその典型的な例である。

だが、日本経済はここ20年、ほとんど成長しておらず、消費者のマインドは冷え切ったままである。今年は世界経済が上昇基調に転じており、輸出産業を中心に企業業績は上向きつつある。

ところが個人消費は現在の所得で決まるのではなく、むしろ将来の見通しに大きく左右される。社会保障など将来不安が大きい中では、多少景気が上向いたとこで、消費者はそう簡単に支出を増やさないだろう。

だが、そうした中でもちょっとだけ贅沢をしたい、好きなものをたくさん食べたいというニーズは確実に存在する。これにもっとも合致するのが、いきなりステーキや俺のイタリアン・俺のフレンチの「高級料理を手ごろな価格で提供する」といった業態ということになる。

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しかしながら、両店とも圧倒的な来客数を維持しなければ利益を確保できないビジネス・モデルであり、人気が業績のすべてを左右してしまう。質の高い料理を提供しているという点においては、すぐに飽きられる業態ではないが、市場が無限大に拡大するのかというとそうもいかない。

いきなりステーキが快進撃を続ける中、ステーキ店「KENNEDY(ケネディ)」を運営するステークスは10月に営業を停止し、東京地裁に破産を申し立てた。競争が激化し、ここ2年は大きく売上げが落ち込んでいたという。いきなりステーキの躍進だけが理由ではないだろうが、顧客の奪い合いが発生していたことは想像に難くない。

一般的に、市場の拡大ではなく、パイの奪い合いで業績を拡大するモデルはどこかのタイミングで天井にぶつかることになる。それが今のタイミングなのか、5年後なのかは何ともいえない。少なくともここまで急上昇した株価には少々警戒した方がよいだろう。

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