日本の新幹線のチケット代は、やっぱり高すぎだった

日本の新幹線のチケット代は、やっぱり高すぎだった

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/02/14
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自分の行きたいところに行き、住みたいところに住む。先進国の住人にとっては当たり前と思われていたことが、日本では徐々に困難となりつつある。

経済の基礎体力に比べて、一部の公共交通機関のコストが高すぎ、移動が難しくなっているのだ。日本は「移動貧困」の状態に陥りつつある。

「新幹線は高すぎる!」

先日、ホリエモンこと堀江貴文氏とひろゆきこと西村博之氏が対談を行い「日本の新幹線は高すぎる」と主張したことが話題となっていた。

ひろゆき氏は現在、パリに住んでいるそうだが、フランスのパリからベルギーのブリュッセルまで3500円で行けるのだという。パリからブリュッセルまでの距離は約300キロなので東京-名古屋とほぼ同じである。東京-名古屋の新幹線料金はのぞみの指定席で約1万1000円なので、単純に比較すると新幹線は高い。

ネット上では、「専用軌道を走り、時間にも正確な新幹線と欧州の高速鉄道を比較しても意味がない」といった意見が多かったようだが、2人が言いたいのはおそらくそういうことではないだろう。公共交通機関の運賃が、日本の経済体力に比して高すぎ、多くの国民にとって利用しづらいものになっているということが本意だと思われる。

実際のところ日本と諸外国で移動コストはどのくらい違うのだろうか。例えば東京から大阪、あるいは東京から福岡に移動するケースを基準に考えてみよう。

東京-大阪間の新幹線料金はのぞみの指定席の場合、約1万5000円である。東京と大阪の距離は約550キロだが、これを欧州にあてはめるとパリ-ボルドー間(567キロ)のTGV(フランスの高速鉄道)が当てはまる。

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フランスの高速鉄道TGV Photo by iStock

TGVの運賃はいつの時点でチケットを買うのか、キャンセル制限がどうなっているのかで大きな差がある。出発直前にキャンセル自由のチケットを予約した場合は、時期にもよるが119ユーロ(約1万6000円)なので新幹線と大差はない。

キャンセル制限のあるチケットの場合には少し安くなって約1万3000円となる。1カ月以上先の予約であれば、キャンセル制限チケットは大幅に安くなり、約7500円のチケットも見つけることも可能だ。

だが極めつけは、限定された列車に設定される格安料金である。本数は少ないが、場合によっては何と10ユーロ(約1400円)というチケットまで存在している。

つまり東京-大阪を日本の10分の1の料金で移動できるのだ。もちろん新幹線にも学割や早特といった割引チケットが存在しているが、安いものでも1万円前後であり、TGVとは比較にならない。

どう安くするのか

フランスの格安TGVはOUIGOと呼ばれている。席間の狭い普通車のみで、発着駅はパリ中心部ではなく郊外となっている。しかも、出発30分前に駅に行く必要があるなど、各種の制限が設けられているが、とにかく料金が安い。

この格安料金は政策的に導入されているもので、ドイツなど他の欧州各国にもこうした格安チケットがある。欧州には移動の権利を保障するという考え方があり、主に所得の低い若年層の移動を確保するための措置として活用されている。

一方、航空輸送はこれとはまったく逆のメカニズムによって格安料金を実現している。徹底した競争によって運賃を引き下げる市場原理主義の導入である。

東京から福岡までの航空運賃は、JALやANAといった大手エアラインの場合、直前予約では2万円台後半が多く、1カ月以上先になると1万円台後半まで下がる。

東京-福岡の営業距離は、欧州ではパリ-ローマ間に近いが、エールフランスなど大手エアラインの料金は2万円台から3万円台と日本と同じかむしろ高い。米国ではニューヨーク-シカゴ間に相当するが、米国は大手でも安く、2万円台後半のチケットがある。1ヵ月以上先になると半額近くになるのも同じだ。

これがLCC(格安航空会社)になるとさらに価格が下がる。LCCの場合、パリ―ローマ間は1万円を切るケースが増え、1ヵ月以上先のものであれば5000円前後のチケットもある(極端なケースでは2000円台もある)。日本でもLCCを使えば安いケースでは7000円前後で福岡まで行けるので、似たような状況といってよい。

