人格が変わる、苦しい...飲まなきゃよかった、と後悔することになる薬

人格が変わる、苦しい...飲まなきゃよかった、と後悔することになる薬

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/09/21
No image

一度使うとやめられない

「血圧が急激に下がっていて、命の危険がある。昇圧剤を使いましょう」

薬で病気を治したい。それは誰もが望むことだ。しかし、余命わずかな末期の患者となれば話は別だ。

死が近づけば、自然と血圧が下がっていく。余命いくばくかの人の最後の願いは、自然の摂理に逆らわず、安らかに逝くことだろう。それにもかかわらず、患者の状態などお構いなしに、患者を苦しめるような薬を出し続ける医者もいる。

そんな薬の最たる例が、血圧が低下したときに、一時的に命を繋ぎ止めるために使われる昇圧剤だ。永寿総合病院総合内科主任部長の池田啓浩氏は語る。

「終末期の患者に昇圧剤を投与した場合、薬をやめた途端に血圧が下がって死を迎える可能性が高い。薬をやめること自体が患者の死を意味するので、一度薬を使い始めると、やめる決断が難しくなり、次第に量も増えていくのです」

死ぬ直前の1~2週間は、ほとんどの人が体がだるいと感じ、食欲不振になる。そうした場合に使われるステロイドにも注意が必要だ。

要町病院の副院長で、緩和ケア・在宅医療のスペシャリスト、吉澤明孝氏はこう話す。

「ステロイドには強い抗炎症作用があります。そのため、一時的に元気が戻り、全身の倦怠感が軽減されます」

ステロイドを使えば、確かに体力をつけることができるが、ただ、一度は元気になったとしても、薬を使うのをやめれば、すぐに疲労感に苛まれ、元の状態に戻ってしまう。いわば、ステロイドに依存して、命を生き長らえさせている状態になるのだ。

「ステロイドを大量に使い続けると、副作用でうつや躁状態、不眠になりやすい。
また、自らの免疫作用が抑えられるため、感染症に弱くなって、誤嚥性肺炎や排尿障害や頻尿を引き起こす尿路感染症にかかる可能性があります」(吉澤氏)

ステロイドで一時的に元気を取り戻したとしても、あくまで期間限定の症状緩和にすぎず、寝たきりの人が立ち上がれるようになるわけではない。

ステロイドの副作用を抑えるために、向精神薬や、抗菌薬など他の薬を飲む必要が生じるぐらいなら、最初からそんな諸刃の剣の薬は使わないほうがいい。

人格が変わってしまった

死が近い患者は、自分の唾液や生理的な痰を嚥下する機能が衰えるため、喉からゴロゴロと音が鳴るようになる。

「抗コリン薬を使えば、たいていの場合、痰で喉が鳴るのは治まります。しかし、患者にとってはこれが大きな苦痛となるのです。というのも、抗コリン薬は唾液の分泌を抑えるので、痰が少なくなりますが、同時に口が渇いてしまうのです」(吉澤氏)

「死に水」という儀式があるぐらい、死にゆく人にとって渇きというものは耐えがたい。薬のせいで口が渇ききったまま死を迎えるというのはあまりに残酷だ。痰を飲み込めなくなるのは老衰死への一里塚だと考えて、薬を使うのはやめよう。

No image

Photo by iStock

末期がんの患者は、腹水が溜まったり、むくみが出たりするため、利尿剤を出されることがある。しかし、前出の吉澤氏は、「終末期の患者に対して、利尿剤でむくみをとるという治療法自体に問題がある」と指摘する。

「利尿剤は、血管中の水分を尿として排出させる薬です。すると、血管の中が脱水状態となるため、体の余分な部分から水分を吸収しようとして、むくみがとれるわけです。

ですが、終末期の状態で血管内が脱水状態になると、心臓が収縮を繰り返して、血液を体に回そうとする。いわば、心臓に鞭を打って無理やり働かせるようなものです。すると心臓に大きな負担がかかり、心不全を起こす可能性が出てくるため、非常に危険だと言えます」(吉澤氏)

「眠れないようですから、睡眠薬を出しましょう」という医者の言葉に従ったために、後悔する羽目になることもある。

「睡眠薬を使うと、朦朧とした状態になって会話が成り立たなくなったり、逆に物を投げたり、『ここから出してくれ』と叫んだりする『せん妄』を引き起こしやすくなります。

高齢者の場合、代謝が悪くなっているので、睡眠薬が長く体内に残ってしまう。そのため、ふらつきやせん妄が出やすくなるのです。

特に、ハルシオンはせん妄が起こりやすい。マイスリーやデパスは比較的安全だと言われていますが、それでもせん妄を起こす人はいるため、注意が必要です」(吉澤氏)

末期がん患者などの痛みを緩和する際には、モルヒネをはじめとする医療用麻薬を使用する。強い薬には副作用が付き物だ。

永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長の廣橋猛氏の話。

「医療用麻薬には眠気や便秘といった副作用があり、吐き気を催すこともあります」

こうした吐き気を防ぐため、吐き気止めが使用される。医療用麻薬を使用し始めたときや、急に吐き気が強くなったときに頓服として使用する分には問題ないが、飲み続けていると弊害が生じる。

「医療用麻薬を使い始めて1週間程度は、吐き気止めを出してもいいでしょう。しかし、吐き気が治まったのに薬を飲み続けると、アカシジアという、そわそわして静かに座っていられない症状が生じます。

また、吐き気止めを飲み続けると、嚥下障害をもたらすため、誤嚥性肺炎のリスクを高めます」(前出の吉澤氏)

