【書評】志賀直哉も川端康成も「生まれ変わったらなりたい」職業

【書評】志賀直哉も川端康成も「生まれ変わったらなりたい」職業

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  • 更新日:2018/04/19
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あの志賀直哉も川端康成も「生まれ変わったら絵描きになりたい」と語っていたことを知っていますか。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介するのは、デザイナーから画家へと転向した奇才・横尾忠則が、自分よりも年上のさまざまな老年クリエイターと語り尽くす対談集。創作活動と長生き、そこに因果関係はあったのでしょうか?

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創造&老年

横尾忠則・著 SBクリエイティブ

横尾忠則『創造&老年』を読んだ。横尾忠則と9人の80歳以上の“生涯現役クリエイター”による対論集である。瀬戸内寂聴、磯崎新、野見山暁治、細江英公、金子兜太、李禹煥、佐藤愛子、山田洋次、一柳慧という方々。著作を読んだことのある佐藤、瀬戸内以外はあまりよく知らない。

画家は長生きが少なくない。ピカソ、シャガール、ミロ、みんな90代まで生きた。江戸時代の平均寿命の短い時代でさえ、北斎は90歳の人生を全うした。日本の女流画家の長命も驚くべきものだ。創作活動と長命には何か深い因果関係があるらしいと睨んだ横尾は、長寿と創作活動の秘密を探るべく、すべて年長の9人の芸術家に会ってみようと考えた。インタビュアーが一番若いのだ。

画家・野見山暁治(97)には、肉体年齢に反して、創造年齢・芸術年齢が一致していないアンバランスからくる悩みのようなものを聞き出そうとするが、全然あてが外れて、そういうものはないといわれる。画家ほど何も考えなくて、ストレスのない仕事はないらしい。絵描きの世界は勝負の世界ではない。

野見山は奥さんが亡くなるとき、あんたは長生きすると言われた。仕事のことも気にならないし、人との関係にも煩わされない。自分が好きでやっているだけだから。人は人間関係で疲れるものだ。ヘルマン・ヘッセも言う。芸術家が社会に必要以上に関わったり、政治に興味を持ったり活動したりすると短命に終わる。野見山は九条の会の役員だ。どうやら真面目にやっていないのがバレた(笑)。

小説家は社会を相手に闘っているが、絵描きは宇宙を相手にしている、と大きく出たな、横尾。「そうそう、かなりアホな人間がやっている」「明日どうするつもり、と聞かれても答えようがない」「今でも絵描きが何かはよくわからない。これは職業だといっても、職業ではないし、道楽というにしては、どこか違う。何かいい言葉はないかなあ」と野見山、のんきでストレスはない。

生まれ変わったら何の職業に就きたいか、というアンケートで志賀直哉、川端康成は絵描き、梅原龍三郎、安井曾太郎もなんと性懲りもなく絵描きだった。三島由紀夫は「絵画の力には敵わない。文学は無力だ」と言っている。横尾の考えでは、画家の長生きは「考えない」ということに結びついている、らしい。

この本は、横尾の足かけ3年(79歳~81歳)、その時々の素朴な好奇心から聞いた「創作のこと」「年を重ねること」「死のこと」が収録されている。ロングインタビューをまとめたものではない。なにしろ、聞くだけの人ではない。相手の話を奪うように話す。だから対談集である。なかなかいいリズムだが。

「年をとることで脳の支配から逃れた身体がかえって前面に出てきて、創作活動や芸術行為というものに純粋に取り組める。それがさらに寿命を延ばすことにもなる。年を取るということは、逆に少年に返っていくこと」そこが一番大事なところで、それこそ創造の根幹であり、核となるものだという。う~む、幼児性の源郷に帰ることが成熟だなんてトンデモ屁理屈だと思うが。

編集長 柴田忠男

image by:Shutterstock.com

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