東京でちょっとキラキラな生活してるだけ。自分が何者でもないと知り始めた25歳

東京でちょっとキラキラな生活してるだけ。自分が何者でもないと知り始めた25歳

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  • 更新日:2017/11/20

私たちは、東京にいる限り夢を見ている。

貧しい少女にガラスの靴を差し出す王子様が現れたように、いつかは幸せになれると。

だが必ず、自分が何者でもないと気づかされる時が来る。

神戸から上京し、港区女子へと変貌を遂げる真理亜と、その生き様を見つめる彩乃。

彼女たちが描く理想像は、現実なのか、それとも幻なのか...

真理亜の育ちの良さに嫉妬しながらも、東京でもがきながら生きる彩乃だったが...

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気がつけば、季節はいつの間にか冬になっていた。

私は、冬が嫌いだ。

人肌が無条件に恋しくなり、一人で過ごすには寂し過ぎる季節だから。

そしてクリスマスに向けてライトアップが始まった街並みも、時として何故か虚しさを助長する時がある。

キラキラ輝く東京の街は、一人で見るよりも誰かと一緒に見る方が、美しく輝くに決まっている。

「もうすぐ、25 歳かぁ...」

社会人3年目になり、いつの間にか私は25歳になろうとしていた。

東京において、最も持て囃される年齢は24歳から26歳だと私は信じている。

ハタチそこそこの無知な時期を過ぎ、酸いも甘いも分かってきた。でも、まだアラサーなどにはない初々しさも残っている、ちょうど良い塩梅の年齢。

だからこそ、尚更私は、焦っていた。

もうそろそろ、若さでは勝負できなくなる。今のうちに結婚相手を見つけておかないと、永遠に幸せの階段は登れない。そんな目に見えない焦りと恐怖を抱いていた。

「25歳って、色んな意味で勝負の歳だよね。」

六本木のけやき坂のイルミネーションを見ながら、隣にいる真理亜がそっと呟いた一言。

この言葉が、私の耳には未だに残っている。

東京市場における25歳。その時の選択が人生を変える?

