友好的な米中首脳会談、対立への序章か

友好的な米中首脳会談、対立への序章か

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/11/14
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――筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト

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【ハノイ】アジア太平洋経済協力会議(APEC)でドナルド・トランプ米大統領が中国の習近平国家主席に敬意を示したことは、表面上は中国にとっての勝利だった。だが、それは一部で批判されているように米国のアジアでのリーダーシップを中国の絶対的指導者に譲り渡したということでは全くない。

トランプ氏は、新たに権力を得た最高指導者の横でその全能ぶりを過度に称賛しながら、「習氏の中国」が朝鮮半島の核危機を「容易かつ早急に」解決できると述べた。

中国の不公正な貿易慣行については、トランプ氏は全ての責任から習氏を解放したように見えた。中国の指導者らが自国民に有利になるように世界貿易システムを操っている方法は栄誉に値すると挑発的に示唆。「中国を高く評価している」と述べた。

しかし、その賛辞の向こうには冷徹な戦略が見える。

トランプ氏は「非常に特別な存在だ」などと習氏を褒めそやしている間に米国の空母3隻を西太平洋に集結させた。それは米国防総省が北朝鮮に対して検討している軍事的選択肢を思い出させるものだ。中国は金正恩氏に圧力をかけて核開発の鈍化を迫ることはできるが、実際の影響力は限られていることを同省は承知しているのだ。

この間、ワシントンでは、当局者が冷戦時代以降めったに使われていない貿易の武器を引っ張り出していた。これは、中国の鉄鋼・アルミのダンピング(不当廉売)への対策として、国家安全保障上の懸念を持ち出す戦略だ。この動きは、習氏には中国を世界の「中心に近づける」ための略奪的な産業政策を放棄する意向がないとの認識や、中国の違反に対しては世界貿易機関(WTO)の勧告といった従来の措置が機能しないとの認識を反映している。

こうしたことはいずれも、友好的だがおおむね空虚な内容に終わった北京での米中会談が今後、貿易やその他の面倒な問題での対立の序章として扱われる可能性を示している。トランプ氏は大統領選でこうした問題について繰り返し警告していたが、今のところこれといった成果はあげていない。

トランプ氏は手玉に取られたのか

空虚な首脳会談はホワイトハウスの計画の一環だったとも考えられる。

両者とも普通は合意に縛られる。ニクソン以来の歴代米大統領にとって最大の目標となってきた全面的な取り組みに向けた進歩を示すためだ。だが今回は違った。2500億ドル規模の商取引の契約成立にだまされる者はなかった。一部は既に履行のための作業が進んでいるものを今回の契約に取り込んだもので、一部は覚書、つまりボツになりがちな拘束力を持たない約束にすぎなかったのだ。

トランプ氏の精力的な個人外交だけに焦点を絞れば、同氏はうまく手玉にとられたという見方も成り立つ。

収穫が多くはなかったところを見ると、ホワイトハウスは米中首脳会談を使って、昔のような「お芝居」をしているのではないとのシグナルを発したかったようだ。そのせいだろうか、トランプ氏が北京を離れた後、中国側はより実質的なオファー(米証券会社や銀行の市場アクセス改善)を手に客人を「追いかけた」。ホワイトハウスの側近はこの譲歩について、米側が要求したものではなく、中国から与えられたものだったことを示唆している。

このようにワシントンの観点から米中首脳会談を綿密に分析すると、トランプ氏に与えられた役割は、習氏との信頼関係を強化し、予想される乱気流を前に米中関係を少しでも安定化させることだった。

米国第一主義に沈黙

一方、ベトナム・ダナンのAPECでトランプ氏が行った演説に鋭さはなかった。多国間貿易を目指すグループを前に、トランプ氏は二国間貿易協定へのこだわりをまくし立てた。習氏の「チャイナドリーム」(アジアの小国の理想や野心を圧倒することが多い)に対抗して米国の圧倒的な構想を打ち出す代わりに、日本で編み出されたスローガン「自由で開かれたインド太平洋」を持ち出したが、その詳細には触れなかった。

トランプ氏は「オズの魔法使い」の主人公ドロシーのせりふを借りて習氏の民族主義的ナショナリズムや「一帯一路」構想を皮肉り、「世界には多くの場所や多くの夢、そして多くの道路がある」と述べ、まばらな拍手を受けた。一方、トランプ氏が掲げる耳障りな「米国第一」主義――「だがわが家に勝る場所はない」――は沈黙をもって受け止められた。

トランプ氏には問題がある。各国にナショナリズムを売り込むことはアジアに亀裂を生む。トランプ氏が対峙(たいじ)しているのが北朝鮮の核の恐怖であろうと中国による領有権の主張であろうと、アジアの連合を味方につける必要がある。習氏はこれを、少なくとも物の見方としては理解している。演説では「人類運命共同体の構築」について語り、スタンディングオベーションを受けた。

開かれた市場とグローバリゼーションの救世主を演じようとする習氏の試みは、今年1月のダボス会議で初めて自身のその役割を宣伝した時と同じくらい多くの疑念を生んでいる。

だが習氏が提案しているのは多様性の受け入れであり、そこからの退却ではない。

米国は自らのイメージ――自由貿易主義と実質的な民主化への動き――に沿ってアジアを構築したが、台頭する中国にその果実を遺贈するリスクを冒している。

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