日本人、それってオカシイよ 「過労死」を生む日本企業の“常識”

日本人、それってオカシイよ 「過労死」を生む日本企業の“常識”

  • ITmedia ビジネスオンライン
  • 更新日:2016/10/18

世界を読み解くニュース・サロン:

今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。

欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。

最近、日本では過労死の問題が大きな話題になっている。

電通に勤めていた女性社員が過労死で自殺したニュースや、長時間勤務で死亡したフィリピン人男性のケースが過労死と認定された話などが大きく報じられてさまざまな議論を生んでいる。ちなみに2015年、過労死で労災認定されたのは96人にもなり、未遂も含む過労自殺は93人が労災認定されている。

10月7日、日本政府は「過労死等防止対策白書」を閣議決定した。2014年に施行された過労死等防止対策推進法を受けて、厚生労働省は日本の企業や労働者に対する大規模な調査を行なって白書にまとめている。「過労死」の労災認定の目安となる月80時間を超えた残業をする正社員がいる企業は22.7%に達していることや、正社員の36.9%が高いストレスを抱えていることが判明した。

今さらだが、この状況は世界的に見ると普通ではない。

過労死などが声高に叫ばれるようになった80年代から、日本の過酷な労働状況は世界でたびたび報じられ、外国人の目に奇妙に映っている。また経済大国である日本は実のところ「生産性が悪いのではないか」との指摘まで出ている。外国のメディアで報じられている報道から、日本の労働環境について見てみたい。

日本人が過労死してしまう理由

10月16日付のニュージーランド・ヘラルド紙は、日本人が過労死してしまう理由のひとつには、日本では転職が世界と比べてあまり行われないことが挙げられると指摘する。「労働者の大半が一度企業に入社を果たせば、会社やキャリアそのものをめったに変えることがない」日本のような国は、「従業員たちの労働時間が不健康であるとして悪名高い」と。

確かに、転職をすることでベターな労働環境を求めることはできる。追い詰められて過労死した人に「会社を辞めるべきだった」「転職するべきだった」などと言いたのではないが、確かに日本が転職に対してもっと柔軟な認識をもつ社会であれば、もしかしたら過労死した人たちのストレスは多少でも軽減された可能性はある。もう少し労働環境のいい職場に移るという選択肢にすっと頭がいくかもしれない。

米国などではさらによい労働条件を求めて転職するのは当たり前であり、給料アップや昇進のために転職をしていくことは普通である。海外のように転職によるキャリア構築は、日本では広がっていない。

ニュージーランド・ヘラルド紙はこんな問題も指摘している。日本は、「世界で見ても与えられる年間の有給休暇がかなり低い」。確かに、米経済政策研究センターのデータによれば、日本は世界と比べて有給休暇が少ない国である。同紙によれば、日本では平均10日間の有給休暇が得られる(その後、勤務年数が増えるごとに1日ずつ増え、最大で20日)のだが、他の国と比べて少ない。世界的に見て有給休暇が多いオーストリアやポルトガルは35日、スペインは34日、フランスは31日、英国では28日などと続く。

さらに問題なのは、日本人は与えられた有給休暇を消化していないことだ。旅行サイト・エクスペディアの調査によると、日本の有給消化率は60%である。ちなみに有給の多いフランス、スペイン、オーストリアなどでは消化率は100%である。この「有給休暇を使わない」感覚も、過労死の根底にはあるかもしれない。

日本人の仕事に対する意識

日本人の仕事に対する意識も、少し心配になるような調査結果が出ている。2016年5月、世界15カ国で行われた「仕事」に対する意識調査の結果が報じられ、当時、広く世界で報じられていた。この調査からは日本人が仕事をどう見ているのが明らかになっている。

仏企業「Edenred」と調査会社「IPSOS」が世界15カ国で行なったこの調査によると、日本人は世界と比べて、ダントツで仕事にいい印象をもっていないことが分かった。日本人は仕事に対する意識が異様に低い。ちなみにこの調査によると、世界で最も仕事に前向きなイメージを持っているのはインド人だった。

この調査結果のリポートをもう少し詳しく見ると、日本人は仕事に次のようなイメージをもっていることが指摘されている。「朝、出社するのが苦痛」で、「職場環境は刺激的ではなく」、多くの社員が「上司から尊重されていない」と感じているが、「会社から何を求められているのかは明確に分かっている」。つまり、日本人は会社が自分に求めることははっきりと認識しているが、会社が嫌いなのである。この結果を見ると、日本人は会社から仕事を押し付けられて、いやいや働いている人が多いという印象を受ける。

