無様な試合をした五輪代表だが、メダル獲得の有無を語るのはまだ早い

無様な試合をした五輪代表だが、メダル獲得の有無を語るのはまだ早い

  • Sportiva
  • 更新日:2019/11/19

誤解を恐れず言えば、五輪での金メダル獲得はそれほど難しい目標ではない。色はともかく、メダル獲得とするならば、それはかなり現実的な目標で、十分に手が届く可能性があるものだと思っている。

少なくとも、ワールドカップでのベスト4進出との比較で言えば、達成のハードルは各段に低い。それが、過去の五輪を取材してきての印象だ。実際、日本はロンドン五輪で3位決定戦に進出。メダル獲得まであと一歩に迫っている。

もちろん、その理由のひとつに、世界各国の”五輪軽視”の傾向があることは否めない。要するに、ワールドカップに比べると、五輪に対する本気度が低いのだ。

時に、アテネ、北京五輪を連覇したアルゼンチンや、アテネ五輪3位のイタリア、あるいはリオデジャネイロ五輪優勝のブラジルのような、真の世界レベルというべき、スペシャルなチームが現れることもある。

あるいは、今ではFIFAランク1位になるなど、世界屈指の力を持つベルギーの強さの礎は、北京五輪4位のチームによって作られている。

だが、総じて言えば、23歳以下の世界大会というイメージほど、五輪のレベルは高くない。それゆえ、日本にもメダル獲得のチャンスは十分ある、というわけだ。

世界各国が軽視するような大会に力を注ぐのはいかがなものか、という見方もあるだろう。

しかし、日本はアメリカと並ぶ、世界でも稀有な”五輪至上主義”の国である。スポーツの世界において、五輪の注目度はずば抜けており、そこで結果を残すことは、その後の競技の盛り上がり=強化に大きな影響を与える。サッカーの場合で言えば、Jリーグに注目を集める、いいきっかけにもなるだろう。

それだけに、過去の五輪代表を見ていて、強化の仕方が歯がゆく映った。

スケジュールの問題はあるにしても、さしたるキャンプや海外遠征、強化試合が組まれることもなく、その一方で、大会直前には毎度恒例のオーバーエイジ枠を巡るドタバタ劇。監督が望む選手選びさえままならず、せっかくメダル獲得のチャンスがあるのに、本気でそれを目指そうという雰囲気がまるで感じられなかった。

だが、日本サッカー協会もようやく重い腰を上げたようだ。

地元開催の東京五輪だから、というのは気になるところ(本来なら、東京五輪でなくとも、こうあるべき)だが、とにもかくにも、過去に例がないほど積極的に海外遠征を行ない、強化試合が組まれてきた。そのなかでは、ブラジルU-22代表を、しかも敵地で下すという”歴史的金星”まで挙げている。

昨年、森保一監督の就任とともに、U-21代表としてチームが立ち上げられて以降、現在のU-22代表、すなわち東京五輪代表は、これまで結果だけでなく、内容的に見ても上々の成果を残してきた。海外移籍の若年齢化が進むなか、東京五輪世代も例外ではないが、それでもチームは国内組を中心に、着実に強化が進められてきた。

そして、東京五輪代表は、次なるステップへと進む段階を迎えていたのである。

今回、”国内初陣”として行なわれたコロンビア戦は、まさにそのための試合だった。次なるステップとは、すなわち、A代表組や海外組の取り込みである。

すでにA代表に選出されているMF堂安律、MF久保建英、さらには今夏、海外移籍したDF菅原由勢といった戦力を、国内組を中心に固めてきた土台にどう積み上げていくか。

これまでの強化過程は、試合ごとにある程度の出来不出来こそあれ、概ね順調だっただけに、コロンビア戦では当然、さらに強い――組織的な戦いという土台に、個の魅力も加えた東京五輪代表が見られるものと期待を集めた。

東京五輪を目指すチームの国内初お披露目。しかも、A代表の試合の合間を縫って、森保監督が久しぶりに指揮を執る。そんな試合は、”たかが”年代別日本代表の親善試合にも関わらず、地上波で生中継された。

ところが、結果は0-2。スコア以上に惨憺たる内容だった。森保監督が語る。

「勝たないといけないというのがプレッシャーになって、硬い入りになり、相手にペースを握られ、難しい試合になった」

今夏のU-20ワールドカップに出場し、このチームで初めて先発フル出場した菅原は、「自分を評価してもらう時間を確保できたことはよかった」としつつも、「負けたし、内容もよくなかった。はっきりした手応えはない」と、表情は険しかった。

連係うんぬんの前に、「もっとメンタルを強くして、アグレッシブに戦わないと。1対1で上回られたのは課題」(森保監督)というお粗末な内容だっただけに、試合後のロッカールームでは、森保監督が「金メダルは、私だけの目標なのか?」と、選手たちに厳しい口調で問いかけたという。

後半の得点機を逃したFW小川航基は、「周りから、そう(金メダルを目指していると)見られない出来だった。こんなんじゃダメだというのが浮き彫りになった」と振り返る。

この試合については、正直、フォローのしようがない。たとえ完敗であろうと、どんな試合にも何かしらの収穫はあるものだが、それを拾い出すのも難しいほど、酷い出来だった。

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コロンビア相手に0-2と完敗したU-22日本代表

しかし、この試合ひとつを取り上げて、東京五輪でのメダル獲得を不安視するにまで話が至るのは、いささか大袈裟ではないだろうか。

これまでの順調な強化過程を見ていれば、むしろ意外な不出来である。もちろん、反省は必要だが、強化の途上で次のステップに進むときにはよく起こること。こんな内容がいつまでも続くようでは困るが、目くじらを立てて、必要以上にネガティブに考えることはないだろう。

たとえば、前半の出来がよくなかった段階で、後半開始から堂安や久保に代え、すでにこのチームで試合を重ねているMF三好康児やFW前田大然を2列目に据え、やり慣れたメンバーに戻すことも可能だったはずだ。

しかし、森保監督がそうはせず、それどころか3バックから4バックへと変更し、前線の枚数を増やすなど、むしろやり慣れていない方向へ舵を切った。後戻りして体裁を整えるより、長期的な視点で前進することを選んだからではないだろうか。

過去の五輪代表が、こうしてお灸をすえられる場すら与えてもらえなかったことを思えば、無様な試合も貴重な強化。まだ五輪本大会の前年というこの時期に、国内に南米の強豪を招いて行なったからこその完敗だ。不出来を嘆くのは簡単だが、メディアはもちろん、おそらく日本協会スタッフでさえ、この試合と比較できる過去の事例を持ち合わせてはいない。

せっかくの地上波生中継の機会に、こんな試合をしてしまうあたりに、このチームの”持ってなさ”を感じないわけではないが、日本サッカー史上初めて本気で五輪の金メダルを狙いにいくチームである。その歩みはもう少し、一つひとつの点ではなく、線でつないで見ていきたい。

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