「清く正しく」を続けることができなかった、人気アナウンサーの転落劇

「清く正しく」を続けることができなかった、人気アナウンサーの転落劇

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  • 更新日:2018/06/30

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれ、幸せに暮らしていた隼人と怜子。しかし結婚6年目、人気アナウンサーの夫・隼人が女の子と週刊誌に撮られてしまう。夫のピンチが続く中、妻は番組での夫婦共演で夫を救うことに成功する

夫は以前の名声を取り戻した。が、再びスキャンダルが襲う。夫は妻を守るためある決断をし妻に告白するが…。

「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?

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隼人:「人生も、生きがいも、俺のせいで失って欲しくない」

「…今、リコン、って言った?」

怜子の、キョトンとした顔の問いかけに思わず怯みそうになったが、僕は頷き、もう一度言った。

「…離婚してほしい。」

2度目の僕の言葉に、怜子の顔からさっきまでの柔らかな表情が消えた。けれど彼女は、僕から目をそらすことはしなかった。

怜子はまるで、僕の心の奥底を見透かそうとするように、僕の目を見つめたまま、言った。

「どういうこと?ちゃんと、説明してくれるわよね?」

―私は、もう逃げない。

怜子のまっすぐな視線が、そう言っているように感じた。僕の言葉の真意をきちんと理解しようとしていることが伝わってくる。

僕は、握ったままだった彼女の手を、もう一度握り直すと、どうか一つの誤解も生まずに、僕の気持ちが全て伝わりますように、と祈りながら経緯を説明した。

ついさっき、さやかが暴露記事を出す、と教えてくれた香川さんのこと。そしてその記事には、さやかと付き合っていた時の写真も載せられていて、さらに際どい写真を出される可能性もあること。

まるで、怜子がさやかを脅してあの騒動の時に彼女を黙らせたように書いてあること。そしてこの記事を叩き潰してくれる、という香川さんの申し出を断ってしまったことと、その理由を…。

怜子は、相槌を打つこともなく、黙ったままだった。

「確かに、俺のキャリアのことだけを考えれば、香川さんに裁判を起こしてもらって、さやかを黙らせるのが一番いい方法だと思う。でも、怜子や翔太はどうなる?夫が女性問題で裁判中なんて、怜子の仕事はどうなる?」

モデルの中でも、特にクリーンで明るいイメージを求められるのが「ママモデル」だ。裁判になれば、仕事は確実に減る。

裁判=罪ととらえる雑誌やスポンサーが、たくさんのママモデルの中からわざわざそんな「危険な渦中」にいるモデルを選ぶわけはない。

その上、裁判になれば記者や心ない人…不特定多数の人が傍聴することができる。そうなればゴシップだけが切り取られ、広がる可能性も高い。

世間は正しい情報よりも、下世話な話を面白がる。

幸せな理想の夫婦だと言われていた僕らなら尚更、その知られざる顔が世間の興味を引き、広がっていく。

僕は、怜子の仕事への情熱も、どれほど仕事にプライドを持ってきたかも一番側で見てきた。だから前回のように、自分のキャリアのことだけを優先する判断はしない。今回は夫として、怜子を守ることだけは決めていた。

「モデルとしての人生も、生きがいも、俺のせいで失って欲しくない。」

ずっと見つめていた怜子の目が、少し歪んだような気がして胸が痛んだが、僕は続けた。

このあと怜子の本音が爆発!怜子の意外な反応に隼人は言葉を失う…。

「記事は、数日中には出てしまう。しかも前回よりひどい記事だ。だから大騒ぎになる前に、怜子と翔太が世間の関心から一番遠くに行ける方法はなんだろう、と考えた。」

とにかく僕から、2人を離したい。

今後、僕がどんな戦い方をしたとしても、僕とはもう関係ない、私たちも迷惑しているんです、というスタンスを取れる形。そして世間が同情し、もうそっとしといてあげようよ、と思う形。

「怜子が、夫のスキャンダルに巻き込まれた可愛そうな妻として世間に認識されれば、怜子には同情が集まる。だから2度目のスキャンダルに嫌気がさした怜子が、俺を捨てたことにすればいい。」

僕が困った夫として世間に認識されれば、怜子や翔太は犠牲者だ。その上で離婚を決意した妻に世間は優しくなり、応援してくれる。

実際に、今までそんな芸能人カップルは数多くいる。夫が徹底的に悪者になれば、妻のイメージダウンは最小限になるものだ。だから。

―離婚して、僕を捨ててくれ。

そう言おうとした時、怜子の呆れたような声がした。

「隼人って…結局、何にも分かってないのね。」

怜子:「正義を信じていたかった」

―ほんと、バカね。

私や翔太のことを、隼人なりに考えてくれた上での発言が「離婚」だということは分かった。だけどこの人は、肝心なことを理解していない。

「私、仕事のイメージを守って欲しいなんて言った?そのために離婚して、私と翔太だけがゴシップにさらされることが減ったとして、隼人だけが傷ついて、それで私たちが嬉しいと思う?」

