イオンが不振にあえぐ中、「業務スーパー」に客が殺到する理由

イオンが不振にあえぐ中、「業務スーパー」に客が殺到する理由

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  • 更新日:2018/09/20
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ユニークな品揃えと安さが魅力で、SNSなどでも話題を独占しているスーパーマーケット・チェーン「業務スーパー」。近年、スーパーマーケット業界の不振や閉店が社会問題にもなっていますが、その中で「業務スーパー」は飛ぶ鳥を落とす勢いで店舗数を拡大し業績を大きく伸ばしています。この人気は一体どこから来ているのでしょうか? フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんが、同店に直接足を運んで取材を重ね、その魅力を徹底分析しています。

「業務スーパー」は、「毎日がお買い得(EDLP=エブリデイ・ロー・プライス)」をコンセプトに躍進中のスーパーマーケット・チェーン。プロの品質の商品を、格安のベストプライスで提供することをモットーとしている。

特筆すべきは、「クックパッド」のようなレシピ投稿サイトに、業務スーパーで購入した食材を使って考案した創作料理が毎日のように投稿されて、人気を博していることだ。業務スーパー店舗の外観、レイアウトは極めてシンプルだが、消費者の料理創作意欲をかき立てる特別な魅力を持つ商品構成であり、宝探しのような面白さがあるのだ。

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経営する神戸物産の2017年10月期の年商は連結で2515億300万円(前年同期比5.1%増)、経常利益157億7800万円(同80.8%増)と過去最高を更新。5年前の12年10月期では年商約1574億円だったので1.6倍にスケールアップした。当時の経常利益は約47億円だったので、利益も順調に増えている。

18年10月期も第3四半期(17年11月~18年7月)までで、業務スーパーの店舗数は809店となった。純増で29店舗増(出店34、退店5)と好調を持続。業務スーパー事業の累計期間の売上高1753億1500万円(同8.6%増)と成長している。

日本チェーンストア協会の統計によれば、スーパーマーケットの市場規模は、1997年度(97年4月~98年3月)の約16兆8600億円をピークに縮小を続けており、2017年度(17年4月~18年3月)には約12兆9000億円にまで落ち込んでいる。

大手スーパーのイオン、イトーヨーカ堂、ユニー、西友などが伸び悩む中、業務スーパーはスーパー界のユニクロとも言うべき製販一体のビジネスモデルを構築して、例外的な急成長を遂げている。つまり、充実した自社工場、協力工場の商品に特徴がある。人件費、原材料費の安い海外拠点が充実し、商社や卸を経由すればかかる中間マージンを省いているので、安価で販売できるのだ。

しかも、FC(フランチャイズ)システムを活用して、店舗を急拡大させているのも、どの企業も直営ばかりであるスーパー業界では類を見ない。つまり、規格外のチェーンである。年間を通じて品揃えされたユニークな激安商品を、EDLPで販売している。

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地域最安値や超目玉商品も

EDLPとは特売を行わない商法で、チラシ、TVCMなどの広告宣伝費を削減。消費者が感じる、特売日に行けなかった不公平感を解消するとともに、日々の販売動向の分析から需要予測が立ちやすくなり、合理的な受注が可能となる。アメリカの世界最大の小売業ウォルマート(西友の親会社)、日本ではOKストアの取る戦略としても知られる。

【関連記事】●イオンも逃げ出す「OKストア」の半端ない集客力

もともと小さな地方ローカルスーパー、屋号の由来は?

神戸物産は1981年の創業。当初は兵庫県加古川市でローカルなごく一般的な食品スーパー「フレッシュ石守」を営業していた。

しかし、現在の沼田博和社長の父である創業者の沼田昭二氏は、同じ商品を扱っても大手スーパーにはボリュームや価格で勝つことはできないと考え、食品製造業への進出を決意。92年に中国の大連に工場を設立し、製造した梅干、わさびなどの日本の食材を、商社として欧米の大手企業に輸出するビジネスを展開し始め、軌道に乗った。

中国での貿易ビジネスを通じて、欧米の進んだ流通企業が実践する、FCや製販一体の製造小売りのノウハウを学んだ。後発のスーパーでも大手に勝てる新しい成長モデルができると思い立ち、2000年「業務スーパー1号店」を兵庫県三木市にオープンした。

屋号「業務スーパー」の由来は同社・広報によれば、単純ながらインパクトがあり、安さも伝わりやすいからとのことだ。

業務スーパーという名前のとおり、飲食のプロ向けに卸値で格安販売するホールセールの店だが、一般消費者も利用できる。というよりも、一般消費者に人気の火が付いており、顧客の8~9割を占めている。顧客単価は概ね1000円前後となっている。

顧客の年齢層は、以前は年配者が多かったが、面白い商品、珍しい商品が多いと、SNS、YouTubeのような動画サイト、TV番組などで取り上げられる機会が増え、若い主婦、学生も増えている。

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冷凍食品は思わず買ってしまう安さが魅力

立地は、車で買いに来てもらうのを前提に郊外ロードサイドに出店していたが、近年は住宅街や商店街の中の駐車場がない店舗も多くなってきた。店舗面積120坪以上、売場面積100坪以上の広さで店づくりを行っており、生鮮品などを扱う場合には、坪数がオンされる。

