日本企業はバカか...! いまこそ「終身雇用」が大切である決定的理由

日本企業はバカか...! いまこそ「終身雇用」が大切である決定的理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/20
No image

終身雇用はもちろん大事だ

1月25日の記事「バフェットが実践する『実力主義の終身雇用』こそが企業を再生する」で述べた様に、投資の神様・ウォーレン・バフェットは、企業の財産・資産の最も重要な構成要素の一つである「従業員」を終身雇用することに誇りを持っている。

バークシャーグループの企業において、「他社から引き抜いたことはなく、引き抜かれたのは1例だけである」と、有名な「バフェットからの手紙」で誇らしげに述べている。

マネジメントの神様であるピーター・ドラッカーも同じ考えで、「多くの費用と時間と労力をかけて育て上げてきた社員を、自ら進んで手放すなど愚かなことだ」と看破している。

ドラッカーが指摘する、我々が迎えつつある「知識社会」では、「知識を持った社員」をどのように企業にひきつけることができるかがマネジメントの役割であることは、7月11日の記事「人工知能時代に生き残るのは、意外と『こんな上司』だった」で述べた。

したがって、このところ経団連会長やトヨタ自動車の豊田章夫氏など日本経済をリードする人々が、終身雇用に後ろ向きな発言を繰り返していることには危機感を感じる。

企業と従業員の間の「信頼」が重要

なぜ終身雇用が大事なのか?それは企業と従業員の間の「信頼」が重要だからである。

例えば、一生面倒を見てくれると思う企業に対しては、数十年先もその企業が繁栄するよう考えて行動する。しかし、明日首を切られるかもしれない、あるいはチャンスがあったらささっさと「おさらば」しようと従業員が考えている企業は、彼らが在職している間だけ存在していればよいということになる。

終身雇用の従業員がリスクを犯して機密情報を他社に売ることは考えにくいが、会社都合でリストラされた人々が、機密情報を手土産に転職しても不思議ではない。

10月20日の記事「『責任をとる』こそがドラッカーが指摘する現代組織のリーダーの要件」で、「石原裕次郎率いる石原軍団が『太陽にほえろ』で活躍できたのは、メンバーのボスへの信頼が厚かったからだ」という話をしたが、企業にも同じことが求められる。

会社全体の業績が悪くなる最大の責任はもちろん経営者にあり、その次は経営幹部だ。個々の一般従業員が会社全体の業績に与える影響は一番最後であるはずだ。

もちろん、会社の経営において一般従業員が重要ではないということではな無く、むしろその逆だ。最前線で働く従業員の頑張りがあるからこそ会社が繁栄する。しかし「経営責任」は別問題だ。

最大の責任がある経営者が居座って、従業員だけに責を負わせるパナソニックの「中村改革」なるものは許しがたい行為であったと思う(8月6日の記事「従業員の不信を引きずったパナソニックに復活はあるのか?」参照)。

そのようなひどい事例は別にしても、バフェットが実践し、ドラッカーも推奨する「経営者と従業員の絆を強め、企業を発展させる終身雇用」をなぜ、日本企業の多くが放棄しようとしているのか?

もちろん、短期利益を追求する世の中の流れに抗えず、リストラで目先の業績の見栄えをよくするという側面がある。

しかしそれ以上に日本のこれまでの終身雇用は「年功序列」とセットで考えられ、その2つは切り離せないと誤解されているのが最大の原因ではないだろうか。

もちろん、「年功序列」と「終身雇用」はまったくの別物だ。バフェットが「終身雇用の実力主義」を半世紀以上にわたって傘下企業で実践し、世界有数の企業帝国を築いたことがその証明である。

バフェットは終身雇用の実力主義

成果を上げる前に報酬を与えるのは、子供にゲームを買ってあげてから勉強しなさいと言うのと同じである。ゲームに夢中になって勉強しなくなる。順番が逆なのだ。

だからバフェットは終身雇用(しかも定年は104歳。詳しくは前述の「バフェットが実践する『実力主義の終身雇用』こそが企業を再生する」を参照)を実行しているが、「徹底した実力主義」でもあるのだ。

バークシャーグループの報酬(給与)の決定方式は極めて単純だ。バークシャー傘下の企業の経営陣は、毎年バフェットに対して経営計画書を提出し、その目標をクリアーしたらいくら、目標を超えたらさらに超えるごとにいくらというように、あらかじめ算定式で報酬が決められている。

つまり、彼らは仕事を始める前に、「自分がどれだけの成果を出したらどれだけ金銭的に報われるか」ということがすべてわかっている。傘下企業の従業員に対しても同じような方針で給与が決まる。