「…それは…。」

隼人が、呆気にとられた表情のまま、口ごもった。続きの言葉を待ったけれど沈黙が続き…私は今こそ、自分の気持ちをきちんと伝えなければいけないという思いがこみ上げ、覚悟を決めた。

「私が、隼人のこと…愛してるって知ってた?」

ずっと言えなかった言葉を口にした瞬間、不安のような感情がこみ上げて、思わず語尾が小さくなる。隼人の目が見開かれた気がしたけれど、照れ臭さが先に立ち、私は早口になった。

「だから離婚なんて絶対にしない。私たちは、一緒に戦うの。パーフェクトカップルなんて呼ばれなくなってもいい。あなたが理想の夫という肩書きを捨てるなら、私も捨てる。」

「…怜子…」

2度目のスキャンダル。世間の評価はさらに厳しくなるだろうし、1度目のようにはごまかせないだろう。私たちはきっと多くのものを失う。でも今は、隼人と一緒に戦うことしか考えられなかった。

「怜子、本当にいいのか?」

「私たち、確かに世間が思ってるような、パーフェクトカップルじゃないけど、さやかちゃんに攻撃されて壊れるような絆じゃないと信じたい。私たちは少しずつ、夫婦になってきたはずだから。」

隼人にそう言いながら、自分に言い聞かせているような気持ちになった。ここでさやかちゃんや世間の噂に負けたら、私たちの6年間も否定され、翔太にとっても誇れる親じゃなくなってしまう。

―選ぶべき手段は一つだけ。

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本当のパーフェクトカップルになる!?正義をつらぬく怜子に隼人は!?

「隼人、私たちのこと、全て話そう。あなたがさやかちゃんに婚約破棄されたことも、私が智さんに捨てられて、強引にプロポーズしたことも。打算で始まった結婚だったけど、私があなたに恋をした、この6年間のことも全部。」

隼人は黙ったままだったが、私の気持ちは決まっていた。

―隼人が反対しても、私1人でも告白する。

もっとうまい方法もあるのかもしれない。でも私は、もうごまかすことに疲れていたし、もう2度と、逃げることで大切なものを失いたくはなかった。

世間の目に囚われて、理想の夫婦を演じてきた自分を終わらせる。そのための告白。

正直な告白が、さやかちゃんのような悪意に勝てるはずだと…この時の私は、正義を信じていた。

隼人:「火のないところに煙は立たない」

― 一緒に戦う。

怜子がそう言ってくれた2日後、さやかの記事が出た。

さらにその翌日に2誌。なんとさやかは、合計3誌の取材を受けていたのだ。

本人が持ち込んだ企画なのか、どこからか記者が嗅ぎつけたのか。内容は3誌とも似たりよったりだったが、それによりSNSでは、再びあの時に流失した僕とさやかの写真が流れ、場所や時間の特定を始める人もいた。

堀河アナの番組での釈明は嘘!テレビ局ぐるみの隠蔽か!?」など書かれたものもあり、僕は上層部の事情聴取を受けた。

僕がさやかとの過去を洗いざらい正直に喋ったことで、矛盾点は無いと思ったのか上層部の判断は「白」。その上で、「これ以上の記事は、会社として名誉毀損で訴える」と出版社に警告までしてくれた。

やましいことのない過去の記事で僕が降板する理由は無いという判断で、記事がでた後も数日間番組に出演を続けることができたが。

僕の降板を求める電話で、視聴者センターの電話が鳴りっぱなしになり、番組のホームページのコメント欄やSNSも、辛辣な言葉で炎上した。

『火のないところに煙は立たない。降板させろ」』

『かよわい一般人を、テレビ局が巨大な力でねじ伏せたんだね。テレビってやっぱ汚い!』

『やっぱり仮面夫婦だった?』

『若い女と浮気した男に、正義ぶってニュースにコメントされても気分悪いです。降板させないなら、スポンサーに連絡しますよ』

このままでは、局全体の視聴率の低下につながりかねないと判断したのだろう。

僕は、アナウンス部長に呼ばれた。

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「明日からお前はしばらく休んでもらう。」

僕が、はい、と答えると、部長はため息をついたあと続けた。

「過去くらい誰にでもあるだろうに。過去のことすら許してもらえないんだな。世間はアナウンサーに、そんなに清廉でいて欲しいものなのかね。守ってやれなくて、すまんな。」

その言葉には、今のテレビ局がいかに「清く正しく」いることを望まれているか、ということに対する鬱憤がこもっていた。僕は、こちらこそご迷惑をかけてすみません、と頭を下げた。

