カタルーニャ独立を熱望する中間層の不満

カタルーニャ独立を熱望する中間層の不満

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/10/12
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【バルセロナ】スペイン北東部カタルーニャ自治州の中間層は、分離・独立志向を持つ住民の中心的な存在になってきた。独立志向に拍車を掛けているのは、金融業と工業の強さを誇るカタルーニャの税収がスペインの他の地域に流出し、無駄に使われているとの不満だ。

カタルーニャ人の間では、スペイン中央政府が裕福な同州からカネを吸い上げていると広く信じられている。これが独立運動を推進させる主な要因の1つとなっており、スペインは憲政上の危機に立たされている。独立派の指導者であるカルレス・プチデモン州首相は10日、中央政府との話し合いの扉を開いたが、カタルーニャの中間層が不満を抱えているため分離・独立への強い圧力は続くだろう。

「カタルーニャ独立は中間層の反乱だ」と、英カーディフ大学の歴史家、アンドリュー・ダウリング氏は語る。「カタルーニャの中間層は独立がより良い生活をもたらすと考える一方、労働者層は独立しても生活はよくならないと考える傾向がある」

中間層の反乱はカタルーニャで劇的な結果を引き起こした。中間層は欧州の他の地域でも不満を口にしており、例えばイタリア北部地域やドイツの裕福なバイエルン州がそうだ。

カタルーニャの調査機関が7月に行った世論調査によると、自らを中間層または上位中間層に位置づける人の約半数は、カタルーニャが独立国家になることを望んでいた。対照的に、労働者階層で独立を支持したのは28%にとどまった。

マドリードに本拠を置くコンサルティング会社GAD3社長で社会学者のナルシソ・ミカビラ氏は「カタルーニャの中間層の多くは、同州の独立が長年の経済的不公平の解決策だとみている。経済的に弱い地域のためにカネを払わなければならないことが不公平だと彼らは考えている」と話す。とりわけ、スペインが深刻な経済危機に見舞われていた時期がそうだったという。

カタルーニャ州の経済は、石油化学企業や世界有数の港湾といった税収源に支えられており、スペインの国内総生産(GDP)の約5分の1を占めている。カタルーニャは人口1人当たりのGDPが全国平均を19%上回っていることを誇りにしている。同州に本拠を多く企業の数は、スペインの全17州(首都マドリードの所在地であるマドリード州を含む)で最も多い。

スペインの税収再配分制度の下で、カタルーニャ州は同州GDPの5%または8%(計算方法によって異なる)に相当する額を中央政府に納めている。スペイン財務省によると、州人口1人当たりの国家予算への貢献度は、マドリード州、バレアレス諸島州に次いで3位だ。多くのカタルーニャ人は、こうした何十億ユーロにも上るカネを地元の成長と発展のために費やせるはずだと考えている。

独立志向のカタルーニャ人の多くは、同州の公共部門はスペインの他の地域と比べてはるかに小規模かつ効率的だと主張し、より貧しい地域が同州の税収を無駄遣いしているとして憤っている。例えばスペイン統計局によると、カタルーニャの労働者のうち公務員の比率はわずか15%だが、スペイン南西部の貧しいエストレマドゥーラ州では33%に達する。

一方で独立反対の一部カタルーニャ人は、裕福な地域は貧しい地域より大きな負担や責任を担わねばならないとの考え方を受け入れており、それが国家としての連帯の証しだとみている。中央政府は、カタルーニャも他の地域も国家的連帯から恩恵を受けていると主張。カタルーニャが独立すれば、主要な貿易パートナーである国内他地域との間に、大きな関税が立ちはだかることになると警告している。

独立への支持率はスペインが不景気の時期に急上昇した。当時、多くのカタルーニャ人、とりわけ中間階層は、緊縮政策によって自分たちが不当に大きな打撃を受けたと感じた。同州の世論調査機関によれば、この夏に独立を支持したカタルーニャ人は35%で、ピークだった2013年終盤の49%からかなり低下していた。

2011年から16年までの間で、スペイン政府による資本投資総額は全国で55%減少。カタルーニャ向けの投資額は3分の2(約67%)以上も減少した。特に公共部門の給与削減や大学授業料の引き上げがカタルーニャ人たちの怒りを買った。

カタルーニャ州では、他の地域の大型公共事業は無駄遣いの証拠であり、中央政府がそれを容認していると批判する向きが少なくない。しばしば指摘される例が、ほとんど利用されていない各地の地域空港だ。また2010年の協定では、各地域間で再分配される公的資金の割合が調整され、特にカタルーニャは恩恵を受けるはずだったが、同協定が崩壊したため多くのカタルーニャ中間層に強い悪感情が残った。

今月1日の住民投票で独立支持の票を投じたバルセロナ在住のエンジニア、ラファエル・ウラシア氏(41)は「(スペイン当局は)1990年代前半のオリンピック以降、われわれの道路に資金をあまり投じてこなかった」と述べた。独立すれば自分たちの資金をもっと地元の事業に投入できると主張する。「われわれが分離独立すれば、状況ははるかによくなるだろう」

独立支持のエコノミストらで構成する団体「独立のためのエコノミスト」の試算によれば、カタルーニャが独立すれば、中央政府による公共サービスの肩代わりコストを考慮しても、地元のGDPは長期的に8%押し上げられるという。

「カタルーニャは決して経済的に沈没しない」と、カタルーニャの工業都市サバデイ在住の弁護士ベルタ・アルゲラゲットさん(25)は述べた。「非常に裕福な国になると思う」

これとは対照的に、労働者階層は分離独立にはるかに消極的だ。

裕福なカタルーニャ州は歴史的にスペインの他地域から移住者を引き寄せてきた。1975年まで続いたフランコ独裁体制の最後の20年間で、未開発の南部地域からカタルーニャの工業都市や港湾都市に移住したスペイン人は150万人に達し、織物や自動車製造、鉄道の仕事に就いた。

こうした移住者の多くは出身州との結び付きを維持し、家ではカタルーニャ語ではなくスペイン語を話し続けた。このため独立への熱意は薄い。

実際、言語は独立への支持を予測するうえで強力な要素だ。カタルーニャの調査機関によると、カタルーニャ語を母語とする人々のうち、独立を支持しているのは4分の3に達している。そしてカタルーニャ語を母語とする人々の55%は中間層だ。

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