女は国のために子を産めと言い放った初の女性少将

女は国のために子を産めと言い放った初の女性少将

  • JBpress
  • 更新日:2017/09/14
No image

シリアのラタキア県近郊のフメイミム基地で、スホイ25攻撃機に乗り込むロシア軍のパイロット(2016年3月16日撮影)。(c)AFP/RUSSIAN DEFENCE MINISTRY/VADIM GRISHANKIN 〔AFPBB News

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

戦うソ連女性たち

ソ連と言えば、第2次世界大戦で大量の女性兵士を動員したことで知られる。

ソ連から見た独ソ戦はいきなり「本土決戦」として始まったため、なりふり構っていられなかったというのが実情であろう。その数は実に80万人にも及んだ。

しかも、ここには少なからぬ数の女性パイロット達が含まれていた。女性撃墜王として有名なリディア・リトヴァクや、女性だけで編成された第46親衛夜間爆撃航空連隊(ドイツ軍からは「魔女飛行隊」と呼ばれた)の活躍はよく知られている。

女性だけで編成された航空連隊は最終的に9個連隊にも及び、ドイツ軍に対する夜間爆撃などで大いに活躍した。

第2次世界大戦当時、これだけの女性パイロットを組織的に戦闘に投入した国はソ連だけである。

一変した状況

ところが第2次世界大戦が終わると、ソ連軍からは女性が急速に姿を消していった。

将校や軍属としては依然多くの女性がソ連軍に勤務していたが、パイロットを含む戦闘配置からは女性がほぼ一掃されたのである。これはソ連崩壊後のロシア軍でも基本的に同様だ。

一方、諸外国の軍隊では女性を戦闘配置に就けるケースはむしろ増加しつつある。

米軍では2010年以降、原子力潜水艦に女性が乗務することも認められているし、女性のイージス艦艦長も誕生。2008年には米軍で初めての女性大将も登場した。第2次世界大戦当時と比べると、米露で状況がそっくり逆転したかのようだ。

しかもロシア軍では一時期、女性軍人の絶対数も相当減少していたようだ。「ようだ」という言い回しを用いざるを得ないのは、ロシア国防省当局者の発言であっても女性軍人の数に関して不整合や飛躍が多いためである。

それでも大まかな傾向を辿っていくと、ロシア軍で勤務する女性の数は2013年頃に最小となったらしいことが分かる。

いくつかの報道を辿ってみよう。ソ連は建前上、男女平等を標榜していたこともあり、現在でも3月8日の国際女性デーは国民的な祝日とされており、この日に合わせて女性軍人に関する情報が公開されることが多い。

2012年3月に国営通信社RIAノーヴォスチが報じたところでは、この時点でロシア軍に勤務する女性の数は5万人で、約3000人が将校、1万1000人が準将校(准尉)であった。将校のうち大佐は28人で、2011年の12人よりも2倍以上に増加したとされる。

これに対して2013年の時点における女性軍人は2万9000人(うち、将校4300人)という報道がある。

将校の数は増えたが、全体数では2万人以上減った計算だ。当時のロシア軍の定数は約120万人であるから、3%にも満たない割合ということになる。

ところが、2014年には女性軍人の数は4万人と再び増加。2017年時点では4万5000人とされている。現在のロシア軍の定員は101万人強であるから、全体の4%強というところだ。

数は増えたが

2013年を境に女性軍人の数が増加に転じたのは、2012年11月に当時のアナトーリー・セルジュコフ国防相が失脚したことが1つの契機と見られる。

同氏はウラジーミル・プーチン大統領の強力な支持の下に軍改革を推進したことで知られるが、その目玉の1つがロシア軍のコンパクト化のために不要な将校の削減を進めたことであった。

約32万5000人の将校を15万人まで削減しようとしたと言えば、その凄まじさが理解できよう(後に軍の反発を宥めるために将校の定員は22万へと再び増加された)。

この過程では準将校である准尉の階級が廃止され、多くの女性軍人が人員整理の対象となったものと見られる。

皮肉なことに、セルジュコフ氏は自らが国防省の高官に登用した女性官僚の汚職と、その女性官僚を愛人としていたことを暴露されて失脚を余儀なくされた。女性軍人の解雇を進めたセルジュコフ氏が女性問題で足元を掬われた格好だ。

