京都アニメーションが伝え続けた「日常」の豊かさ

京都アニメーションが伝え続けた「日常」の豊かさ

  • シネマトゥデイ
  • 更新日:2019/07/22
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京都アニメーション近くに供えられた花やイラスト - Carl Court / Getty Images

7月18日、京都府にあるアニメーション制作会社、京都アニメーションを襲った放火殺人事件。日本のみならず世界中で、アニメファンをはじめとする多くの人々が衝撃を受け、深い悲しみに沈んでいる。

ここでは「京アニ」という通称で親しまれている京都アニメーションのこれまでの足跡を駆け足で振り返ってみたい。

創業は古く1981年。虫プロダクションで彩色などの仕上げ作業をしていた八田陽子氏(現・専務)が、結婚後移り住んだ京都府宇治市で近所の主婦らとともに「京都アニメスタジオ」を立ち上げ、1985年に「京都アニメーション」として法人化した。丁寧な仕上げが高い評価を得るようになり、スタジオジブリの諸作品などの仕上げを請け負うようになる。90年代に入ってからは、演出、作画、仕上げ、背景、撮影などを自前で行う体制を整えた。

「京アニ」がブランド化したのは2000年代に入ってからのこと。初めて元請けした「フルメタル・パニック?ふもっふ」(2003)がアニメファンから注目を浴び、人気恋愛アドベンチャーゲームをアニメ化した「AIR」(2005)では、原作に忠実でありながら、美麗な作画と画面演出で高い評価を受けた。この路線は「Kanon カノン」(2006)、「CLANNAD -クラナド-」(2007)に引き継がれる。

「京アニ」の名を日本全国のアニメファンに轟かせたのは、なんといっても「涼宮ハルヒの憂鬱」(2006)だ。原作はエキセントリックな美少女とその仲間たちの非日常的な学園生活を描いた人気ライトノベル。放映されたのは独立局の深夜帯であり、放送開始前から注目が大きかったわけではないが、放送直後からトリッキーな構成とハイクオリティーな作画がインターネットを中心に爆発的な話題を呼んでブームを巻き起こした。2005年にスタートしたYouTubeの影響も大きかったと言われており、キャラクターがダンスをするエンディングテーマに乗せて「踊ってみた」動画を投稿する視聴者が相次いだ。

「らき☆すた」(2007)では女子高生たちの他愛のない日常を描いてヒット。作品の舞台となった埼玉県の鷲宮神社にファンが押し寄せる姿がメディアで報じられ、今に続く「聖地巡礼」ブームの火付け役となった。「けいおん !」(2009)では女子高生たちが軽音楽部を立ち上げてバンド活動を行い、卒業するまでの平穏な日常生活を丁寧に描写。関連楽曲も含めて大ヒットを記録した。これらの作品は、のどかな作風もあいまって「日常系アニメ」と呼ばれ、アニメの世界で一大潮流となった。シュールなギャグが多い「日常」(2011)という作品も制作された。

その後も「日常の謎」を扱った学園ミステリー「氷菓」(2012)、中二病をめぐる学園ラブコメディー「中二病でも恋がしたい!」(2012)、商店街の餅屋の娘・たまこの日々を描く「たまこまーけっと」(2013)など、コンスタントに人気作品を連発する。

「Free!」(2013)では、女性向き作品にシフト。水泳部を舞台に、男子高校生たちの青春を躍動感たっぷりに描いて大ヒット。第3期まで制作され、劇場版も公開された。また、吹奏楽部内の人間関係の描写に力点を置き、従来の「日常系アニメ」より一歩先に踏み込んだ「響け!ユーフォニアム」(2015)も人気を博してシリーズ化された。近年は山田尚子監督による『映画 「聲の形」』(2016)、「響け!ユーフォニアム」のスピンオフ『リズと青い鳥』(2018)など、作家性の高い作品を制作している。

京都アニメーションが「京アニクオリティー」と呼ばれる高い水準のアニメーションを維持できたのは、分業が多いアニメ業界において、作品の企画、アイデアから作画、撮影、デジタルエフェクトまで、一気通貫で取り組むことができる社内体制を構築できたことが大きい。非正規社員が多いアニメーターの正社員化を積極的に進め、人材育成にも投資してきた。京都アニメーションの企業理念には「人を大切にし、人づくりが作品作りでもあります」と記されている。

京都アニメーションは、少女たち、あるいは少年たちの日常生活、ひとつひとつの仕草、会話などを丹念に描き、現実と地続きのような豊かな空間を紡ぎあげてきた。「日常」のエンディングテーマ「Zzz」(前山田健一作詞・作曲)は次のように始まる。

「朝起きて 歯を磨いて あっという間 午後10時
今日も たくさん 笑ったなぁ たくさん ときめいたなぁ」

たくさん笑って、たくさんときめく。京アニクオリティーで描かれた豊かな「日常」を多くのアニメファンが愛してきた。こんな「日常」を送ってみたい、というより、こんな「日常」を眺めて過ごしたい、という気持ちのほうが正しいだろうか。それを観ているだけで幸せな気分になれる。京都アニメーションは、こんな幸せな「日常」を送り出してきてくれたアニメスタジオである。

現在、アニメイト各店にて、被害者支援を目的とした募金が始まっている。一刻も早い真相究明と負傷された方の回復、そして何よりもお亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈りします。(大山くまお)

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