南海トラフ地震を想定した防災 強い構造の堤防や高さ13メートルの防潮堤

南海トラフ地震を想定した防災 強い構造の堤防や高さ13メートルの防潮堤

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  • 更新日:2017/11/20

東海地震の予知情報にもとづく防災から、マグニチュード8を超す巨大地震、南海トラフ地震の震源域全体を見据えた新たな防災に向けて、国や関係自治体は11月から暫定的に取り組みをスタートさせた。国は静岡県などをモデル地区に指定し、自治体レベルでの防災対応についても新たな取り組みを図っていくようだ。その静岡県ではすでに南海トラフ地震に備えた堤防や防潮堤の建設が進んでいる。

駿河湾、遠州灘沿岸で進む津波対策

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駿河湾沿岸で進められている堤防の改良工事と盛り土の整備=静岡県焼津市一色

静岡県焼津市一色地区から大井川に至る約5キロの駿河湾海岸で今、堤防を粘り強い構造に改良する工事が進んでいる。堤防は現状でも海抜から6.2mまであり、東海地震を想定したL1クラスの津波に備えた高さになっている。

しかし、新たな工事により、波によって倒壊しない粘り強い構造の堤防に改良するという。その背景には、2011年3月に発生した東日本大震災の際、堤防を越えた波によって周辺の土が削られて堤防が崩壊し、津波で押し寄せた海水すべてを域内に流入させてしまった教訓がある。

東北の被災地域では復興整備において、底部をコンクリで補強した強固な堤防が設置されてきたが、焼津市河川課によると、東北の被災地以外で同様の構造の堤防が設置されるのは初めてという。同海岸は国の直轄海岸となるため堤防補強工事は国土交通省によって行われている。

焼津市は南海トラフ地震を想定し堤防に併設する形で堤防よりさらに2メートル高い盛り土を堤防補強工事と並行して進めている。同様の工事は大井川を越えた吉田町でも行われており、国と市、町が連携して整備を進めている。

一方、静岡県の遠州灘海岸では、浜松市が沿岸の約17.5キロメートルにわたり高さ13メートルの防潮堤を整備している。平成31年度の完成を目指しており、整備されれば南海トラフ地震の津波により想定される宅地の浸水被害が約7割減り、宅地のうち浸水の深さが2メートル以上になる面積は97%低減するという。

浜松市の防潮堤は、整備費用として企業が約300億円を拠出して行われており、民間の力が大きく貢献している。焼津市から吉田町にいたる沿岸、そして浜松市の遠州灘沿岸で、それぞれ南海トラフ地震の津波に備えた整備が進んでおり、その間に位置する御前崎市と牧之原市においても現在、整備に向けた検討が行われている。

予知防災の変更に地元自治体は?

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堤防改良工事と盛り土整備の図=焼津市河川課提供

国は東海地震の予知を前提とした防災を見直し、南海トラフ地震の震源域全体を見据えた新たな対応を図ることを決め、11月から暫定的に取り組みをスタートさせた。

10月末には関係自治体の担当者を集めて名古屋市内で説明会を行い、内閣府や気象庁などの担当者が「南海トラフ地震に関連する情報」の発表について、そしてその際の政府対応について説明を行った。

これまでの大規模地震対策特別措置法にもとづく東海地震対応では、気象庁が定例の判定会の結果を定例として発表していたほか、観測データに異常が見られた場合には臨時情報を、東海地震の前兆の可能性が高いと判定された場合には注意情報、東海地震が発生するおそれがあると判定された場合には内閣総理大臣が警戒宣言を出して予知情報を発表する仕組みとなっていた。

今年11月からは、新たな防災対応が定められるまでの間の暫定的な措置として、発生した地震や現象が南海トラフ沿いの大規模な地震と関連するのかどうか調査を開始した時、そして南海トラフ沿いの大規模な地震発生の可能性が平常時に比べ相対的に高まったと評価された時はそれぞれ臨時情報が発表され、また、地震発生が相対的に高まった状態でなくなったと評価された時もその情報を気象庁が発表するという。

判定は、東海地震の判定会メンバーと同じメンバーで構成する「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」が行う。南海トラフ地震は一過性の地震ではなく、局地的な地震発生からマグニチュード8を超す巨大地震へと連鎖的につながっていく恐れがあることから、仮に検討会が南海トラフ地震発生の可能性が高まったと評価した場合、どのような対応を図るべきなのか、巨大地震が直近に迫っていると認識すべきなのかどうか、今のところ情報の判断の基準は明確でない。

従来の予知にもとづく対応の場合、首相が警戒宣言を出し予知情報が出ることで交通規制など地域社会全体にかかわる規制や対応が図られる仕組みになっていた。

11月以降の対応については、静岡県などをモデル地区に地域社会での対応について国、自治体で検討を進めていくようだが、現在のところ静岡県としては、調査開始の情報が出た場合は情報収集体制をとる、南海トラフ地震の発生の可能性が高まったとの情報が出た場合は県民への呼びかけや防災上必要な施設等の点検、災害応急対策の確認等の対応、または状況に応じて東海地震注意情報発表時に準じた対応を行うとしている程度だ。

静岡県は東海地震に備えて長年、国の予知情報を前提とした防災体制を構築してきたわけだが、国の防災対策の見直しに戸惑いはないのだろうか? 県危機政策課長の滝田和明氏は「東日本大震災の発生以降、県は突発型の巨大地震の可能性、想定外の津波の可能性を含めて対策を施してきました。予知情報がなくなっても県の防災対策に根本的に大きな影響を及ぼすものではありません」と説明する。

静岡県では2013年に地震・津波対策アクションプログラム2013 を策定、南海トラフ地震を想定した対策に乗り出しており、浜松市沿岸の防潮堤や焼津市沿岸の整備も県方針にもとづき地元自治体が進めている。

予知を前提とした東海地震中心の防災から南海トラフ地震の震源域全体を見据えた防災へ国が見直しを図る中、静岡県内では南海トラフ地震を想定した取り組みが先行して進んでいるといえる。

しかし、施設等の整備と合わせて情報が混乱することなく伝わり、速やかに避難等の行動に移れる態勢作りも防災対策の重要な要素だ。暫定的とはいえ、評価検討会による臨時情報が発出された場合、どのような行動をとるべきなのか、住民レベルまで含めて対応を検討することが求められる。

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