そんな意識が原因となっているのかどうかは分からないが、海外メディアから「日本の会社は労働生産性が悪い」といった指摘も出ている。例えば、英エコノミスト紙(10月15日付)は、一連の過労死問題についてこのように書いている。「仕事の成果よりも会社で過ごす時間や仕事への献身さに価値を見出している(日本のような)文化では、仕事のビジネス慣行を根本的に変えるのは容易ではない。あるIT企業の会社員(42、匿名を条件に取材に応じた)は、『会社は大きなチームのようなもの。私が早く帰ったら私の仕事を誰かが引き継いでやる必要が出てきて、かなり罪悪感を感じる』と話す」

外国や外資系企業で働いたことがある人なら分かるはずだが、多くの外国人にはこういう「責任感」はないと言っていい。筆者は英企業に勤めた経験があるし、米国でもいくつもの企業や大学、研究所を訪問したり、友人などから話を聞いたりするが、勤務終了時間になれば、見事なまでにオフィスから皆いなくなるし、他人の仕事を気遣って残業するなんてことはまずない。特に米国では、上司が帰るのを待ってから、とか、ダラダラとオフィスに残って仕事をするなんてことがない。

ただそんな米国は、今も世界最大の経済大国である。これについては、なぜなのかと疑問に感じていたが、英エコノミスト紙はその理由を皮肉たっぷりに書いている。「(日本の)超過労働は経済にあまり恩恵をもたらしていない。なぜなら、要領の悪い労働文化と、進まないテクノロジー利用のおかげもあって、日本は富裕国からなるOECD(経済協力開発機構)諸国の中でも、最も生産性の悪い経済のひとつであり、日本が1時間で生み出すGDPはたったの39ドルで、米国は62ドルである。つまり、労働者が燃え尽きたり、時に過労死するのは、悲劇であるのと同時に無意味なのだ」

日本人の労働生産性

日本人の労働生産性は世界的に見て、非常に低く、ほかのOECD諸国より劣る。ちなみに、世界各国は1時間でどれほどのGDPを生み出しているのか。ランキングにするとこうなる(2014年)。

1. ルクセンブルグ 79.3ドル

2. ノルウェー 79ドル

3. アイルランド 64ドル

4. 米国 62.5ドル

5. ベルギー 62.2ドル

6. オランダ 60.9ドル

7. フランス 60.3ドル

8. ドイツ 59.1ドル

(G7の平均は54.5ドル)

いかに日本の生産性が悪いかが分かるだろう。エコノミストの指摘を見れば、過労死をなくすには、日本の非効率な労働を見直す必要があるということなのだ。どうすれば米国などのように、時間内に帰れるのかを真剣に議論しなければならないのである。

最近、国際的に活躍する日本人と、外国の企業などで世界中の人たちと働く際の苦労について話をした。筆者も米国やシンガポールで働いた経験がある。日本人は、仕事が細かく丁寧で、まじめで時間に厳しく、人の良さから同僚などの仕事も助けてしまう。

一方の外国人はどうか。誤解を恐れずに言うと、日本人以外は基本的に「いい加減」である。自分の仕事しかしないし、気が利かない。そして日本人が集まると、外国人は「使えない」「ダメダメだ」などと愚痴るのだが、実はそれが普通なのかもしれない。事実、労働生産性のランキングを見ると大きな差はないどころか、日本人は劣っているのである。

これから分かることは、過労死対策として日本は強制的に労働時間を減らすしかないのではないか。そして生産性を上げるようにする。東京都の小池百合子知事は9月14日に都庁での「20時以降の残業禁止」を発表したが、これは素晴らしい提案である。例えばドイツ労働省は2013年から勤務時間後に上司が職員に連絡するのを禁止しており、同様の対策はすでに世界では始まっている。

過労死という悲劇を繰り返さないために

ドイツではこんな企業も出始めている。フォルクスワーゲン社は勤務時間終了から30分後に、電子メールの転送を禁止にしている。ダイムラー社は休暇の際に受け取った電子メールは削除してもよいとしている(ただ自動返信にして勤務時間に折り返すことが推奨されている)。こうした例は日本企業ではあり得ないだろう。それでもドイツの生産性は日本よりもずっと高いのである。

今後、過労死という悲劇を繰り返さないためにも、日本は本気で企業の生産性をいかに向上させるのかについて議論を行う必要がありそうだ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。

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