鉄道の運賃と航空運賃を比較すると、状況がはっきりと見えてくる。

つまり意図的に競争政策が導入された航空輸送の場合には、米国や欧州はもちろんのこと日本においても運賃の低下が見られる。しかし鉄道輸送は航空輸送と異なり、インフラ建設を伴うので簡単には競争原理を導入できない。このため欧州では政策的に低価格運賃が導入され、所得が低い人の移動を支援している。

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Photo by iStock

移動が滞ると経済成長にマイナス

日本は長く経済が低迷しているので、人の移動も停滞している。日本では過去10年で、鉄道輸送は9%、航空輸送は5.2%(いずれも人キロ)しか増えなかったが、欧州では、鉄道輸送が19%、航空輸送は55%も増加している。米国には日本や欧州のような高速鉄道はなく航空輸送が中心だが、同じ期間で航空輸送量は20%伸びた。

日本人の給与所得者の平均年収は20年前には420万円もあったが、現在は360万円まで下がっている。ここ数年は横ばいが続いているが、物価が上昇しているので実質的な賃金はさらに低下した。

300万円台の年収では、家族4人が年2回、実家に帰省するだけも相当な負担である。20代前半の労働者の賃金は、40代後半の労働者の半分しかないので、若年層ほど状況は厳しい。

欧州や米国の1人あたりGDP(国内総生産)は日本と比較すると1割から5割ほど高いので、平均年収もその分だけ高いと思ってよい。これだけ稼いでいるにもかかわらず、高速鉄道に格安料金が設定されているという現状を考えると、日本の移動コスト(特に鉄道)は極めて高いと言わざるを得ないだろう。

日本はすでに、移動したくても経済的な理由で移動できないという、移動貧困ともいうべき状況に陥っている可能性がある。もしもそうだとすると、これは単なる社会保障の問題にはとどまらない可能性が出てくる。実は、経済成長と人の移動には密接な関係があり、移動の停滞は経済成長を阻害する可能性があるからだ。

経済学の分野では、一般的に、GDPが成長する要因は3つあるとしている。ひとつは投下資本、もうひとつは投下労働力、そして最後はイノベーションである。日本は人口が減っているので労働力は減少しているが、資本投下とイノベーションを活発にすれば人口減少をカバーできる。

実際、過去のGDPの動きを見ても人口増減の影響はそれほど大きくなく、イノベーションの活発さが成長率を左右してきた。ここで重要となってくるのがイノベーションと移動の関係である。

実はイノベーションの活性化と人の移動には密接な関係がある。

よく考えてみれば当たり前のことだが、同じ場所で連続してイノベーションが発生するとは限らない。大阪が拠点の企業で大きな技術革新があり、西日本に主要な生産ラインが設定された場合には、人材需要の分布が変わり、東から西に人が移動することになる。

当然、その逆もある。つまり人の移動が制限されるとイノベーションが阻害され、結果として成長が滞るという負のスパイラルが発生しかねないのだ。

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Photo by iStock

感情的な二元論はもうやめよう

高度成長の時代には最大で年間400万人近い都道府県間移動があったが、その後、移動者数は一貫して減少が続いており、現在では200万人程度しか移動していない。

日本の場合は、東京一極集中型だったので、基本的に人の移動は地方から東京という流れが中心だったが、こうした活発な移動が経済を支えていたという側面は無視できないだろう。

最近はネットが発達しているので移動の必要がなくなったとの見解もあるが、かならずしもそうとはいえない。米国では、先端的なIT企業が拠点を構えた街には、各種のサービス業が集積し、結果的に労働者の賃金が上昇するという傾向が顕著となっている。

スマホ時代を迎え、簡単に情報のやり取りができるようなったことで、逆に人と会って情報交換する価値が高まっている。シリコンバレーなど、通信手段を駆使できるはずの先端的なIT企業がこぞって、同じエリアに集積することには理由があるのだ。

こうした状況を考えると、日本でも移動を支援する政策について、もっと真剣に検討した方がよいだろう。

先ほど、筆者は日本の旅客輸送が停滞していると述べたが、ここ数年の航空輸送は状況が改善している。これは明らかにLCCが普及した効果である。

世の中では、自由競争の是非や政府による補助の是非について、感情的な二元論ばかりが戦わされるが、こうした政策は状況に応じて使い分けるべきものである。自由化が容易な航空輸送は、規制緩和による効果が大きいだろうし、構造的に競争原理の導入が難しい高速鉄道は、政策的な補助が重要となるだろう。

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