「おちんちんの大きさとか気にしなくていいんですよ」――爪切男のタクシー×ハンター

「おちんちんの大きさとか気にしなくていいんですよ」――爪切男のタクシー×ハンター

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2016/10/19
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終電がとうにない深夜の街で、サラリーマン・爪切男は日々タクシーをハントしていた。渋谷から自宅までの乗車時間はおよそ30分――さまざまなタクシー運転手との出会いと別れを繰り返し、密室での刹那のやりとりから学んだことを綴っていきます。

【第七話】「おちんちんの大きさとか気にしなくていいんですよ」

社長のひょんな思い付きからスタートしたエロ動画紹介サイトの運営だが、その現状は過酷を極めていた。日中は我が社のメイン業務であるメルマガの編集作業、日が落ちた夜からは、セコセコとエロ動画サイトの仕事に取り掛かる。深夜三時頃に全ての仕事を終え、近所のスーパー銭湯でひとっ風呂浴びてから帰宅するというハードな毎日。エロ動画のダイジェストは時間にして三分程度で、それを一日五本程編集し、各動画の紹介文をおよそ二百文字で書く。ただそれだけの作業ではあるが、抑え過ぎず出し過ぎずという絶妙のバランスでエロ動画の見どころをまとめる作業は、繊細さと高い編集センスを要求される難しい仕事であった。おそらく、私が人生で一番真剣にエロ動画を観ていた時期ではないだろうか。

来る日も来る日もエロ動画ばかり見ていると、セックスとは何なのか? 男性器とは何なのか? 女性器とは何なのか? 男と女とは何なのか? といった少し哲学的な疑問が私の頭をもたげるようになっていた。

男なら誰もが一度は考えるであろう「もっと大きければな……」という切なる気持ち。短小仮性包茎の私も、中学生ぐらいからそのことでよく悩んでいたものだ。青春である。そんな私に転機が訪れたのは大学生の時に友達から聞いた「なぜ外国人は男性器の平均サイズが大きいのか?」という話。友達の話を簡単にまとめるとこうだ。「外人は寝る時にパンツをはかないで寝る人が多いらしい。なので寝ている間は、ずっと亀頭の先が布団に触れることで刺激される。その刺激で男性器が大きくなる」という話だ。私は思った。「この話は理に適っている」と。

早速、その日の夜から私は全裸で寝ることにした。皮被りである私は、まず亀頭が寝ている間も露わになっている状態を作らねばならない。色々と策を講じてはみたものの、最終的には原始的な方法に落ち着き、剥けた状態で皮を糸で縛ることにした。縫い糸のような鋭利な糸だと皮に食い込んで痛いので、やわらか材質の毛糸で縛った。少し茶目っ気も忘れず縛り方はちょうちょ結びにする。期待に胸膨らませながら就寝したのだが、寝ている間に毛糸がほどけてしまって失敗であった。他に何か固定できる物はないかということで、ビニールテープや輪ゴムも試してみた。皮がきっちりと留まるには留まるのだが、男性器周りの血の流れまで止めてしまい、亀頭がどどめ色に変色してしまった。それならばと、園芸用の柔らかい針金で皮を固定してみる。支柱に巻きつきながら天高く育つアサガオのように、自分の男性器にらせん状に針金を巻きつける。出来上がった姿は、大仁田厚がデスマッチプロレスで使っていた有刺鉄線バットのようであった。あれほど大仁田厚のプロレスを否定していた私の男性器が大仁田の象徴でもある有刺鉄線バットになるとは皮肉なものだ。

もう少しだけ私の話を聞いて頂きたい。

結局、針金作戦もうまくいかなかったので、発想を変えて「縛るのではなくて接着する」という考えに至ったのだが、スティックのりもボンドもある程度時間が経つと接着能力が弱まって皮が戻ってしまう。ここまで来たらもういくところまでいこうじゃないかということで、最終的に瞬間接着剤でガチガチに固めることで理想の状態を維持することができ、一週間ほどズルムケ全裸睡眠生活を送ったのだが、亀頭周りに非常に不衛生なことをしたことが良くなかったようで、原因不明のブツブツが大量に発生してしまった。これはタマらん!と病院に行ったのだが「どうしてこんなことになったんですか?」という医者の問いに対して「恥ずかしいけど、正直に答えないと適切な治療をしてもらえない」と思った私は上記の過程を包み隠さず説明した。私が話している間、医者は何回も眼鏡を外してはかけたりを繰り返していた。ただ繰り返していた。その日、家に帰って聴いた曲がドアーズの「The End」である。

