中国の新5カ年計画、主役は再び「国家」へ

中国の新5カ年計画、主役は再び「国家」へ

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/10/12
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中国は民間企業の力を活用して経済の奇跡を成し遂げた。18日から始まる5年に1度の共産党党大会では習近平国家主席が権力を強化するとみられ、この先5年の方向性も見えてくるだろう。今度は国家が主役になる番だ。

そのロジックは至って単純だ。中国は活気ある民間部門に経済成長を依存している一方、政治的アジェンダを推し進め、社会を統制し、経済政策を実現させるのためには国有企業は欠かせないツールだ。国有企業の財務状況が悪化すれば国の経済に重くのしかかるだけでなく、共産党の支配が弱まることにもつながる。

民間部門がすでに同国経済の70%を占めるなか、習氏や側近らは鍵となる国有企業の市場支配力を高め、債務負担を軽減させるなど、彼らを再び強化する方針を決めている。

投資家にとって、これが持つ意味は大きい。国有企業はよく知られるように非効率であるため、世界の物価は上昇するだろう。一方で、長らく懸念されていた中国の債務危機が起きる可能性は低下することになる。中国の企業債務はその大半が国有企業のものだが、JPモルガンによれば、第2四半期には対国内総生産(GDP)比で減少を見せた。これは2011年以降で初めてだ。その代償として、中国経済の成長スピードは鈍化した。足下で株価が堅調な中国の各銀行は、肥大化した国有企業を今後も支え続けなければいけないだろう。また、これら国有企業は国内に巨大資本を必要としているため、人民元の変動相場制移行は遠い夢であり続ける。

大きな負担

中国の国有企業は、その独特な役割ゆえに苦戦している。一部国有企業が病院や学校を経営するなど、低利融資という恩恵の代償は大きい。ほぼすべての国有企業は必要以上の従業員を雇っている。中国石油天然ガス集団(CNPC)傘下の中国石油天然気(ペトロチャイナ) は昨年、米エクソンモービルの7倍の従業員を雇用していたが、石油生産量はわずかに上回った程度で、天然ガスに関してはエクソンモービルより少なかった。今年6月までの1年間の株主資本利益率(ROE)で見ると、エクソンが7%だったのに対し、ペトロチャイナが1.7%にとどまったのも不思議ではない。

ただ、CNPCは切り札がある。石油産業の上流にある主要3社の一角であり、これら3社はいずれも国有企業であることだ。

多くの国有企業は影響力が弱まる中、ここ数年は身動きが速い民間企業を相手に、成長スピードの落ちた経済のパイを奪い合ってきた。鉄鋼など主要部門には民間資本が流れ込み、国有企業の利益は打撃を受けた。国有工業部門の累計総資産利益率は2007年には6%程度だったが、今は3%に何とか乗せている程度だ。これは工業部門全体の平均である7%を大きく下回っているだけでなく、銀行の平均貸出金利5%よりも低い。国有企業の債務は金融システム全体にとって脅威となるほど膨らんだ。2016年4月に中国の債券市場が混乱したのも、国有の石炭および鉄鋼企業が債務不履行に陥ったことが発端だった。

再び国家の番に

債務には2つの対処方法がある。政府が清算するか、当該企業が民間に資産を売ったりするなどして清算するかだ。

民間企業の影響力がすでに大きすぎると考えているからか、習氏は国有企業の市場支配力をさらに強化する道を選んだ。宝山鋼鉄と武漢鋼鉄の合併や、最近では神華集団と中国国電集団が合併したことも、その明確な例だろう。過剰生産の改善も鳴り物入りで実施したが、製鉄所の強制閉鎖で最大の影響を受けたのは民間経営の製鉄所だ。

生き残った国有企業は利益拡大の恩恵を受けるだろう。しかし、民間が強い裾野産業にとってはコストの増大につながる。国有工業部門の利益率は2016年初めは3.8%だったが、今年8月には6.3%になった。民間部門の利益率は5.7%のままで、これは1年前から変わっていない。

中国の民間企業は依然動きが活発で、テクノロジー関連など一部分野では利益が急速に伸びている。しかし政府は阿里巴巴集団(アリババグループ)や 騰訊控股 (テンセントホールディングス)にも近づき、経営不振に陥った中国聯合網絡通信集団(チャイナユニコム)の株式13%を40億ドル(約4500億円)で取得するよう持ちかけるなどした。国営メディアは国有企業の効率性を高める「改革」だと持ち上げるが、しかし実際のところは好調な民間企業に対する新手の課税に見える。

投資家にとって、政府が国有企業の支援に再び傾くことは、革新的な民間企業のアウトパフォームが今後も続くにせよ、その勢いは弱まる可能性があることを意味する。これまで以上に市場支配力を強めた国有企業の方が、投資家により確実に利益をもたらすかもしれない。国有企業が多い上海株式市場は今年に入り、ITやメーカー企業が多い深セン株式市場をアウトパフォームしている。

改革開放路線を唱導したトウ小平氏は、「先に豊かになれるものから豊かになる」ことは許容されるとしていた。中国の国民は30年前に比べればはるかに豊かになった。今度は再び国家の番ということなのだろう。

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