「1杯のコーヒー」が筋トレの効率を圧倒的に高める「科学的な根拠」

「1杯のコーヒー」が筋トレの効率を圧倒的に高める「科学的な根拠」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/09/19
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現代のスポーツ栄養学によると…

ポパイはホウレン草を食べるとパワーアップし、マリオはキノコを食べるとパワーアップします。では、筋トレの前に摂取すると筋トレのパフォーマンスを高めることができる食品があるのかというと、実はあるのです。

このような運動能力を高める栄養素や成分を含んだ食品を「エルゴジェニックエイド」と呼びます。

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Photo by iStock

一般的にサプリメントといえば、不足する栄養素を「補う」ものですが、エルゴジェニックエイドは、100のものを120に上げるといったように、普段以上のトレーニングのパフォーマンスを発揮させるものです。

筋トレのパフォーマンスを高めるエルゴジェニックエイドの代表ともいえるサプリメントが「カフェイン」です。2018年のメタアナリシスにより、カフェインを摂取すると最大筋力が増強するという高い科学的根拠(エビデンス)が示されています(メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザインのことです)。

そして、近年の研究では、カフェインを錠剤やカプセルで摂取するよりも、ある飲み物として摂取したほうが筋トレのパフォーマンスをより高められることが報告されています。

それこそが「コーヒー」です。

現代のスポーツ栄養学では、1杯のコーヒーが筋トレのパフォーマンスを向上させることが示されているのです。

筋トレの前にコーヒーを飲むと、筋トレのパフォーマンスが向上し、より高い効果を得ることができる可能性があるのです。それでは、まずはコーヒーに含まれているカフェインの効果から見ていきましょう。

カフェインは「脳」に作用する

今から100年前、イギリスのロンドンである実験が行われました。

人差し指で重りが付いた紐を引っ張ります。時間が経過すると徐々に疲労がたまり、人差し指が伸びていってしまいます。この指が伸びてしまう度合いを筋疲労として計測するのがエルゴグラムです。

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エルゴグラムの図

1907年、ロンドン大学のリヴァースらは、このエルゴグラムを使ってカフェインによる筋疲労への影響を調査しました。

被験者をカフェインを摂取するグループと摂取しないグループに分けてエルゴグラムで検証したところ、カフェインを摂取したグループでは筋疲労がより少なくなることが示されました。この実験によって世界で初めてカフェインが筋疲労を軽減し、パフォーマンスを高めることが示唆されたのです。

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Rivers WH, 1907より筆者作成

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リヴァースらの実験をもとに世界各国でカフェインによる実験が行われ、運動パフォーマンスの改善効果が明らかになると、アスリートの多くがカフェインを好んで摂取するようになりました。その効果からアスリートの70%以上がカフェインを摂取したと言われており、1984年から2004年までの20年間、あらゆる競技会でカフェインの摂取が禁止されるほどでした。

では、カフェインはどのようなメカニズムで運動のパフォーマンスを向上させるのでしょうか?

カフェインはよく筋肉のエネルギー効率を高めるといわれていますが、これは研究により完全に否定されています。カフェインは筋肉に作用するのではなく「脳」に作用するのです。

運動によって疲労を感じるとパフォーマンスが低下します。これは脳にある痛みや疲労などの信号を受け取るアデノシン受容体が脳の神経細胞に働きがけ、細胞の活動を抑制するからです。カフェインはこのアデノシン受容体に作用して、その感受性を低下させる作用があります。そのため、筋疲労を感じる時間が遅くなり、運動のパフォーマンスを向上させることができるのです。

錠剤やカプセルよりもコーヒーが最適なワケ

では、同じ神経活動が関与する「筋力」にもカフェインは作用するのでしょうか?

