<JR北海道の試練1>留萌~深川路線の営業係数は1500。人口減少も追い打ちをかける

<JR北海道の試練1>留萌~深川路線の営業係数は1500。人口減少も追い打ちをかける

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2018/02/15
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このような無人駅も珍しくない、JR北海道の路線。

昨年、北海道出身で苦闘の末将棋のプロ棋士になった石田直裕四段(当時)の記事を三回に分けて掲載した。(参照:『「子供を藤井聡太にしたい親」への助言――石田直裕四段の例に見る』ほか)

その後石田四段は規定により昇段を果たして五段となった。

その石田五段がプロに至るまでに経てきた苦悩を語るうえで、どうしても外せない問題がある。それは、「JR北海道問題」である。

これが関東一帯の話であれば、問題でも何でもない。たとえば、将棋界にも群馬県出身の棋士が二人いる。藤井猛・三浦弘之両九段である。三浦九段は高崎出身だが、仮にご両親が送迎したとしても、せいぜい自宅・学校からJR高崎駅までだろう。片道20分とか、30分でおさまるはずだ。

しかし、石田五段の場合はそうはいかない。地元・名寄の中学から最寄りの旭川空港まで片道約2時間、東京からの帰りはもう旭川便がないので新千歳まで片道四時間、つまり往復8時間ということになる。到底、中学生一人で往復できる距離ではない。

そこで今回、筆者が体験したJR北海道の実情について報告したい。

◆大部分の路線を辞めたがっているJR北海道

筆者が生まれて初めて北海道の地に降り立ったときの話だ。初めてなので土地勘は全くない。札幌での待ち合わせも泊まるホテルも札幌駅近くで迷いようのない場所にした。

待ち合わせをしたのは北海道議会議員の浅野貴博氏(新党大地)である。

長年、鈴木宗男氏の秘書を務めたのちに政治家に転身、2015年に留萌地区から立候補、道議会議員に初当選を果たした。ジャーナリスト活動をしながら政治家を「友人」と言うのはどうかと思うが、ほぼ同世代ながら政治信条は全く正反対ということもあり、面白いので付き合いが続いている。

「今でもJR北海道は利用客の減少が止まらなくて大部分の路線の運営をやめたがっているんですよ。はっきり言って大部分が赤字路線ですから」

浅野氏はそう切り出した。

「見たところ、札幌近辺以外は全部赤字なんでしょうな……」

筆者は相槌を打った。

「いや、札幌近辺ですら赤字です。札幌駅と新千歳空港間の路線、みんながみんな乗るでしょう。でもあそこで百円の利益を上げるために必要なコスト、これを営業係数(※)というのですが、タカさんこの路線の営業係数がいくらか想像つきますか? 実は、だいたい105らしいんですよ」

(※営業係数……100円の営業収入を得るために、どれだけの営業費用を要するかを表す指数。)

要はこの路線でさえ赤字ということだ。これではほかの路線が黒字になりようがないではないか。

「では、私の選挙区である留萌と深川を結ぶ路線の営業係数はどうか? 1500を超えていると言われています」

経営や数字に暗い筆者でさえも頭がくらくらしてしまいそうな数字である。

「今から約30年前の分割民営化の際、もう北海道が赤字になることは明らかだったので、運営基金として約6600億円をもらい、それを諸々で運用して498億円の運用利益を出せれば、なんとか事業が成り立つという試算だったのですよ。でも当時の想定金利が7%だったのですよ。そんなの今時なるわけないじゃないですか。だからもはやこんな小手先の運用で赤字の穴埋めはできないところまで来てしまっているのです」

◆北海道の人口は5年で30万人減少

そこまで追い詰められているとするならリストラしかあるまい。

「現在JR北海道の鉄道総距離が約2500kmですが、うち1327㎞をやめたいと今言っているわけです。要は半分以上ですよね。常識的に考えても、自社の営業テリトリーを半分捨てたいという企業は終わっているでしょう。かといって、ほかの企業がそのテリトリーを引き継ぐわけでもない。そこが北海道のジレンマなんですよ」

しかも、北海道の人口は札幌に集中している。

「この五年間の国勢調査を見ると、北海道の人口は570万人から540万人に減少しました。でも札幌は増えている。それだけ札幌が北海道のほかの地域から人口を吸い上げているということですよね。かといって出産可能な年代の女性は札幌でも増えていない。道外に出ていくからです。北海道の出生率は1.45くらいで全国平均よりはやや上ですが、根本的な人口減少の解決までには至っていないということになります」

関東で深刻になっている待機児童の問題はどうなのか。

「札幌をはじめとして人口の大きい街では問題になっているかなというレベルですけど、それ以外の地域なら全くありません。私の一人息子も留萌の保育園に行かせていますが、全く問題なく入れましたよ」

それはそうだ。過疎地域だから、むしろ、もろ手をあげて“来てください”という状態だろう。

「自然も豊かですし、広い土地で遊べますし、教育という観点から行っても北大のような旧帝大もありますからね。ほかにも教育大学や医科大学も複数ありますしね、これを機にタカさんのような発信力がある方を通じて北海道への移住を考えてくださる方が出てくれば嬉しいのですがね……」

筆者の発信力など知れているが、もし北海道移住をお考えの方はご一報いただきたい。以上を踏まえて、筆者は次の日から札幌から稚内まで縦断してみることにした。

【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。
雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト

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