水中で溺れる苦しみ

医療の現場で、患者を延命させる手段として広く使われているのが点滴だ。病院では、口から食べ物を食べられなくなった人に対して、栄養を補うために、アミノ酸やビタミンといった高カロリーの栄養剤を点滴で投与する。

ステロイドのように、患者の体調を改善させることを目的に投与するという意味では、点滴も薬の一種である。この点滴が、患者の苦痛を増やすケースも見受けられる。

長尾クリニック院長で、「在宅医療」に詳しい長尾和宏氏はこう話す。

「病院では最期まで、1日2Lもの高カロリー栄養剤を点滴します。すると水分過剰になり、心不全、肺水腫による咳や痰に加えて胸水、腹水による腹満や呼吸困難をきたして、水の中で溺れてもがき苦しむ状態で最期を迎える。

そのうえ、がん患者では、がん細胞がぶどう糖を取り込み、急速にがんが大きくなることもあります」

No image

Photo by iStock

点滴を打つ場合には、たいてい静脈に針を刺さなくてはならないが、高齢患者は血管が細くなっているため、静脈ラインを確保できないことも多い。その結果、うまく針が入らず、腕や脚が血だらけになっていたということもしばしばある。

また、管を繋ぐと、患者は拘束されて動きづらくなる。痩せ細った患者を痛めつけてまで、点滴をする必要があるかは、はなはだ疑わしい。

このように、終末期に使う薬のなかで、患者の苦痛をかえって増やし、本人や家族が後悔することになる薬は多い。

モルヒネなどの医療用麻薬を用いても、もはや痛みを緩和できなくなった場合、最終的手段として用いられるのが、鎮静薬だ。

最初は、弱いものを少量投与することから始めて、次第に増量し、最終的には目覚めることのない深い眠りへと導く。そのため、鎮静中に死亡することもある。

眠っている間に死ぬと聞くと、穏やかな死を迎えているように聞こえるかもしれない。だが、そもそも死に際に鎮静薬を用いなければならないような看取り方自体に問題がある。

「報告によって多少の差異はありますが、在宅で看取りを行う場合、鎮静が施される割合はたいてい、0~5%程度です。一方で、入院している終末期の患者に対して行われる鎮静の施術率は、多いところで約50%と桁違いです」(長尾氏)

病院で鎮静が行われるのは、過度の点滴でどうしようもなく息苦しくなったり、睡眠薬の飲みすぎでせん妄がひどくなったからだ。

患者を余計に苦しめる薬を使っておきながら、その痛みを緩和するために鎮静薬を使う。まったく矛盾した治療が行われている。

在宅での看取りの現場では、鎮静薬がほとんど使われていないことを考えても、本来ならば、穏やかな最期のために鎮静薬は不要である。

冗談のような話だが、これまで飲んできたからと、死ぬ間際まで生活習慣病の薬を飲み続けさせる病院もある。

新潟大学名誉教授の岡田正彦氏はこう話す。

「すべての医者が高齢者医療に詳しいわけではありません。高齢者がそれまで飲んでいた薬を、いつ打ち切ればいいのかを判断できる医者は多くはない。

薬をやめて、何かあったときにクレームがあっても困る。だから、死ぬ直前まで10種類もの薬を飲んでいる患者が減らないのです」

No image

Photo by iStock

悔いのない最期を過ごすためには、薬をやめることも必要だ。

「生活習慣病の薬は終末期まで飲んでいると必ず悪影響が出ます。高齢者は、血圧が上がったり下がったりする特徴があります。

医者は高いほうにばかり注目して、高い数値に合わせて薬を処方する。ですが、本当に危険なのは低いほうの数値なのです。血圧が急に下がると、急死するリスクが生じます。

余命の長くない人は、即刻、血圧の薬をやめるべきでしょう。特にARBやカルシウム拮抗剤といった新しい薬ほど効き目が強いから危険です」(岡田氏)

糖尿病薬も、死ぬ間際に飲んでも意味がない。

「終末期には、いままで高血糖で悩まされてきた人も、低血糖のリスクのほうが高くなります。死が近付くにつれ、人は痩せていきます。

エネルギー源として、ブドウ糖と脂肪を使い切った後、体の構成要素である筋肉をエネルギーとして使うから、骨張っていくのです。

それほどまでに、体内のエネルギー源が減っている人が、血糖値を下げる薬を飲めば、すぐに低血糖となって、最悪の場合、昏睡状態となり、死にいたります」(前出の吉澤氏)

生活習慣病の薬だけでなく、認知症の薬も、死の直前には必要がない。

「寝たきりになり錠剤を飲み込めなくなった人にまで、抗認知症薬を粉にして胃ろうから注入している病院もあります。

抗認知症薬には、嘔吐や脈が遅くなるなどの重大な副作用がある。衰弱した患者のなかには、実は薬の副作用のせいで亡くなっている人もたくさんいます」(前出の長尾氏)

医者の言葉を鵜呑みにすると、死ぬ間際まで薬漬けにされてしまう。ああ飲まなきゃよかったと悔いても、取り返しがつかない。老親や自分自身の幸せな最期のためには、薬を捨てる勇気も必要なのだ。

No image

「週刊現代」2019年9月7日号より

No image

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

コラム総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
歓喜:超シンプルな「生理用ナプキン」をエリスが発売したよぉおおお! ただしネット通販限定です
「私、彼氏がいるのに...」女を虜にする男が、デートの帰り際に発した一言とは
水原希子、ギャル時代の写真が今と違い過ぎて... 「誰?」「二度見した」
カップめん専用フォークに「100点だ」外国人感動
後ろから見た女性の髪形に大人ビジョンホルダーたちが激震
  • このエントリーをはてなブックマークに追加