プーチンは我慢できるか、怖い2018年のロシア

プーチンは我慢できるか、怖い2018年のロシア

  • JBpress
  • 更新日:2017/12/07

文中敬称略

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ロシア南部ソチで、シリア内戦をめぐる3者会談の後、記者会見する(左から)イランのハッサン・ロウハニ、ロシアのウラジーミル・プーチン、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン各大統領(2017年11月22日撮影)。(c)AFP/SPUTNIK/Mikhail KLIMENTYEV〔AFPBB News

今年も余すところ20日余になった。この1年のロシアの動きを振り返えってみる時期ではある。だが、外交・内政ともに年初からの記憶に残りそうな変化は、少なくとも表面的には、なかったようだ。

やや気抜けしてしまう感なきにしもあらずで、それというのも、今年の世界の主役が、やはり何と言っても米国の大統領、ドナルド・トランプだからなのだろう。

良くも悪くも皆が彼に注目し、そして振り回された。その対外関係のみならず、彼の大統領就任に象徴される米国社会の変容が先進国共通の問題として受け止められ、ポピュリズムとナショナリズムという民主主義政治の宿啊にまで議論は果てしなく、である。

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米ロの改善関係が進まない理由

その中で、ロシアも対米関係改善への期待を裏切られた、との見方が多い。

だが、庶民はともかく、ロシアの為政者レベルまでが未知数のトランプに淡い期待を初めから抱いていたとは思えない。そして、米国内の今のゴタゴタの方が、より中長期的な対米関係での不安要因だと彼らには映っている。

ベトナム戦争時にも似た国内の「分断」現象や、混迷を深める米議会の動きは、総じて南北戦争この方最大の社会変動であり、少なくとも全治10年の病だ、とロシアの識者たちは見ている

トランプにせよ、国務長官となったレックス・ティラーソンにせよ、対ロ関係改善の気持ちがあっても、仮想敵を求めるのが性(さが)の軍人が管理する政府の下ではそれもままならない。

その政府に民主党政権時代の政策を踏襲しようとする国務省スタッフや、外野席からは反ロ一色に染まった主要メディアや議会が関わるのだから、関係改善は当分あり得まい。

一方でロシアを小馬鹿にしながら、他方ではその脅威を本気で喧伝しまくる米国の姿勢には、余裕を失った超大国の像を見せつけられる。

それは「敵を知る」を怠ってきたツケでもあるし、世界的に広まる「異論には耳を傾けず、事実でないことを事実であると強弁、自分と同じ考えの人間とだけつながって安心感を得る」(参考=http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/283738/101900045/?ST=editor)という傾向そのものでもある。

一方、大西洋を隔てた欧州では、仏大統領選でエマニュエル・マクロンが当選したことから、いったんは右派躍進に歯止めがかかったと安堵。

しかし、続くドイツの総選挙では、AfD(「ドイツの選択」)がゼロから一挙に94議席を獲得。ナチスが国政に進出してから第1党になるまでわずかか4年だったことまで想起させる。

しかも、そのナチスと違ってAfDはロシアに親近感を持っているというのだから、話は余計ややこしくなる。

英国の対EU離婚手続きにも手こずり、あれやこれやで主要国は対ロの取り組みに腰を据える状況にはない。

持久戦に持ち込んだウクライナ問題

他方で右傾化進行の旧東欧諸国の中でも取り分けポーランドが反ロ姿勢を先鋭化させ、ペンタゴンがそれに乗ずる。どうにも対ロ関係改善の兆しが見えてこないのは米国と変わりないようだ。

こうした対欧米関係悪化の直接の原因となったウクライナは、今や中東や北朝鮮の問題の陰に全く隠れてしまっている。反ロ政権が続く限り問題解決の糸口は見えないし、その政権も安定しているとは言い難い。

底を打ったとはいえ過去30年弱で40%も減少したGDP(国内総生産)や、5200万人から3000万人へ減少したとされる(領内に恒常的に住む)国民の数を考えると、いつまで国の体裁が保てるのかの懸念は拭えぬままだ。

それを分かっているからロシアは持久戦に出ている。ロシアが現状維持策から方針転換を行うとすれば、それは米国がウクライナへの本格的な武器供与を決定した時だろう。

西がだめなら東に、での対中関係強化では、米国への対抗という共通の基盤が揺るがぬことで、その歩が早まりつつあるようだ。

一時はロ側の不興を買った、緩慢に過ぎる中国の対ロ投資での動きも、総額1兆円以上にもなるヤマールLNGへの投融資がその突破口になっているかもしれない。

だが、中ロ接近とは言うものの、中国にとっては米国の方がはるかに大きな吸引力を持っている。ロシアにとって米国は眼下の敵だろうが、中国にはかなり先の話である。そのギャップはなかなか埋まらないから、疑心暗鬼のタネは尽きない。

だから、と言うわけでもないが、ロシアはいくらカネを積まれても中国にとって目障りなインドやベトナムとの友好関係を清算はしないだろうし、できもしまい。

こうしたロ外交の基軸となる米欧中との関係の中で、ロシアはシリアと北朝鮮の問題に今後も関わっていく。

中東問題も改善どころか波乱含み

シリアでは、IS(イスラム国)を掃討してバッシャール・ハーフィズ・アル=アサド政権を存続させたことで、ロシアの当面の目的は達せられたと言える。だが、これからどうするのかとなると、米国同様にロシアにも知恵があるわけではない。

