「卵子凍結」したけど結婚願望ない35歳キャリアウーマンの黄昏

「卵子凍結」したけど結婚願望ない35歳キャリアウーマンの黄昏

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/02/20
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元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第10試合「独身」対決のBサイド。

今回のヒロインは、35歳バリキャリOL。年齢的なリミットを考慮して「卵子凍結」したものの……。

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働く女が人生について立ち止まって考える時

個人主義の時代の、しかも庶民の場合、誰かにプロポーズされた時に首を縦に振るか横に振るかの大部分が、その人への愛情や興味によって決まると考えられるが、それとは別に結婚というもの自体への「したい」「したくない」がもちろん存在する。

そしてそれもまた「したい」「したくない」の白黒の間に、「今はしたくない」「まだしたくない」「よくわからない」「したいけど勇気がない」などのグレーの部分が幅広く横たわる。

10代はもちろん、20代半ば以前であると、むしろほとんどの女性がこのグレーの部分にいて、ものすごく愛に燃えているとか妊娠したとか、強い動機付けでもない限り、突然のプロポーズには戸惑い、すぐには答えが出せなかったり、思い悩んだ末に「あなたのことが嫌いなわけじゃないけど」と歯切れ悪く断ったりする。

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ただ、30代になると女の生殖器官の特性も手伝って、グレーは白側にどんどん傾き、「そろそろしたい」「いい加減したい」と白の厚みが増してくる、というのがごく一般的な場合である。ただ、別に29歳と30歳で性格が全く変わるなんていうことはありえなくて、30歳の誕生日に自分の年齢の響きに慄き急に意識が変わるものもいれば、まだまだ他のことに興味があり、30歳の響きに気づかない人もいる。

年齢の前後はあれ、働く女がふと人生について考えるタイミングというのは遅かれ早かれ突然やってくるものらしい。そしてそのタイミングが遅ければ遅いほど、もちろん人生の選択肢は知らぬ間に狭まっている。

彼女が初めて真剣に女としての人生について立ち止まって考えなくては、と意識したのは昨年のことで、今年、彼女は36歳になる。

「去年のお正月に、酉年っていうのに気づいて、ということは干支を口ずさんだら私今年が年女っていうことになるな、と思って。あー、24歳の時におじいちゃんの商工会の豆まきで豆撒いたのってもうそんな前か、とか一瞬呑気な思い出に浸って、ん? てことは、次は36?ってなって急に焦った。その時は誕生日前だから34歳だったんだけど、もう今妊娠しても高齢出産かよ!って衝撃」

彼女のキャリアは結構華々しい。出身こそ地方の公立高校だが、大学在学中にカナダに1年間留学、そのため同級生から1年遅らせて卒業したのち、大手広告代理店にさらっと就職した。

当初、営業畑に配属されて思うような仕事ができず、またパワハラ上等な上司とぶつかり合うなどトラブルはあったものの、彼女のことを入社当時から目をつけていた良心的な上司も数多くいたせいか、特例的な異動ができ、希望通りマーケティング関連の部署でメキメキ良い仕事をした。

結果的に恋愛をおろそかにするしかない

給料は申し分なく、オーバーワーク気味とはいえやりがいと楽しさのある仕事は、多少の睡眠不足やストレスを吹っ飛ばす程度には入れ込む価値があった。職業柄、出会う人の数も多く、また目に見えて結果がわかるような仕事、名前が残るような仕事も増える一方、潤沢な資金と立場上、見た目に気をぬくこともなく、仕事バリバリ・美人でおしゃれと、当然が如く両立してきた。

普通以上に満足のいきそうなキャリア人生ではあるものの、もともと起業家精神とクリエイティビティに溢れた若干暑苦しい性格の彼女は、「一生同じ会社で働く気は全然ない」と、仕事以外の活動も精力的に進めた。ソムリエ、調理師、フードコーディネート、野菜ソムリエ、栄養関連などなど、特に食品関係の勉強は惜しまず、教室に通ったり本を読んだりしながらいくつか資格もとった。

「今いる企業は、っていうか日本のそこそこ古い大企業は基本は男がやってるものだから、女の役員がいようが女の新入社員が大量に入ろうが、それは変わらないと思う。実際仕事してると、男のが向いてるな、とか思うし、優秀な男の人もまぁまぁいるし、男が働きやすい体制なんて何十年とかかけてもそう変わらないだろうし。