某有名洋楽専門雑誌の採用試験で出された「あなたの人生において忘れられない一曲」という課題作文で、上記のような九割が男性器の話という作文を提出したが、採用の通知は来なかった。不採用の通知すら来なかった。

前置きがチンコになってしまったが、今回のタクシーの話もチンコである。

エロ動画サイト運営で気が病んだ私を乗せてしまった不運な運転手は、映画『ターミネーター2』の最強の敵であるT-1000によく似たクールなナイスミドル。オールバックの髪型が非常によく似合っていた。私は助走もせずに運転手との距離を詰めた。

「運転手さんにとってチンコとはなんですか?」
「はい? はい?」
「私、恥ずかしながら、そういうエッチな仕事で生きてまして、今、自分を見失いかけています」
「はぁ……」
「チンコってなんなんですかね。分かんないんですよ。色々な人の考えを訊いてみたいんです」
「分からないというのが答えということもありますからね……」

なんとなく名言っぽいのが出たが、どっかで聞いたことがあるので却下。

「明確な答えが欲しいんです。頭がおかしくなりそうなんです」
「分かりました。では真剣に考えてみますね」

運転手は長考の末、答えを導き出した。

「お客さん、私、おちんちんって刀だと思うんですね」
「……刀? 刀ですか?」
「男しか持っていないものだし、勃起した時って刀みたいに勃つじゃないですか?」
「人それぞれ大きさが違うので、日本刀の人もいれば、ナイフの人や彫刻刀の人もいるでしょうけどね」
「そうですね(笑)。でもこれが自分の刀なんだって思ったら面白くないですか?」
「そう思えば、オナニーの手の動きは、自分の刀を研いでいるみたいでいいですね」
「確かに(笑)」
「そうか……チンコは刀か……世界共通ですしね、外人はサーベル、中国の人は青竜刀……」

突拍子もない答えのようでしっくりくる答えをもらった私は、運転手は「チンコ」ではなく「おちんちん」と言う派なんだと思いつつも、運転手の言葉に感動していた。さらに運転手は続ける。

「でも刀って絶対に鞘に入れないと錆びちゃうじゃないですか?」
「そうですね」
「その鞘が女なんですよね。男は自分の刀をちょうどよく納められる鞘を持つ女と結婚するんです」
「……すごくロマンチックな話ですね、すごくいい!」
「だからね、おちんちんの大きさとか気にしなくていいんですよ。自分の刀にあった鞘の女がいますから」
「……はい!」

こんな下品な話なのに仕事の悩みが晴れたばかりか、これからの先の人生までが明るく思えてきた。

かのギタリスト布袋寅泰は言った。「ギターも日本刀も両手で持つのがいいよね」と。布袋さん、チンコも刀らしいです。

私は、その日の帰宅後から、自分のチンコを日本刀と見立てて、両手でのオナニーを始めた。とかく両手ではやりにくい。短小なので両手を添えるだけの長さがない。やりにくいが、武士が自分で一度決めたことを簡単に翻すわけにはいかない。武士道を構成する「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義」の精神の中の「誠」を守り、私は両手でのオナニーをやり続けるのだ。そう、私の刀を納めてくれる運命の鞘を持つ女に出会うまで、私に立ち止まる時間などないのだ。短小なので全ての鞘に余裕をもって納まるのは間違いないが。

文/爪 切男
’79年生まれ。会社員。ブログ「小野真弓と今年中にラウンドワンに行きたい」が人気。犬が好き。https://twitter.com/tsumekiriman

イラスト/ポテチ光秀
’85年生まれ。漫画家。「オモコロ」で「有刺鉄線ミカワ」など連載中。鳥が好き。https://twitter.com/pote_mitsu

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