森友学園問題で注目「会計検査院」とは?  坂東太郎のよく分かる時事用語

森友学園問題で注目「会計検査院」とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語

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  • 更新日:2017/12/09
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[写真]森友学園問題が審議された11月28日の衆院予算委員会。安倍首相は「私が調べて『適切』と申し上げたことはない」などと釈明した(Natsuki Sakai/アフロ)

学校法人「森友学園」の国有地売却問題が再びニュースになっています。「会計検査院」という国家機関が国会に提出した報告書で、いわゆる国有地の「値引き8億円」を「十分な根拠が確認できないものとなっている」と算出方法などを疑問視したからです。「問題ない」「適切だ」と主張してきた財務省や国土交通省も相手が相手なだけに「指摘は重い」と認めざるを得ない状況です。

それほどのインパクトを持つ「会計検査院」。普段あまり脚光を浴びず、知らない方も多いようです。そこでいかなる権限を有する組織かを考えてみようと思います。

会計検査院の歴史と位置づけ

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[画像]会計検査院は国会や裁判所に属さず、内閣に対し独立した地位を持っている (会計検査院サイトより転載)

現在の会計検査院の立場は、憲法90条に「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」と明記されています。行政機関でありながら、その地位は「内閣に対し独立の地位を有する」(会計検査院法1条)ため、内閣(行政トップ)に指図されません。他方、行政機関ではあるので、他の2権(立法機関=国会、司法機関=裁判所)にも属しません。詳細は後述するとして主な仕事は大ざっぱに表現すれば「国の無駄遣いの調査」となります。

国の会計は、ともすると「予算」(これからの使い道)ばかりが話題となり、「決算」(どう使ったか)が地味になりがちです。でも民間企業は逆で、決算こそ企業の姿形を現すのは周知の事実。その役割は通常の行政機関にも国会にもあるのですが、別途独立して任に当たる機関ともいえましょう。民間で無理やり置き換えると公認会計士による監査と似ています。

1867(慶応3)年の王政復古の大号令で設置された「三職」による新体制、翌年の「政体書」公布に引き続く69年の版籍奉還に伴う官制改革で、日本独自の「太政官制度」という統治システムが誕生します。この過程で設けられた会計官→大蔵省(現在の財務省)の一部局として検査院の前身が置かれました。1880(明治13)年に、今へ続く「会計検査院」の名で衣替えします。太政官制は85年成立の内閣制度で廃止、89年の大日本帝国憲法で「国家ノ歳出歳入ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ政府ハ其ノ検査報告ト倶ニ之ヲ帝国議会ニ提出スヘシ」(72条)と現憲法と似た役割を与えられます。2項で「会計検査院ノ組織及職権ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム」とあり、該当する法律(旧会計検査院法)1条に「会計検査院ハ天皇ニ直隷シ国務大臣ニ対シテ特立ヲ有ス」と独立した監督権限が認められます。

どんな組織? どんな仕事?

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[画像]会計検査院は3人の検査官で構成する検査官会議で意思決定する。また事務総局官房と5つの局が設けられている(会計検査院サイトより転載)

職員の数は約1250人。他の府省庁と同じく国家公務員試験を突破して入職するのが基本です。大半が検査を実施する事務総局に属しています。意思決定は3人の検査官で構成する「検査官会議」。そのうち1人が院長です。

必ず検査しなければならないと決まっているのが「国の毎月の収入支出」。国有財産や国債も該当します。前述のように「国」とは、1府11省などの行政機関と国会、裁判所にまで及ぶ広範な対象です。他に「国が資本金の2分の1以上を出資している法人の会計」も担います。日本銀行、日本郵政、日本年金機構、国立大学などです。

もう1つは検査院が必要と認めた場合です。国の補助などがある47都道府県など自治体も対象となり得ます。

「必ず検査」団体すべてと検査院が目を付けた団体の何を調べるかについて、毎年秋ごろに計画を立てて調査スタート。府省庁などから書類の提出を求め、必要とあれば実地検査を行うべく出張もします。翌年11月に、1年間の調査の成果として「決算検査報告」をまとめ上げ、憲法の規定にしたがって首相に手渡すのです。

政治の作用は突き詰めれば「どこかから税を取ってどこかへ使う」です。例えば行政機関に割り当てられた予算は主権者である国民からの預かり金なので無駄遣いはもってのほか。入札などが正しい手続きでなされ、妥当な金額が支払われているのか。もっと節約できたのではないかといった観点で調べ上げて国民主権を擁護するのです。

なぜ森友問題が検査対象に?

1986(昭和61)年、フィリピンの独裁者マルコス大統領が失脚した後に明らかとなった文書から日本の政府開発援助(ODA)がまともに使われていなかったのではないかという「マルコス疑惑」が噴出し、会計検査院は翌年、事務総局第1局に外務検査課を設けて体制を整えました。

高齢化により国の支出で最も多くなった社会保障費のうち多くを占める年金、医療、介護の使い道にも目を光らせています。特に医療費は制度が複雑でブラックボックス化しやすいため重要な役割といえましょう。

1989(平成元)年から導入された消費税は、事務が繁雑になる事業者への配慮によって認められた制度が「益税」を生むという問題を今日まで抱えています。事業者が消費者へ売って預かった税が国へ納められていないという現象です。「入るべき金が入らない」のも無駄遣いの一種なので検査院が不足状況を把握しています。

NHK(日本放送協会)は放送法で「協会の会計については、会計検査院が検査する」(79条)と定められていて「必ず検査」の対象です。

検査は国会からの要請で行われる場合もあります。今回の森友学園をめぐる問題がまさにそれに当たり、参議院予算委員会が今年3月に国会法105条の規定を用いて会計検査院に調査を求めていました。同院は11月22日、参議院に結果を報告し、それが今話題になっているのです。

検査院報告の法的拘束力は?

安倍晋三首相はこれまで国会で「会計検査院がしっかりと調査し、結論を出すのを待ちたい」との姿勢を示してきました。その結果が「根拠が確認できない」。この点を野党から追及されると「私が調べて『適切』だと言ったことはない」「答弁との整合性は各省がしっかりと検証してほしい」などと釈明しました。今後、首相が指導力を発揮して自ら解明に当たるかどうかは現時点で不透明です。

会計検査院は捜査機関ではないため「ここが不適切だ」と指摘するまでで「おしまい」です。例えば、法令違反に当たる「不当事項」(※)と判断した場合には、相当な問題だというインパクトを与えられますが、何しろ今回の森友問題では適切な価格を推量するのに必要な資料が破棄されていたので、「値引きは不当だ」とまで言い切れないようです。

(※)…会計検査院の検査報告において、不適切なものに関する指摘は、俗に「指摘事項」と呼ばれている。分類としては、上記の「不当事項」のほか、関係大臣などに改善を求める「意見表示」「処置要求」などがある。

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■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など

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