だから、女じゃないと魅力が出せない仕事やりたいなと思ってて、アートと料理とか、セラピーと料理とか、ファッションと料理とか、恋愛と料理とか、そういうの組み合わせた起業はずっと考えてた。本当は30歳めどに独立、とか若い頃は考えてたけど、卒業も1年遅れてたし、それなりに仕事楽しくて遅れてるけど」。

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ネット企業に勤める友人と組んで起業する計画はそれなりに現実味を帯びてきて、仕事が休みの日や早上がりが出来た時はミーティングをしたり、スタートアップのセミナーなどにも出席するようになった。当然、仕事は仕事で入社から特に産休も大きな病気もなく10年以上働き続けてきた彼女のポジションは、女とはいえ結構重い。

「学生時代の彼氏と結構長かったし、そのあと付き合った二人も両方3年とかは付き合ってたし、だからおろそかにしてる、とかそういうつもりなかったけど、結局、仕事・遊び・起業って時間埋めてってたから、結果的に恋愛はおろそかにしてたんだろうね。だってそこしか削るとこないじゃん」

美容に気を抜かず、仕事の手を抜かず、さらに人以上のことをしようとする彼女は、たまたまタイミングが合って出来た彼氏などはいたし、そもそも結構モテる方ではあったが、というかだからこそ、自分から積極的に出会いや結婚を考えることはしなかった。

女の身体って社会性ない

「恋愛が嫌いとかじゃないし、男いらないとか割り切ってないし、子供作らない、みたいな生き方に決めたつもりもサラサラないけど、どのタイミングでみんな仕事とかちょっと抑えて結婚とかに熱意を出し始めてたの?っていう感じだよ。気づいたら、別に結婚する相手もない、結婚願望もイマイチ育ってない、周りの女友達どころか、男友達すら結婚しちゃってる、ってほんと取り残された」。

結婚願望は相変わらず子宮の奥に眠ったままだが、別に結婚がしたくないわけでも、子供なんかいらないと決めているわけでもない。単に、まだそれについて真剣に考えるのは後にしたい、というのが本音らしい。

そんな彼女も別になんの知識も焦燥感もないかといえば別で、高齢出産の年齢となってようやく何かしらの行動を起こそうと、昨年、独身でもできるプログラムがある医院で、卵子の凍結をしてみた。そもそも不妊治療を手がけるクリニックは、結婚して妊娠を望んでいる人にのみ門戸を開いている場合も多く、なるべく費用を抑える、といった選択肢はそもそも彼女になかった。

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初期費用が20万円ほど、数回の採卵とその保存費用などで、合計すると150万円程度かかった上に、毎年保存費用は別途一つの採卵につき数万円かかる。彼女に支払えない額ではなかったが、何より、仕事をしながらやるには何度も通院する凍結は手間がかかった。かけた時間と費用は「念のためのお守り」と考えていた当初のノリでは勿体無いものである。

「しかも、そんなに意味ないっていう人も多いじゃん、たかだかタマゴ数個残しといったって、体外受精うまくいくかなんてわかんないんだし、てゆうかそもそも受精ってなったら相手いないと出来ないしね。

自然妊娠ならシングルマザーでもできるけど、この歳で、自然妊娠結構難しくない?会社入って、落ち着くまで仕事に集中してたら30代になってるし、そこから本当にやりたい仕事見つけてそのための努力してたら35歳なんてすぐじゃない?

ほんと、女の身体って社会性なくない? 色々仕事するのに向いてない。どうせなら、高校生とか暇な時に子供産む方がいい気がする」

結婚をしない決断も子供を産まない決断もしない彼女は、とりあえず卵子凍結によって決断時期に若干の猶予をもたせたつもりではあるものの、特に結婚や出産については、まだまだ現実味を持って考えてはいない。

そもそも30歳ごろ企業してなんとか35歳ごろに出産、と考えていたのは20代前半の話で、なんの決断もしないうちに、色々と取り上げられた気分になるのは、やっぱりそもそも大学進学や企業就職のタイミングとシステムが、女の身体に見合ってないからなのかも、とちょっと思う。

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