胃がん手術「どこを残すか」が重要 医師に聞いた体重減少が生存率下げる理由

胃がん手術「どこを残すか」が重要 医師に聞いた体重減少が生存率下げる理由

  • AERA dot.
  • 更新日:2017/09/15
No image

胃の切除範囲と術式による残胃と体重減少率

胃がんではどのような手術を受けるかによって、術後の生活の質(QOL)が大きく変わる。重要なのは、「どのくらい残すか」だけでなく「どこを残すか」。その選択が、予後にまで影響を及ぼすことがわかってきた。好評発売中の週刊朝日ムック「胃がんと診断されました」から、手術をした後の生活の悩みについて紹介する。

*  *  *

胃がんを根治させるには、胃の一部あるいは全部を切除する手術が必要だ。術後は、ダンピング症候群や下痢など「胃切除後障害」と呼ばれるさまざまな後遺症が起こりやすい。なかでも「体重の減少」は、ほとんどの患者が経験する後遺症だ。

がん研有明病院の比企直樹医師らが術式ごとに体重がどれくらい減るのかを調べたところ、胃をすべて切り取る「胃全摘」の場合、術後1年で平均18%減少していた。50キロの人なら41キロになり、かなり痩せてしまうことになる。

切除する範囲が大きければ大きいほど体重も減る――と考えがちだが、意外なことがわかった。全摘の次に体重減少率が大きかったのは、胃を60%も残せる「噴門(ふんもん)側胃切除」。残胃30%の「幽門(ゆうもん)側胃切除」や残胃20%で小ぶりなギョーザくらいの大きさしか残らない「亜全摘」のほうが、体重の減りが少なかった。

「残胃が小さいわりに体重の減少が抑えられたのは、胃の上部にある『胃穹窿(きゅうりゅう)部』を残せる術式でした」

と比企医師は明かす。

胃穹窿部は、脳に働きかけて食欲を増進させる「グレリン」というホルモンを分泌している。グレリンの約9割が胃で分泌されるので、胃穹窿部の有無が食欲に与える影響は大きい。

さらにグレリンは味覚に関連しているため、欠乏すると味覚も低下する。

「術後に体重が減るのは、胃が小さくなって栄養の消化吸収が悪くなるからというのが通説でした。しかし胃袋が大きくても、食欲が湧かなければ、思うように食べられなくなります。消化吸収の機能以上に『食べたい』という気持ちや、おいしく食べられることが大切なのです」(比企医師)

■極端な体重減少は再発や予後を左右する

比企医師が術後の体重減少を重視するのは、患者の将来に深刻な影響を及ぼすからだ。

体重が大きく減るのは、術後1~3カ月間。手術の傷が治り、からだが回復していく大事なこの時期に栄養状態が悪いと、縫合(ほうごう)不全や出血など術後合併症を起こしやすいことがわかっている。

また、術後の体重減少は、「骨格筋」から痩せていくという特徴がある。骨格筋はさまざまな組織を支え動かしている筋肉なので、痩せが進めば、歩けなくなる、ものが握れなくなる、姿勢を保てなくなるなど日常生活に支障をきたす。

さらに、体重や骨格筋の減少は再発のリスクを高め、予後を悪化させることもわかってきた。

ステージIIAからIIICの胃がんでは、手術で目に見えるがんは取り除けても、その周囲や胃の外側にがん細胞が残ってしまい、再発や転移を起こすことがある。しかし術後に補助化学療法として経口抗がん剤TS-1(商品名)を投与すると、再発が抑えられ、5年生存率約10%の上乗せが確認できている。それには1年間服用を続けることが必要だが、口内炎や下痢、吐き気、白血球減少や、それにともなう感染症などの強い副作用が現れると、休薬を余儀なくされ、十分な治療効果がのぞめない。

術後の体重減少とTS-1の継続率を調べた研究では、体重の減りが15%未満だった患者の約7割が半年後も飲み続けることができていた。ところが体重が15%以上減った人の継続率は、その約半分まで激減した。

一方、骨格筋の量も5%以上減少すると重い副作用が増え、抗がん剤を続けられる割合が大幅に減ることがわかっている。

「抗がん剤は正常な細胞にもダメージを与えるので、体重が減って体力が落ちている人は、口内炎などの副作用が出やすくなります。口内炎が悪化すれば痛くて食べられなくなり、さらに体重が減る、という悪循環に陥ります。再発予防のための治療を完結できなくなってしまうのです」(比企医師)

抗がん剤の服用を続けられなかったことだけが原因ではないが、術後体重が15%以上減少した人の5年生存率は15%未満の人よりもかなり低かった。

■QOLを考慮し切除範囲を絞り込む

術後の体重減少に悩む患者のために、食事の摂り方や運動などの生活指導、薬物療法、栄養補助食品といったさまざまな対策が講じられているが、体重が元に戻らず苦しむ人も少なくない。

比企医師は、「手術方法を選ぶ段階から、体重減少を予防することができる」と強調する。もちろん根治をめざして、がんの病巣をしっかり取り切ることは大前提だ。

「現在は診断法の進歩に加え手術方法を工夫することで、切除範囲をかなり絞り込めるようになっています。『とりあえず大きく切ろう』ではなく、患者さんのその後の生活、ひいては人生を十分に考えた最適な手術方法を選ぶことが大事です」

(取材・文/熊谷わこ)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

コラム総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」
ひとりエッチ好き女子が「密かにエッチな気分になっちゃう」お店4つ
【悲報】9月23日の人類滅亡がほぼ確定! 惑星の配置が黙示録の記述を完全再現していることが判明!
漫画喫茶でセックスした時に起きた珍事件6つ 使用済みゴムを...!
知ってた!?「九九の9の段」に隠された驚くべき秘密
  • このエントリーをはてなブックマークに追加