戦闘の鎮静化がせいぜいで、根源的な問題であるアラブの社会・経済諸矛盾の解消などは気が遠くなる話だ。

差し当たっては、体裁を整えたうえで腕力にものを言わせてその暴発を抑え込むしか手がない。そのためには米国との共闘が必要なのだが、米国はそれに乗ってくる気配を見せない(参考=http://jp.wsj.com/articles/SB12361493489752093919504583528370675935976)。

シリア問題でますます先鋭化した、イランとサウジ、米国、イスラエルとの対立、トルコとクルドの問題など、話はシリア1国の枠を大きくはみ出してしまい、およそロシアだけの手に負えるものではない。

その点で、ロシアのシリア介入は既に成功とは言えなくなりつつある。

米ロの「共同統治」が成り立たないなら、挽回策として中東に冷戦の勢力均衡状態を作るしかなかろう。そこでロシアの安全保障と経済での国益をどう最大化するかが、次の課題になるのではないか。

シリア問題に比べれば、北朝鮮の問題は直接的には米中朝間のそれであり、ロシアに「公正な仲買人」を買って出るだけの影響力もない。

それでも、米国の極東での軍事力拡大を押し止めることが最重要課題となれば、そうさせてしまいかねないドンパチはともかく止めろ、と声を張り上げるしかなくなる。

張り上げても、その意図が反米にあることを米国は百も承知だから、その声に従うはずもない。そして、ある日気がついたら半島分割での米中密約が成り立っていた、などといったとんでもない状況を作らせないための策も講じねばならなくなる。

シリアと北朝鮮のいずれの問題もこれまでのところでは、最終勝利をロシアがものにしたという画にはなっていないようだ。大統領のヴラジーミル・プーチンが西側の有力誌で「Man of the Year」に選ばれるための材料にはどうもなりそうにない。

4期目の大統領選立候補、いまだ表明せず

そのプーチンは、まだ来年3月の大統領選への立候補を表明していない(注:12月6日に出馬表明)。投票率70%で集票率70%なら、全有権者の支持の49%となり、これを何としても50%超とすることが立候補での大前提となっているとか言われる。

その見込みが立たないなら、立候補を取り止めることもあるのか?

さすがにそのサプライズはないだろう。だが、「次の6年も俺がロシアを引っ張る」とまだ言い出さないとは、4期目を務めるにしても、どのような政府と政策を形成するのかの判断を妨げるような何らかの要素があるのかもしれない。

欧米との関係が冷めたものになった直接の原因はウクライナ問題でも、その遠因はプーチンがいったん退いた大統領の職に2012年に戻ったことにある。

プーチンの存在そのものが対立の原因でもあり、そうなると彼が4期目の政府の陣容を選んでも、その治世の間に欧米の側からロシアに歩み寄る、といった形はいささか想像しにくいものになる。

さらに大きな4期目の懸念材料は、プーチンの健康と、彼の西側への忍耐力が切れる可能性だろう。

ロシア人が理解されずにいたぶりの対象になれば、どこかで激しく爆発する。そのことを知っているから、プーチンは並のロシア人以上の忍耐力で自重―― 少なくとも主観的には――している。

しかし、それとて限度はどこかにある。その箍が外れたら、ロシアは手がつけられなくなるものと他国は覚悟しておかねばならないだろう。

それでも、誰がその政府を構成していくのか、どれだけ若返りが図られ、その中から誰がポスト・プーチンの担い手になっていくのかが、2018年の最大の注目点であることには違いない。

国内経済はどうか。2017年は久々のプラス成長を達成する見込みのようだ。最悪期は脱したという安堵感がプーチンにも経済閣僚にも見て取れる。

ロシア経済といえば、落第一歩手前の綱渡りの連続というイメージが先行しがちだが、2000年代に入ってから急速に近代化された鉄鋼や化学、いつの間にか世界最大の穀物輸出国にロシアを押し上げた農業、といった具合に、目立たないところで改善と発展を実現しつつある。

矛盾に満ちた問題を解決できるリーダーシップ

これまで遅れていた分を取り戻すという面で、成長の余力はまだある。批判する材料には事欠かない統計数値だけがロシア経済の姿ではない。

だが、仮に並の成長は達成できてもそこまでで、これまでの中国のような爆発的な成長を伴うことはないだろう。競争が欠如する社会と経済にはそれがあり得ないからだ。

それを成し遂げる唯一の方法は、国内市場の思い切った開放による外資・内資混戦の競争状態生成であろうが、他国でもグローバリゼーションへの警戒や反省が高まっている今の状況では、ポスト・プーチンの時代でもロシアがそれに向かう可能性はかなり低いと見ざるを得なくなる。

日本が来年以降も向き合わねばならないロシアは、こうした状況に置かれている。

領土問題が米ロ問題と同義になりつつあるなら、その解決は残念ながら容易ではないと言わざるを得ない。

4島には米軍を立ち入らせない、しかし尖閣諸島は確実に守ってもらう、という矛盾を米国にのませるだけのスーパーマン出現を日本外交に期待できないものなのだろうか。

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