大事なのは「最初に報酬の基準を決める」ということである。そうすれば「自分が努力してもその成果がきちんと報われないかもしれない」という心配を排除し、「成果を上げなくても、社内の政治力でがっぽり報酬をいただく」というような動きを封じ込めることができる。

しかし、日本企業だけではなく欧米の企業でも、このように「明確に事前に」報酬決定を行っているところはあまりない。

事前に両者が納得したことであれば不満が出にくいが、後から報酬を決定するからそこに人間の「恣意性」が紛れ込み、対立を招き寄せることになる。

会社の業績と個人の成果は分ける

また、もう1つ重要なのは、「会社の業績と個人(チーム)の評価は分ける」ということである。

例えば、会社全体は赤字に沈んだ年があったとしよう。普通の会社では、「業績が悪化したから」と言って、全従業員の報酬水準を下げることが多いが、バフェットは絶対にそれを行わない。

成果を上げた部門、部署、個人に対しては事前に約束した成果報酬を必ず満額支払うのがバフェット流である。会社全体の経営に責任を負うのが経営者の存在意義であり、それを従業員に押し付けるのは、「経営責任の放棄」にも等しい。

バフェットが好きな野球に例えれば、「打率が4割近くあり、べーブルースを軽く超える数のホームランを打ってチームに貢献した4番バッターの報酬を、チーム全体の成績が悪いからと言って削る」のに等しい行為である。

もちろん、チーム全体の不振は監督やフロントの責任であって、活躍している選手に押し付けるべきではない。

大事なのは「終身雇用」を維持しようとすれば徹底的な「実力主義」を導入しなければならないということである。

いくら成果を上げても、会社の業績が悪いからと言って十分な報酬をもらえなければ優秀な人物からその会社を去っていくことになる。

終身雇用と年功序列を組み合わせている日本企業が、終身雇用を維持できなくなってきているのも当然である。

ストックオプションは株主の財布に手を突っ込む行為

とても残念なことに、世の中の経営者のほとんどは「事前に報酬を決めて、成果に応じて受け取る」方式を採用していない。

自身の経営手腕に自信があれば「私はこれこれの成果を上げるから、もし実現したらこれだけの報酬が欲しい」と、正々堂々と宣言し株主の承認を得ればよいだけのことである。

ところが、例えば日産自動車のゴーン氏のように自分の収入が分不相応だと思う人間はごまかそうとする。株主から「不当に報酬が高い」と言われると思うから、悪知恵の限りを尽くして小細工するのだ。

特にストックオプションについてバフェットは、「株主の懐の財布に手を突っ込む行為」=「泥棒」であるとして厳しく非難し、米国で大論争になったことがある。

バフェットがそこまで非難する理由を、極めて簡単に述べれば、

1. 株主(投資家)が株式を購入するときには必ず代金を支払うのに、その会社の役員や従業員であるという理由だけで株式(ストックオプション)をただでもらうのはおかしい。
2. 株価と業績が必ずしも連動するわけではない。バブルなどで、その会社の業績が悪いのにも関わらず、株価が急騰した時に、1円も出資せずに役員や従業員が儲けるのはおかしい
3. ストックオプションを設定すると、目先の決算を良くして株価を上げようとする強い動機が生じ、設備投資や従業員の教育投資などを後回しにして今期限りの利益を上げ、会社の将来を危うくする。
4. 実際には、ストックオプションの費用は、経営者や従業員に対するボーナスと同じように、株主の負担(会社の利益から差し引かれる)であるのにその事実が会計上明示されていない。

4については、バフェットが厳しく糾弾したために、米国では決算書に表記されることが多くなった。しかし、そのような手間をかけなくても、目標と報酬金額を株主に明示し現金でボーナスを受け取ればよいだけの話である。

ストックオプションがいまだに流行している現実を見ると、経営者たちさえ「実力主義」から無縁であり、ましてや一般従業員への「実力主義」の導入など夢でしかないとも感じる……。

しかし、少なくともバフェットは「終身雇用の実力主義」をやり遂げているのだ。日本企業の経営者たちの奮起を期待したい。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
【報ステ】業績低迷の大塚家具 ヤマダ電機子会社に
悪い意味でとてもヤバい。SNSに読解力を奪われた日本の若者たち
グローバル3倍3分法ファンドが残高5000億円突破、1兆円ファンドの道程に迫る
【報ステ】新型宇宙船『スターライナー』公開
JDI、いちごから最大900億円の支援〜Appleからも200億円以上調達
  • このエントリーをはてなブックマークに追加