中国が頭を痛める、日本の10倍スゴイ「モンスターペアレント問題」

中国が頭を痛める、日本の10倍スゴイ「モンスターペアレント問題」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/06/23
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チャット大国・中国

近年、スマホの普及やチャットソフトの発達によって、複数の人たちの間での情報共有が飛躍的にラクになった。これは仕事のチームや趣味のサークルなどに限らず、例えば保育園のママ友グループや小学校のPTAメンバーのグループなども同様だろう。

学校の宿題や配布物についての保護者同士での確認や、イベントごとの役割分担などは、LINEのグループを作ってその内部でやってしまうほうが手っ取り早い。

これは中国でも同様だ……というより、中国のほうがこの文化は盛んである。

中国の都市部のスマホ普及率は9割以上に達し、テンセント社が提供するユーザー数9億人のチャットアプリ『微信(ウィーチャット)』や、同じく『QQ』などは、生活上で欠かせないインフラと化している。日本では20〜40代でも、LINEを使っていない人が結構いるが、中国の就労年齢層の大人でこれらを使わない人はほぼいない。

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Photo by Gettyimages

ゆえに、例えば子どもが小学校に通っている場合、「家長群」(保護者グループ)への参加はほぼ義務だ。両親のいずれかもしくは両方、さらに祖父母が加入しているケースもある。

しかも中国だと、教師もこのグループに入っている。中国では小学校から科目別に先生が違うケースもあるのだが、いずれの先生もこれに加入しているのが一般的だ。ゆえに、関係者が多いせいで1クラスあたりの「家長群」のメンバーが100人近くに及んでいるケースも決して珍しくない。

だが、保護者同士、もしくは保護者と教師という、ただでさえもお互いの人間関係が難しい人たちが、100人近くもスマホで24時間お互いに接触し合って大丈夫なのか――?当然ながら、いろんなトラブルが起きるわけである。

今回の記事では、そんな中国の「家長群」にまつわる騒動記の数々をご紹介しよう。

モンスターママ、返信が遅い女教師をシメる

今年6月11日午後のことである。安徽省五河県のある小学校に女が侵入し、国語担当の女性教師・張先生を罵倒したうえ、服を引っ張ってぶん殴る事件が起きた。女はこの学校に通う児童・王くんの母親(以下「王ママ」)であった。

事件の発端は同日午前11時前、張先生がグループ内にテスト用紙の返却についての情報を投稿したことである。これに王ママが質問を書き込んだのだが、張先生からはその後2時間半にわたって返事がなかった。すると王ママは瞬間湯沸器的にマジギレ。以下のような罵倒を投稿しはじめた。

「こんちくしょう、やってられないわ!」

「近いうちに目にもの見せてやる。ばかやろう!」

これに対して、グループに入っていた別の先生が「昼食時ですから」「教師も人間なので、いつも携帯を見ているわけではないんです」とフォローしたものの、王ママの怒りはおさまらない。彼女は午後2時頃に「いまから学校に行って問い詰めてやるんだから」と投稿。そのまま冒頭の暴力劇に至ったのであった。

現場での目撃者によると、王ママは「私は先生を殴る資格があるけど、先生が私を殴る資格はない」「私の人生は怖いものなしよ。殴りたいと思ったら誰でも殴るわ!」とジャイアンみたいなことを言いながら、勤務2年目のうら若き女性教師をしばき倒したという。

従来、張先生と王ママの間に何らかのいさかいがあった末での出来事なのかもしれないが、王ママがヤバいモンスターペアレントであるのは間違いなさそうだ。事件発生後、グループ内では張先生をフォローする他の保護者の投稿があふれ、不条理な暴力への非難が集中。ある保護者が王ママの動画をグループ内に登校したところ、これまで沈黙していた王ママが以下のような投稿をはじめたのである。

「あんたたち全員、今日やったこと(=王ママの動画投稿)をどれだけ後悔しても間に合わないようにしてやるからね」

「待ってなさいよ!訴えてやるんだから!!」

対して他の保護者たちは相手にせず「どうもどうも」「楽しみにしてますねー」などと完全に彼女をヤバい人扱い。やがて翌日になり、被害者の張先生が「ショックです。親にも殴られたことがないのに!」と投稿して、なおさら同情が集まった。

張先生は警察に通報し、騒ぎには公安局が介入。最終的に、暴力を振るった王ママには行政拘留10日の処分が下されたという。

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Photo by iStock

保護者グループでクビを要求される先生たち

「私はみずからの仕事を深く愛しておりますが、自身の専門的な能力の不足によって、まことに申し訳なくももはやこの学校にはおれません。同僚のみなさん、さようなら」

こちらは今年5月28日、河南省駐馬店市で小学4年生の担任を務める勤続15年目のベテラン先生が、学校側に提出した退職届の一節である。

伝わるところによると、先生はある日、よかれと考えて微信の保護者グループに漢詩の暗唱の成績と子どもたちの写真をアップロードした。すると(おそらく成績が悪かった子の)一部の保護者から「保護者と子どもが心の傷を負った」と主張されてしまう。この保護者たちは先生の謝罪を要求し、それがなされない場合は市の教育体育局に告発すると脅した。

先生はこれに震え上がり、責任を取ってクラスの担任を辞めると言い出したが、保護者たちはなおも許さない。やがてある保護者が、「子どもが傷ついて自殺するかもしれない」と投稿すると、先生は精神的に追い詰められていたのか「人の生命には替えられません」と言って、学校に辞表を出してしまったのだった(後に撤回)。