「大体、テレビ局に情報をねじ伏せる力なんてあるわけないのに。世間の人はテレビの人間をどれだけ汚い存在だと思ってるんだろうな。」

部長の言葉に、僕は苦笑いを返すしかなかった。

朝の番組の視聴者は、奥様層をメインとしている。

だから浮気というワードは疑惑でも「黒」と判断されることは、前回のことでも分かっていたのに。それでも僕を信じて、使い続けようとしてくれたことだけでも感謝していたし、覚悟はできていた。

「僕の代役は誰ですか?」

「笹崎だ。」

結局そうなるのか。しかし、実力で奪われたわけではないという事実が、思いのほか自分の心を楽にしている。

「…笹崎なら、うまくやれますよ。」

それは、案外本心でもあった。最近の笹崎の成長は側で見ていてよく分かっていたから。

頭を下げて部屋を出ようとした直前、部長に呼び止められた。

天敵、笹崎の後悔!?意外な行動と発言に、隼人は困惑するが…。

「世間に殺されるなよ。堀河隼人っていうアナウンサーの努力も才能も、こんなことで死ぬには惜しすぎる。上層部もお前をアナウンス部から移動させるつもりはない。それがうちの局の、世間に対するせめてもの抵抗だ。くさるなよ。」

「…ありがとうございます。」

「奥さんと、取材受けるんだろ。しっかりな。」

「はい。」

あんなにトップアナウンサーでいることに固執していた自分が、素直に、妙に清々しい気持ちで頷けていることに驚く。

今回のことで、失ったものばかりではない。

会社が自分を信じてくれていること、そしてなによりも、僕の独りよがりな考えをぶち壊し、一緒に戦うと言ってくれた怜子の存在。

だから、僕は諦めたわけじゃない。

たとえ時間がかかったとしても、今度こそ…「世間に左右されない」本物になってみせる。

「隼人さん。」

会議室を出たところで、笹崎に声をかけられた。僕が、この会議室にいることを誰かから聞いてきたのだろう。

「…なんだよ。お前と話すことなんてないぞ。」

歩きを止めずそう言うと、笹崎は小さな声で、何かを言った。聞き取れず僕が足を止めて振り向くと、もう一度口を開いた。

今度は、すいません、とちゃんと声が聞こえた。

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「何に対する謝罪だよ。お前、俺を陥れたくて、結果その通りになったんだろ?」

皮肉を込めて笑った僕に、笹崎は辛そうな顔を見せて呟いた。

「…隼人さんを、陥れて出し抜いてやろうと思ったのは確かですけど、こうなったのに、全然スッキリしないんです。」

―めんどくせえな。

これ以上誰かに聞かれると面倒なことになる。僕は笹崎を促すと、空いている会議室に入って中から鍵をしめ、わざと大きなため息をつきながら言った。

「お前、俺に許されたいわけ?何言っても許さないけど。」

許されるとは思ってないですけど…と小さい声を出した後、笹崎は思い切ったように僕を見つめ、言った。

「後悔してるんです。あの橘さんをけしかけたこと。正直、あの時隼人さんがスキャンダルになって、俺にチャンスが回ってこいって思ったのは事実です。でも!

結局隼人さんは実力でスキャンダルをねじ伏せたし、俺なんか全然敵わなかった。香川さんにも言われたんです。俺は所詮小物だから、悪巧みする才能もないって。」

意外なところで香川さんの名前が出たことに驚くが、質問する気にはならなかった。

「香川さんの言葉通りでした。俺、まじで苦しくなってきたんです。本当に俺のせいで隼人さんの才能が…アナウンサー人生が終わったら…。」

「勝手に終わらすな。」

子供のような言い訳。これ以上聞くに耐えず部屋を出ようとした時、笹崎に腕を掴まれた。

「…離せよ」

「俺、借りを返しますから。隼人さんが、復帰できるように。そしたら今度こそ実力で勝負してください!」

馬鹿でかい声でそう言い切った笹崎が、頭を下げてその勢いのまま部屋をでていく。

―あいつは、バカか。自分が楽になりたい罪悪感で行動されても迷惑なんだよ。

ザラついた気持ちを払拭したくて、怜子に今から帰る、と連絡を入れるつもりでスマホ画面を見ると、怜子からLINEが入っていた。

「全てのCMスポンサーのOKがとれました。帰ってきたら日取りについて話したいです。」

怜子はあの日、すぐに事務所の社長と相談し、スポンサーのOKが取れ次第マスコミ各社に夫婦二人からお話しする場を設ける、という連絡を一斉に入れることになっていた。

―いよいよ、だな。

公開取材を受けたからと言って、事態が好転するとは思っていない。でも2人で、もう嘘はつかないと決めた

怜子のことを考えているうちに、笹崎のことが頭から抜けていったが…。

アイツが、本当に意外な行動に出ることを、この時の僕は思いもよらなかった。

▶NEXT:7月1日 日曜更新予定
番外編&最終回。ついに真実を語る記者会見!さやかに天罰が!?笹崎の意外な行動が隼人を…。

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