中日松坂はナゴヤドームで限定登板? 最善の起用法は...

中日松坂はナゴヤドームで限定登板? 最善の起用法は...

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  • 更新日:2018/02/13
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松坂大輔の起用法は? (c)朝日新聞社

2月7日、中日・北谷キャンプ第2クール初日。

松坂大輔は3度目のブルペン入りを果たすと、キャッチャーを立たせたままの“立ち投げ”で12球。その後、キャッチャーを座らせ、ストレートを中心にカーブを交え、67球の本格投球を披露した。実は、ちょうどこの1年前、ソフトバンクの宮崎キャンプのブルペンで、松坂は239球の投げ込みを行っていた。当時の宮崎と比べると、その4分の1にとどめた「球数」に、今年の松坂大輔の“決意”が込められていた。

「いつもの僕なら、100球は超えています。いい時は、どんどん投げたいタイプなんです。僕の中では投げようと思ったら、いつでも投げられます。ただ無理はしないということ。投げながら、全力で腕を振るときじゃないなと、そういう感じですね」

松坂大輔というピッチャーは、基本的には“投げたがる”タイプだ。レッドソックス時代も、メジャーの常識ではあり得ない、春季キャンプで100球以上の投げ込みで肩を作りたいという希望を申し出ると、現場はおろか、フロント首脳までも巻き込み「そんなに投げさせてもいいのか」と大騒ぎになったほど。西武のルーキー時代から松坂をよく知る中日編成部・友利結国際渉外担当も、そうした松坂の“志向”は十分に把握している。それを踏まえた上で、今キャンプでの調整法を話し合い、その方針を確認し合ったという。

「自分の立てた計画通りに行こうと、あいつには言ったんです。『今日は調子がいいから、もうちょっと投げよう』というのは、絶対にやめようとね。だから抑えて、抑えて、すごく抑えていると思うよ」

右肩と右肘に手術歴がある。メジャーから帰国後の2015年に入団したソフトバンクでは、3年間で1軍登板1試合に終わり、1勝も挙げていない。もう全盛期とは違う。己の体としっかりと対話し、その調子を見極め、一つ一つ、調整の階段を、ゆっくりと上っていくことが、復活をかける37歳のベテランには必要とされているのだ。

今キャンプでは、第1クールの5日間で、ブルペンに入ったのは2度だけ。第2クールも、初日の7日に67球、8日はノースローで、9日に77球。西武での8年間で7度のゴールデングラブ賞を獲得するなど、投手としての守備にも定評はあるが、フィールディング練習でも、距離のある二塁送球は、全力にはほど遠い山なりだ。

ただ、スロー調整に徹しているのは、いつ、どのタイミングで右肩が悲鳴を上げるのか分からない、その恐怖と背中合わせの“慎重さ”ゆえでもある。この時期、戦力の見極めや今後の緊急補強に備えて他球団の余剰戦力を分析するために、各球団の編成担当者がキャンプ地を訪れる。その1人、巨人・益田明典スカウト部プロスカウトは、かつてアマ担当のスカウトとして、横浜高・松坂大輔を甲子園のネット裏で視察していた経験もある。

そのベテランスカウトの目に、今の松坂は一体、どう映るのか。

「投げるとき、体の軸がどうしてもぶれるよね。ただ、それは、しょうがないんだと思う。例えば車でも、左のタイヤがパンクしちゃうと、車全体のバランスが、ちょっとおかしくなるでしょ?」

そのたとえは、聞いている側にも、即座に納得できる明解さだった。松坂のブルペンでの投球を見ていると、時折、ストレートがとんでもなく高めに抜けることがある。自分が投げようとする球は、これくらいの腕の動きで投げていたという、これまでのイメージに、自分の体がうまく反応せず、無意識に左肩を開いて、腕がスッと振れるように“逃げ道”を作ってしまっているように見えるのだ。

ソフトバンク時代にも、佐藤義則投手コーチ(当時、現楽天)が、投球時に松坂が踏み出す左足の着地点の斜め前に立つことで、体が開かないように意識させる“矯正”に取り組んだことがあった。全盛期のイメージで、腕を振るという指令を下した脳に対し、松坂の体が、それにうまく反応しなかった。そのギャップに苦しみ続けたのが、ソフトバンクでの3年間だったのではないだろうか。

北谷へ視察に訪れたDeNA編成部・田中彰プロスカウトも、昨年、ソフトバンクのファームが本拠を置く福岡・筑後で、2軍を何度か視察したというが、松坂の練習や投球ぶりを、一度も実際に見ることができなかったという。

「松坂はどうしているのと聞いたら『室内で一人で練習しています』って。だから、西武の全盛期の頃以来に、松坂の投げるのを見たね」と前置きした上で「案外投げてる。そう思った」。試合で投げられないのなら、もっとひどい状態なのかと思っていたのだという。

「後はそれこそ、マウンドに立ったら、どうなるのか。そこでしょうね。バッターに、いざ投げるというときに、どうなるのか」と田中プロスカウト。試合となれば、いつもよりアドレナリンも出る。緊張感もある。リミッターを外し、全力で投げたとき、右肩にどんな反応があるのか。“今後の松坂”は、プロの目をもってしても、現時点で読み切れない部分が多々あるようだ。

それでも、巨人・益田プロスカウトは、こんな“計算”もしている。右肘の手術経験がある33歳のベテラン右腕・吉見一起と松坂を“セット”にする形で中10日、月2回程度、それぞれが先発するようなパターンを組む。2人で月に2勝、シーズンで10勝程度を挙げるようなことがあれば、「中日の星勘定は、だいぶ楽になるでしょうね」。

球団関係者の話を総合してみても、森監督にも、その“皮算用”があるようだという。ナゴヤドームなら、天候で登板スケジュールも狂わない。投手有利といわれる広い球場でもある上に、話題性や観客動員にも役立つことを踏まえれば、このまま調整がうまくいけばという条件つきとはいえ、開幕直後は、松坂を「ナゴヤドーム限定」で先発させることを、一つの選択肢に入れているというのだ。

現場にも、球団にも、松坂にも、悪いプランではない。むしろ、中日にとっては、ベストのシナリオだろう。

その“希望的観測”が果たして、本当のものになるのか。名古屋という土地柄は、よそ者に対して厳しい一面がある。松坂獲得に主導的な役割を果たした森監督、友利国際渉外担当、さらに松坂本人も、名古屋出身ではない。“外様組”が、幅をきかせているともいえる現状に、決して快く思っていない、中日生え抜きのOBたちも多いと聞く。ただそれは、裏を返せば、松坂の復活劇に対して、高い注目度が集まっている証拠でもある。

「怪我をして、投げられない。だから辞める、諦めるということはしたくなかった。場所が変わっても、投げ切って終わりたい気持ちでした。ホークスで、リハビリをしていたとき、球場で待っている人たちが、僕に声を掛けてくれた。その声に応えたい。ホークスでは叶わなかったけど、場所は変わったけど、ファンの人に恩返しをしたい。その人たちのためにも、1軍のマウンドで、しっかり投げたい」

「平成の怪物」と呼ばれた男が、平成という時代が終わろうとしているその時に、野球人生をかけて挑む、まさに最後の大勝負。本当に、マウンドで投げられるのか。その先のシナリオは、誰にもまだ読み切れない。だからこそ、その今後が、気になるのだ。

松坂大輔の復活劇は、まだ序章に過ぎない。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール

喜瀬雅則

1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。

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