商品構成比は、売上で見ると、温度帯別で常温6割、冷蔵2割、冷凍2割。PB(プライベートブランド)とNB(ナショナルブランド)の比率は3:7である。

メイン商品を常温、冷凍にし、生鮮、日配品に頼らない戦略で廃棄ロスを削減。ローコスト・オペレーションを実現している。

「宝探し」にも似た、ユニークな商品発見の楽しみ

業務スーパーの魅力はなんといっても、他の店では買えないユニークな品揃えだ。

「世界の本物を直輸入」をコンセプトに、約40ヶ国からその国の本場の商品を直輸入している。他社の輸入専門食品店よりも圧倒的に安く、被る商品ラインナップも少ない。

また、同社は自社工場を有しているため、チャレンジングな商品開発が可能だ。

例えば、牛乳パックに入った水ようかんや、豆腐パックに入った冷凍チーズケーキなどは、おそらく外部のメーカーに依頼しても断られると思うのです。常識では考えられないような発想と、安価な食品ということで近隣のお客様、ネットユーザーが体感しやすいことが、受けているのではないでしょうか(同社・広報)

牛乳パックのデザート、豆腐パックの冷凍ケーキなどは、安売りするにはこういう手があったのかと目からウロコの業務スーパーを象徴する商品である。製造ラインから見直して、豆腐がつくれるならチーズケーキはできないかと、柔軟に発想しなければ絶対に生み出せない。

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ユニークな牛乳パック入りスイーツ。裏にはアレンジ用にレシピの一例も載せている

牛乳パックに入ったスイーツは、水ようかんの他にもプリン、杏仁豆腐など種類も豊富で、SNSにレシピを投稿する人も、アレンジして見栄えが格段にアップした自作デザートとの対比を、強いインパクトで示すことができる。

他に、売れ筋の人気商品は輸入物ならば、ブラジル産鶏もも正肉、カットトマト缶、ホールトマト缶、スパゲッティ各種、ベルギー産フライドポテトなど。自社グループの商品ならば、徳用ウィンナー、天然酵母食パン、冷凍讃岐うどんなどがある。

特に、冷凍讃岐うどんは5食入りが税別147円で販売。破格に安いだけでなくコシのあるうどんで、ゆで時間も短くて料理の時短にもなる、ロングセラー商品である。

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人気のロングセラー商品、冷凍「讃岐うどん」

また、吉備高原どり、上州高原どりは、自社グループ会社にて飼育から加工処理まで一元管理され、鮮度に自信のある安全・安心な商品とのこと。工場近隣の地域では、加工後24時間以内に店頭に並ぶ新鮮さも売りとなっている。

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上州高原どりの特設コーナー

現在、同社は中国に2ヶ所の工場を持ち、ジャム、漬物、煮豆などを生産している。海外では中国以外に自社工場を持つことはあまり考えていないが、約40ヶ国に協力工場を散らしているのは、カントリーリスクを回避するためでもある。2008年の年初に発生した中国毒入り餃子事件は、「業務スーパー」にも多大な影響を及ぼした。以来、中国の生産拠点に依存する体制を改めて、さまざまな国を開発するようになった。

自社内の厳しい検査体制に関しては、適時ホームページなどで情報開示してきた効果もあり、14年のマクドナルド中国産鶏肉使用期限切れ事件の後では、ほとんど影響が出なかった。

海外直輸入アイテム数は約1200。そのうちアジア74%、ヨーロッパその他22%、アメリカ・南米4%となっている。

M&Aにより国内の自社工場も増えて力を付けつつある。現状は18社21工場で、200アイテムを生産しているが、さらに強化していく方針だ。

ほとんどが「FC店」、外食分野にも進出

業務スーパーの店舗は、直営が2店のみで残りはFC店である。出店の費用はFC加盟店の負担となるため、直営店では考えられないスピードで出店を重ねることができる。自社で製造、輸入している商品のオリジナリティの高さ、徹底したローコスト・オペレーションも、FCオーナーの増加につながっている。神戸物産は商品の製造・卸とFC店の監督及び指導を行っている。

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FCオーナーは全国で約100社。業種はホームセンター、酒屋、ドラッグストア、物流会社などさまざまである。基本フォーマットでは生鮮品を扱わず、賞味期限の長い常温・冷凍の商品が多いので、スーパー経営の経験がなくても商売が始めやすいシステムが構築されている。

FCの加盟条件は地域により異なるが、関東の首都圏1都3県、関西(淡路島を除く)などで、加盟料216万円(税込)、保証金1000万円、ロイヤリティが仕入れの1%、発注システム使用料が月額3万857円(税込)となっている。保証金は結構取るが、ロイヤリティが低く、ランニングコストが抑制されている。設備費は、店舗物件により変わるが2000~2900万円が目安である。

ホールセールということでアメリカから上陸した「コストコ」ともよく比較されるが、業務スーパーは「コストコ」のように会員にならなくてもよく、店舗の大きさも一般の食品スーパー並みで、巨大な店ではない。広域から集客するのではなく地域密着型である点も異なり、同社では全く違う業態と考えている。

2013年に居酒屋「村さ来」、回転寿司「平禄寿司」などを経営する、外食企業ジー・コミュニケーション(本社・名古屋市北区)を傘下に収め、外食でも製販一体を目指している。

しかし「必ずしもそこにこだわらず、外食市場の動向やお客様のニーズを探りながら、魅力のあるメニューやサービスを提供したいと考えている」(同社・広報)とのこと。

外食に関してはジー・コミュニケーションのほうが経験も豊かなので、基本的な経営方針に口を挟まず、任せているそうだ。

さらなる発展に死角はなさそうだが、「現在のところ、物流やIT活用に特筆すべきことはない」(同社・広報)らしい。逆に言うと、ここを強化すればさらに効率的な経営ができるはずで、利益率が高まる余地を残していると言えるだろう。

photo by: 長浜淳之介

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