キリン苦戦、アサヒ躍進分けた"あの決断"

キリン苦戦、アサヒ躍進分けた"あの決断"

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2017/09/15
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国内ビール4社の業績で明暗が分かれた。米国ビーム社の買収で業界1位となったサントリーHDに対し、業界2位のキリンHDは約3000億円を投じたブラジル事業から撤退。業界3位のアサヒグループHDは欧州のビール事業が順調に推移し、売上高でキリンを逆転しそうだ。『図解! 業界地図2018年版』の著者がビール業界の「海外M&A事情」を解説する。

アサヒがキリンを売上高で追い抜く?

真夏のビールシェア争いを繰り広げるビール4社の業績に変化が出てきた。

ビールを中心とする飲料大手のサントリーホールディングス(HD)、キリンHD、アサヒグループHD、サッポロHDの年次決算の期間は、1月~12月である。その4社は16年12月期の決算発表で、17年12月期の売上高予想も開示。4社とも売上高が増えるとしていた。

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予想した増収率はサントリーHD1.4%、キリンHD1.2%、アサヒグループHD6.6%、サッポロHD4.0%だった。それが17年12月期の中間決算(17年1月~6月)では、どのような修正がなされたのか。中間決算期ともなれば、年間動向のおおよその把握は可能であり、予想もより現実の数値に近づいてくるといえるだろう。

4社の予想は「据え置き」「下方修正」「上方修正」の3つに分かれた。

17年12月期売上高予想を据え置いたのは、サントリーHDとサッポロHDだ。ちなみに、サントリーHDの上場子会社で、ノンアルコール飲料と食品を手がけるサントリー食品インターナショナルも、16年12月決算において、17年12月期の売上高は1.3%増の1兆4300億円と予想していたが、中間決算においても据え置いたままだった。

予想を下方修正したのはキリンHD。同社は16年12月期決算において、17年12月期の売上高を1.2%増の2兆1000億円と予想していたが、中間決算時には1兆9700億円の下方修正に転じた。16年12月期の実績からは5.1%減、当初の予想からは6.2%のマイナスである。

一方、予想の上方修正に動いたのはアサヒグループHDである。同社は16年12月決算時に、6.6%増の1兆8200億円を予想していたが、中間決算時には2兆300億円まで上方修正した。16年12月期実績からは18.9%、当初予想からは11.5%増である。営業利益、当期純利益などの各種利益も、当初予想を大きく上回るとしている。

海外M&Aの巧拙が業績に直結する

キリンHDの下方修正やアサヒグループHDの上方修正の主な要因は、海外M&A(買収・合併)の巧拙による。

『図解! 業界地図2018年版』では、特集で「M&Aが上手な企業、下手な企業」というテーマを組んでいるが、特にM&Aに投じるキャッシュを計上するキャッシュフロー計算書(CF計算書)のなかの「投資CF」に注目して、主要各社のM&Aの成否に言及している。

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『図解!業界地図2018年版』ビジネスリサーチ・ジャパン著 プレジデント社

例えば、サントリーHDはバーボンを手がけている米ビーム社を買収した年度に、投資CFとして1兆4737億円を出金。キリンHDもこの10年間で、海外企業の買収など投資CFの出金は1兆円を超す。

そうした多額のキャッシュを投じた海外M&Aだが、サントリーHDはまずまずの成果をあげていると判断していいだろう。実際、ビーム買収後は売上高を伸ばしている。

一方、キリンHDの海外M&A、特にブラジル案件は失敗だったことが明らかだ。約3000億円を投じてブラジルに進出したものの販売不振から経営のお荷物になり、結局は約770億円で売却した。売上高の下方修正を余儀なくされたのもそのためだ。同グループはミャンマー事業を拡大させているが、ブラジルと同様に現地企業を買収して展開している豪州でも酒類事業における販売数量が減少するなど、克服すべき課題を抱える。

アサヒグループHDは、ビール世界トップのアンハイザー・ブッシュ・インべブ(ベルギー)に吸収されたSABミラー(英)の西欧と中東欧事業を約1兆2000億円で買収しているが、投資CFでは16年12月期に2685億円、そして17年6月の中間決算では新たに9203億円、合計では1兆1888億円のキャッシュを社外に投じたと計上している。こうした西欧・中東欧事業が連結決算に新たに加わったことで、17年12月期には売上高でキリンHDを上回ると予想したわけだ。10年12月期時点では、アサヒグループHDはキリンHDに売上高で約7000億円の差をつけられていた。

アサヒグループHDのM&A戦略は、現在のところ順調に推移していると見ていいだろう。西欧・中東欧事業と入れ替えるように中国合弁企業の株式は売却している。

ちなみに、ビール世界トップのアンハイザー・ブッシュ・インベブの16年12月期における投資CFの出金額は600億ドルである。「1ドル=110円」換算で、およそ6兆6000億円だ。SABミラーの買収などに巨額のキャッシュを投じたためで、国内ビール4社とはM&Aの規模が違うといっていいだろう。そのアンハイザー・ブッシュ・インベブの17年1月~6月の売上高は271億ドル(約2兆9800億円)。前年同期の202億ドルからは34.1%増である。

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