これに伴ってロシア国防省は准尉の階級を復活させるなど、セルジュコフ改革の巻き戻しを図った。2014年から女性軍人の数が再増に転じたのは、これが大きな要因と見られる。

逆に言えば、女性軍人数の回復は准将校や下級将校の増加によるものであって、軍上層部に占める女性の割合が増加したわけではない。実際、2015年時点における女性将校の数は2600人とされており、むしろ減少していることが分かる。

つまり、増加したのは下士官や準将校といった比較的階級の低い現場要員であり、女性がロシア軍の中で指導的な立場を占めるような状況が訪れたわけではないようだ。

もちろん、ロシア軍が女性の高官登用を全く行っていないわけではなく、2009年には現代ロシア軍初の女性将官として、エレーナ・クニャーゼワ法務大佐が少将に昇進した。

しかしこれ以降、ロシア軍では新たな女性将官は誕生しておらず(シェフツォーワ国防次官は上級大将の階級を有するものの、彼女は職業軍人出身ではなく、高官に与えられる儀礼的な階級である)、ロシア軍中枢部における女性の進出は進んでいない。

一例を挙げるならば、参謀本部高官や各軍総司令官、軍管区司令官などはすべて男性であり、女性はこれらの要職から排除されている。

また、前述のクニャーゼワ少将は、女性を戦闘配置に就けることや徴兵制の女性への拡大に否定的な態度を示し、「女性は子供を産んで国家に有為の人材を育てた方がよい」と述べている。

ロシア社会におけるジェンダー観がかなり保守的であることはよく指摘されるが、クニャーゼワ少将の見解はその好例と言えるだろう。ロシア軍が女性を戦闘配置に就けたがらないのも、こうした社会の雰囲気を反映したものと言えるのかもしれない。

女性パイロットが復活

だが、こうした傾向には変化の兆しも見られる。特に注目されるのは、ロシア航空宇宙軍がパイロット養成課程に女性を受け入れると決定したことであろう。

もともと航空宇宙軍では肉体的な制約の少ない技術職が多く、レーダー部隊の約3割を女性が占めていたが、戦闘機はもちろん、輸送機や哨戒機のパイロットとしても女性は採用していなかった。

ところが今年8月にセルゲイ・ショイグ国防大臣が明らかにしたところによると、国防省にはパイロットになることを希望する女性たちからの手紙が「数百通」も届いており、方針を転換することにしたのだという。

これにより、まずは15人の女性候補生をクラスノダールの軍事航空学校へ受け入れることになった。応募者は10倍の150人であったという。

もっとも、航空宇宙軍としても女性をいきなり戦闘機に乗せるつもりはないらしく、第1期生の15人は輸送機パイロットとして養成されるようだ。

また、ヴィクトル・ボンダレフ航空宇宙軍総司令官によると、今後は女性パイロットの採用枠を拡大する意向であり、陸軍航空隊(ややこしいが、行政上は航空宇宙軍の一組織ということになっている)でも女性パイロットが勤務する可能性を排除しないとしている。

さらに将来的には女性パイロットの中から宇宙飛行士を選抜することも考慮しているとのことで、彼女らの活躍の場はさらに広がりそうだ。

最近では毎年5月9日に行われる対独戦勝記念パレードにも女性軍人が参加するようになっており(従来は男性軍人しか参加しなかった)、ロシア軍での状況は変化しつつある。

今後は、ロシア軍でも女性が戦闘配置に就くようになるのか、軍中枢部で意思決定に参加する女性軍人が登場するのかなどが注目点となろう。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

国外総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
ジンバブエ大統領、国連でのトランプ米大統領スピーチでも“目の保養”
「他人の家の前でウンコをし続ける女性」が米で指名手配中 / ニックネームは『狂気のウンコ野郎』
ロシアの炭鉱労働者が超小型のUFOを発見か?
独・メルケル首相4選確実も、右翼政党が大躍進
「世界で最も重い女性」、UAEの病院で死去 手術で体重激減も
  • このエントリーをはてなブックマークに追加