上記の他にもトラブルや事件は多い。今年5月には四川省広元市の幼稚園で、ある教諭が子ども1人に罰を与えて座らせた行為に母親が激怒。保護者グループに「この子が誰かわかっているの!?」と子どもの父親が市の高級幹部であることをちらつかせて恫喝する投稿をおこない、当該教諭をクビにせよと凄んでみせた。

だが、傍若無人さに腹を立てた他の保護者が、それをスクリーンショットで撮影してネットにアップ。逆にこの親が社会的批判にさらされ、名前を出された高級幹部までとばっちりを受けて失脚するという事件が起きている。

ほかにも保護者グループについては、グループ内に「成績表」などと書かれた謎のファイルが投稿され、それをクリックするとユーザー情報を抜き取られる事態や、詐欺師が保護者のアカウントを買い取ってグループ内に潜入し、集金を装ってお金を奪うなど、各種のカオスな事件もしばしば報じられている。

今年5月、湖南省長沙市では高考(統一大学入試)を控えた子どもに効く「頭がよくなる薬」の情報が、さまざまな保護者グループで出回った。だが、その薬の正体はリタリンなどの精神刺激薬であることが判明。健康な子どもがこれを飲むと、頭が良くなるどころか各種の副作用に苦しむ恐れがあるとして、地元の病院が注意喚起を出すことになった。

保護者グループの参加者はさまざまな人がおり、いわゆる「情弱」な人も少なくないため、詐欺や怪しい健康法や勉強法、ニセ科学などが広がりやすいのである。

保護者グループの痛い人たち

モンスターペアレント問題は、日本にも中国にも存在している。ただ、日本のモンスターペアレントは基本的に、他者の目が届かない場所で、教師やPTAの役職者などを相手に一対一で理不尽な要求を突きつけるようなケースが多い。

対して中国の場合、各人が他者の勝手な行動をそれほど制約しないカルチャーの社会であるため、保護者グループのような半公開の場所で公然と痛々しい振る舞いをする人が出てくる。

中国のネット記事では、「学校の保護者グループの痛い人あるある」みたいな記事を目にすることも少なくない。以下に複数の記事を総合して、中国のダメ親のパターンをまとめてみることにしよう(なお「○○系」の分類は私の造語である)。

中国で子どもの親となり保護者グループに入っていると、以下のような人たちに出会うというわけだ。

【1.意識高い系】
保護者グループは保護者と先生が両方加入している大規模グループだ。

そこで先生がなにか通知事項を伝えた場合に「さすがは先生!今回の決定はまことにご英断、素晴らしいと思います!いつも息子が先生を大変尊敬しており、息子はこの度のご連絡のもと決意を新たに、学習を貫徹したいと志を持っており……」などと、やたらに長い返信文を投稿して先生を賛美したり、意識高いことを書きまくる親が結構いるらしい。こういう「ええ格好しい」な行動のことを、中国語では「戯精」という。

【2.商売をはじめる系】
保護者グループのメンバーは100人近くになることもある。そこで、一気に情報をインフルエンスさせられる場を得たとばかりに、自分がやっている商売の広告をばかばかと投稿する、商魂がたくましすぎる親が結構いるらしい。グループ内での発言が広告だけという人すらいるようだ。

【3.ルイーダの酒場系】
複数人で共同購入すると特典クーポンが着いてお得になる商品などをめぐって、グループ内で共同購入する仲間を募集し続ける人もいる。幼稚園や学校の保護者グループであれば、生活水準や消費傾向が似た人が大勢いるため、グループ購入の仲間探しには便利なのは確かである……。とはいえ、いつもこんな投稿ばかりだと相当うっとうしそうだ。

【4.ドヤ顔金持ちアピール系】
うまいもの食べました、いい家に住んでます、クルマを買いました、海外旅行に行きました……と、常に自分たちの家の豊かさを保護者グループ上に投稿してドヤ顔をする人も多い。

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もともと、中国人はウィーチャットのモーメンツなどでこうした行動をしばしば取る(日本人がフェイスブックやインスタでおこなうリア充アピールをはるかに凌駕する)のだが、保護者グループでマウンティングをやるのは、傍目には相当にイラッときそうだ。

【5.バカ系】
保護者グループの会話の流れをまったく読んでおらず、とっくに出ている情報について「ところで○○はどうなっていたんですか」といつも蒸し返す人もいる。基本的に日本よりも中国のほうが、わからないことを他人に尋ねるハードルが低い社会であるうえ、他人にそこまで配慮せず自分のやりたいことをやる人が多いがゆえに生まれる現象だが、これも目の当たりにすると相当ウザそうである。

どっちがいいんだか…

チャットソフトのグループ機能を使って、子どもの保護者が情報を共有する文化は、せいぜいここ10数年(スマホ利用ならばここ5年くらい)で新しく生まれたものだ。中国の場合、グループの設置は保護者による自発的な行為であることが多いが、これに教師も積極的に加入しているため、グループの存在自体が公的な性質を持つのか持たないのかの線引きがアヤフヤとなっている。

それゆえにまだルールが定まっておらず、中国の学校の保護者コミュニティは数々の事件を引き起こしたり、痛い人を輩出するストレス源になりがちだ。

ネット上には保護者グループを作るのをやめようという声も出ているらしいが、かといってひとたび、学校からの連絡事項がスマホのチャットアプリに集約される便利さを味わってしまうと、なかなかやめようがないのも確かであろう。

ちなみに日本の場合、小学校などでは(保護者有志だけのLINEグループはあるものの)学校側から保護者への連絡方法がプリントと連絡帳頼りだったりするケースもあるため、いまの時代にはアナログ過ぎて不便だという不満の声も出ているらしい。学校と保護者の間の適切で効率的な情報共有とはどういうものなのか、考えさせられる話だとも言えそうだ。

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