「彩乃です。青山でOLしてます。」

もう何度となく言ってきたこのセリフを、私は今日も『37 ステーキハウス&バー』で美味しそうな肉汁滴るブラックアンガスビーフを見ながら話している。

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今年の春に、私は佐藤と別れた。

価値観の違いと言うのだろうか。それとも、佐藤はただ若い子を、まるでアクセサリーのように一緒に連れて歩きたいだけの人だったのかもしれない、と今となっては思う。

結局中目黒に部屋を借り、一人で住んでいる。

周囲には同棲して良い家に住んでいる女友達も多く、2〜3年付き合った彼とゴールインする子もチラホラ出始めた。

第一次結婚ブームの幕開けだった。

この波に乗り遅れたくはない。仮に最初の波に乗り遅れたとしても、29歳までに結婚しなくては。

私の人生設計図には30歳過ぎても独身なんて、ない。日々結婚に対する焦燥に駆り立てられていた。

「彩乃ちゃんは、結婚願望あるの?」

隣に座る俊平が話しかけてくる。29歳、来年からマレーシアに駐在予定だという大手総合商社勤めの彼からは、同じような結婚への焦りを感じた。

「いい人がいたら、かな♡」

結婚に必死だと悟られぬよう、重い女にならないよう、あえて軽いテンションで言ってみるものの、真っ赤な嘘だった。

「へぇ〜そうなんだ。真理亜ちゃんは?」

珍しくこういう会に参加した真理亜も、大好きだと言っていた大した得もない彼氏と別れたばかりだった。

「結婚願望ですか...今はないですね。」

真理亜の竹を割ったような発言に、一瞬俊平は返答に困った顔をする。

「私、年明けから2年のニューヨーク留学が決まって。だから今は結婚とか考えていません。」

赤ワインを飲みながら顔色一つ変えずにさらりと放たれたこの発言に、動揺したのはこちらの方だった。

「え?真理亜、海外行くの?仕事は?この年齢から行って、大丈夫なの?」

矢継ぎ早に質問するものの、真理亜はふっと微笑んだ。

「東京にいると、いつの間にかこの街に忙殺されていく気がしたの。もう一度、真っ新な状況で新たな挑戦をしたくなったんだ。」

東京で生きるのは辛いのか?思い描いていた夢が叶わないと知るとき

思い描いていた夢と、現実の狭間で。

「お笑い芸人じゃあるまいし、今更そんなニューヨークに行って挑戦とかウケるね。」

俊平が隣で笑っている。

たしかに、私も同じことを思った。それに今でも、夢に描くようなお城住まいではなくても、まぁまぁ良い暮らしはできているはずだ。

年上の嫌な彼氏・リュウジと別れた後も、彼に紹介してもらったWEBエディターの仕事は続けており、どちらかというと順調だと聞いた。

何故このタイミングで、急に真理亜はそんなことを言い始めたのか全く理解できない。

食事会が終わり、二人でお茶をしに麻布十番にある『プレゴ』へと向かう。比較的暖かい夜で、私たちは六本木から麻布十番まで歩くことにした。

けやき坂はブルーライト一色に染まっている。私は、このけやき坂の上の方から見るイルミネーションが大好きだった。

東京タワーが、ブルーライトで更に真っ赤に燃えるように輝いて見えるから。

でも何故かこの景色を見るたびに、東京に住む楽しさと辛さに、同時に襲われたような気持ちになるのは、私だけなのだろうか。

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「突然ニューヨークに行くなんて聞いて、びっくりしちゃった。まさか、向こうに好きな人がいるとか?」

半分冗談、半分本気で聞いてみた。だって、そうじゃないと真理亜が東京から離れる理由なんてないはずだから。

「好きな人なんていないよ。ただ...自分の価値ってこんなものなのかと改めて思い知らされて。」

その時に、私は気がついた。
真理亜は真理亜で悩んでいたことを。

20代前半は、夢と希望で満ちている。

例え現状が悪くても希望さえ持っていれば、この東京ならその夢はいつか叶いそうな錯覚に陥る。

そして私達は信じていた。
大人になれば、誰にも必ず王子様が現れると。

しかし、25歳になると嫌が応にも現実に向き合わなければならない時が来る。

“社会の中で、自分はそこまで特別な人間ではない”ということを、知らなければならぬ時が来る。

どんなに美人でも、上には上がいる。

社会に出れば、学歴では勝っていても、出世競争で負けることだってザラにある。

大人になる度に過去の栄光は薄れていく。
若さは日々失っていく。

自分は何者でもなく、ただちょっと東京でキラキラした生活をしているだけ。そしてそこに何の価値もないことを、私たちは気がつくのだ。

「もしかしたら、逃げなのかもしれない。でも、今しかできない気がするから、挑戦してみたいんだ。」

そう話す真理亜の目は、まるで葉っぱの上で輝く雨粒のように見えた。

「自分の価値と向き合ったとき、その低さに愕然としたの。それなりに楽しくて幸せだけど、このままじゃいけない気がして。 」

真理亜の言葉を、私はただ黙って聞くことしかできなかった。

それから1ヶ月後、真理亜は宣言通り旅立った。

送別会をしながら、どこかホッとした自分もいた。

真理亜に向けていたはずの嫉妬は、気がつけば自分のコンプレックスをえぐっているだけだったから。

—真理亜がいない間に、私はこの東京で幸せを掴むんだ。

素敵な王子様を探してみせる。まだ25歳、カボチャの馬車でお城に嫁ぐチャンスはある。

そう信じていた。

でもここから、20代後半を迎えた私の人生は、更に複雑に絡み合っていくなんて、この時は思いもしなかった。

▶NEXT:11月21日火曜更新予定
20代後半の過ごし方で明暗が別れる、東京のシンデレラたち

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