医師と看護師が信じる満月の影響 WSJも検証

  • WSJ日本版
  • 更新日:2016/10/20
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【ニューヘイブン(米コネティカット州)】科学に基づいた現実的な感覚を持つ職業人だとされている米国の医師や医療スタッフが、満月は救急処置室や分娩(ぶんべん)病棟に大混乱をもたらすと信じている。

医師や看護師によれば、満月の夜、特にハロウィーン直前の満月の夜は入院が相次ぐ。精神疾患的症状や尋常でないけがに見舞われた患者、普通では考えられない状況で陣痛に見舞われた妊婦などが運び込まれるという。

シャーロットの産科の整骨医オクタビア・キャノン氏は、ある満月の夜に自然分娩で生まれた赤ちゃんが卵膜に包まれた状態だったことを覚えている。

キャノン医師は「とても不気味な感じがした。赤ちゃんは袋の中にいて動いており、中には液体があった」と当時をふり返った。赤ちゃんは健康だった。看護師たちが後で、この赤ちゃんはいずれ心霊能力を持つと話していたという。

一方、メソジスト病院(サンアントニオ)の救急処置室で働く看護師は、スクールバス数台が病院の前に急行してきた満月の夜のことを覚えている。乗っていた高校生数十人はみな夕食で食中毒に見舞われ、そこら中で吐いていた。

患者があまりに多かったため、医師と看護師はバスの中でトリアージを行い、最も症状の重い者だけを院内に運ぶしかなかった。「点滴をつけて床に横になっていた人もいた」という。

満月が及ぼす影響に関する話はあまりに浸透しているため、一部の病院は大荒れの夜に備えてスタッフを増やすと同時に、医師に休まないよう奨励している。

問題は、医師たちが信じている満月の迷信について、複数の研究が精神錯乱であると示唆していることだ。研究の結果では、満月と入院には関係がない。

アメリカン・ジャーナル・オブ・エマージェンシー・メディシン誌が1996年に掲載したリポートは、救急部門の4年間の入院記録15万0999件を分析している。この期間に満月は49回あったが、入院件数が増えたことは1度もなかった。

カリフォルニア大学のジャンリュック・マーゴット教授(地球・惑星・宇宙科学専門)は、友人の助産師から満月の夜に出産が増えるという話を聞き、自身の通常の研究分野を外れてそれが本当かどうかを確かめることにした。

マーゴット氏は昨年ナーシング・リサーチ誌に発表した論文で、月の満ち欠けと入院や出産率の関係について、「そうした相関性はない」と述べた。

ただ、奇妙なことに、2007年のある研究によれば、満月には救急動物病院に運び込まれる犬や猫の数が「大幅に増加」するという。

「満月の時は働きたくない」

ニュージャージー州とフィラデルフィアで40年にわたり救急医をしていたジョン・ベッチャー氏は、満月の影響を否定する研究はどれも完全に間違いだと話す。

ベッチャー氏は、12年に引退する前に到来した最後の満月の夜をふり返った。この夜、通行人に向かって「自分の体を恥ずかしいとは思わない。恥ずかしいと思う人は覆うべきだ」と言いながら裸で町を歩いていた人2人が警察によって連れ込まれたという。

同氏は、満月の話を「信じるようになった。満月の時は働きたくないと思うほどだ」と話す。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は15日の満月の夜に検証を行った。全米で3番目に忙しい救急部門を擁するイェール・ニューヘイブン病院では、満月の影響を信じていない、あるいはそれが起こる原因を説明できる医師や看護師を見つけるのは難しかった。

40年にわたる病院勤務経験を持つエックス線技師ミシェル・シャースキさんは「人間の体は70%が水だ。そして月は海を動かすため、人間の体内の水を動かすことになり、おかしな行動が引き起こされる」と述べた。

だが比較的落ち着いた状況が数時間続いた後、スタッフたちは静かな夜だと認めた。銃傷を負った患者が1人と脳卒中に見舞われた患者が1人いた以外は、午前3時頃に(酒や麻薬で)酔った人たちがふらふら歩いていたり、叫んだり、つばを吐いたりと、よくある状況だった。いつもは混み合っている部屋は暗く、担架でいっぱいのことが多い廊下は空だった。

看護師たちはこれが珍しいと主張した。その夜は幸運を運ぶ「ホワイトクラウド」の医師や看護師があまりに多かったという説明だった(「ブラッククラウド」の医師の存在は、その夜が大騒ぎになることを意味する)。

この病院に20年以上勤務している看護師は「明らかにスタッフ配置の問題だ」と述べた。

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