2015年、ドイツ・ロストック大学のベーレンスらは、カフェインが最大筋力を高めることを明らかにしました。ロストック大学に集められた被験者は、カフェインを摂取するグループと摂取しないグループに分けられ、いくつかの筋収縮パターンにおける最大筋力が計測されました。その結果、カフェインを摂取することによって全ての筋収縮パターンにおける最大筋力が向上したのです。

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Behrens M, 2015より筆者作成

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ベーレンスらの報告は他の研究者によっても支持されており、現在ではカフェインが最大筋力を高めるエビデンスとされています。そして、カフェインが筋力を増強させることが明らかになると、今度はカフェインを含んだコーヒーによっても筋力は増強され、筋トレの効果が高まるのではないか、と考える研究者が現れました。

2016年、コヴェントリー大学のリチャードソンらは、コーヒーの摂取が筋トレのパフォーマンスに与える影響について検証しました。トレーニング経験のある20代の被験者を集め、4つの飲料(砂糖水、カフェイン入りコーヒー、カフェインレスのコーヒー、カフェインの錠剤)を摂取し、その1時間後にスクワットとベンチプレスを疲労困憊になるまでの行い、その総負荷量が計測されました。

その結果、スクワット、ベンチプレスともにカフェイン入りコーヒー、カフェインの錠剤を摂取すると、砂糖水やカフェインレスのコーヒーに比べて有意な総負荷量の増加を示しました。また、カフェイン入りコーヒーはカフェインの錠剤より高い総負荷量を示したのです。

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Richardson DL, 2016より筆者作成

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驚くことに、ただカフェインを摂取するよりもコーヒーでカフェインを摂取したほうがトレーニングのパフォーマンスが向上することが示唆されました。この理由をリチャードソンらはこのように説明しています。

カフェインは錠剤やカプセルで摂取するよりも、液体で摂取することによって、口内からの吸収率が高くなります。この吸収率の向上から、コーヒーによるカフェインの摂取は錠剤などで摂取するよりもトレーニングのパフォーマンスを向上させる述べています。

また、コーヒーに含まれるポリフェノールやフラボノイドには抗酸化作用があります。ポリフェノールを摂取することにより、運動による酸化を防ぎ、パフォーマンスを向上させることが報告されています。このようなポリフェノールなどの抗酸化作用がカフェインの効果と相乗して筋トレのパフォーマンスを向上させたと推察しています。

これらの研究結果から、 コーヒーの摂取は「カフェインの吸収効率を高め、ポリフェノールなどの成分と合わさることによって筋トレのパフォーマンスを高める」と考えられているのです。

コーヒーを飲む最適な量とタイミング

では、いつ、どのくらいのコーヒーを飲むと筋トレのパフォーマンスが向上するのでしょうか?

リチャードソンらの研究では、トレーニングの1時間前に体重1kgあたり5mgのカフェインを摂取しています。これは体重60kgだと300mgのカフェインに相当します。この量を摂取するためには、約500mlのコーヒーを飲まなければなりません。これはスターバックスのグランデサイズ(480ml)と同等です。

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Photo by iStock

しかし、さすがに500mlは多いです。これに対してリチャードソンらは、3mg/kgのカフェインでも運動パフォーマンスが高まるという過去の報告から、筋トレにおいても3mg/kgのカフェインでもパフォーマンスを向上させる可能性があると述べています。このカフェインの量であれば、トールサイズ(350ml)のコーヒーでも効果が期待できます。

注意点は、筋トレのパフォーマンスを高めようとして多量のコーヒーを飲んでしまうことです。多量のコーヒーを飲むと、含まれるカフェインを多量に摂取することになります。多量のカフェインは、血管の収縮を誘発し、血圧を高くしてしまいます。また、体重1kgあたり9mg以上の高用量でカフェインを摂取すると不眠の副作用が顕著になることが報告されています。このような副作用を招かないためにも、筋トレ前にはトールサイズ程度のコーヒーにとどめておくのが良いでしょう。

コーヒーの摂取は、筋トレのパフォーマンスだけでなく、カテコールアミンの分泌量の増加による集中力や気分を高める効果もあります。

筋トレの前には、カフェでゆっくりコーヒーを飲んでからジムに向かってみましょう。集中力が高まり、筋力も増強することによって最高のトレーニング・パフォーマンスが得られるはずです。

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