独身中年男性がガンコに住み続ける「板橋区大山」ってどんな街?――飲食店が充実、程よい田舎感が落ち着く

独身中年男性がガンコに住み続ける「板橋区大山」ってどんな街?――飲食店が充実、程よい田舎感が落ち着く

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2018/02/15
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飲食店やパチンコ屋の他にもドラッグストアや100ショップが目立ち、交流都市のアンテナショップも人気

東武東上線で池袋から6分ほどのところに位置する板橋区・大山。「長年に渡って住み続けている人がとても多く、若い人の中にも大山の中で何度も引っ越すという住民は多いですね」と語るのは、在住歴10年の佐藤啓太さん(仮名・40歳・独身・彼女いない歴9年)だ。

なぜ大山には独身男性が多く住むのか。

大山と聞くとたびたびメディアで取り上げられる活気溢れる商店街や、手頃な家賃相場・物価の安さなどを思い浮かべる人も多いかもしれないが、全国的な知名度はそれほど高くない。

住めば都とはいえ、根強い“リピーター”人気を誇っている大山のコスパの実力、オトコが一度住んだら頑固に住み続けたくなる理由とはどのようなものなのか。実際に大山に住む男性たちの言い分を紹介していこう。

◆独身男性の新参者でも馴染みのお店ができやすい

大山を語る上で欠かせないのが2つの巨大商店街。山手通りから旧川越街道を入った地点から始まる直線550メートルの遊座大山商店街と、大山駅から川越街道まで560メートルの巨大アーケード街ハッピーロード大山には、個人商店やナショナルチェーンが軒を連ねる。

赤羽「いこい」から派生した立ち飲み屋「晩杯屋」大山店は、2フロアで2階席に椅子付きのテーブル席ある大箱。また、野方「秋元屋」系のやきとんの「ひなた」は、300円代で高級メニューの部類に入る価格帯で、同系列で魚料理を中心に出す「魚猫」などと併せ、いつも地元客たちで賑わっている。

富士そばや吉野家などのちょい呑み業態が、大山でいち早く導入されていることからも飲んべえにとっていかに重要な街かがわかるが、大山随一の人気店でモツが有名な「鏑屋」、「しゃぶ亭 福家」など老舗もそうした店に匹敵する価格を実現している。

◆バングラデシュより物価が安い!?

こうした飲食店の充実ぶり、安さの秘密のひとつは地価の安さにあるようだ。アメ横や高円寺商店街と比べると、ハッピーロード商店街の土地価格は2分の1から3分の1。比較的安いとされる戸越銀座でも大山の1.5倍高い(※)。

『これでいいのか東京都板橋区』(荒井禎雄著・マイクロマガジン社)には、今でこそコンビニや100円ショップなどナショナルチェーンも普通にあるが、「『フランチャイズや100円ショップは高すぎる』と客入りが悪く、出店してもすぐに撤退していった」、「松屋の朝定食よりも安くて盛り沢山の定食を出す店があちこちにある」、「バングラデシュ出身の飲食店の店主が『板橋区の方が物価が安くて住みやすい』と言ったくらい収入と物価のバランスが良い」という、嘘みたいなエピソードが数々掲載されている。

同書によればかつて大山の路地には、ぼったくり飲み屋や違法営業のちょんの間などがあったが、時代とともに経営ができなくなり、「空いたテナントにチャンスを求める料理人たちが入り、今では優良店がひしめき合うように」なったのだそうだ。

「大山でパチンコ屋と並んで多いのが焼肉屋。特に有名なのはSANKYUですね。A5肉が一皿1500円程度で味わえる。同じくヒデウシという高級肉を相場の半額くらいでバンバン出す神店もあったんですけど、流石にやりすぎたのか、潰れて最近韓国料理屋になっていました…。ほんと恐ろしい街ですよ」と語るのは、大山在住歴7年の伊賀祐太さん(30代前半・栃木県出身・独身・彼女いない歴7年)。

「安月給の僕が毎晩飲み歩いてもなんとか貯蓄できているのは、間違いなく物価が安いから。家賃安いのに大山には区役所も税務署もあるし、警察署もあるんで免許の更新もラク。最近、大山のバーで研修医という若い男性と飲みましたが、この辺は大きな病院も多いんで子育て世代とかも何かと便利なんじゃないでしょうか」

商店街の近くには都立豊島病院、日大医学部付属板橋病院、高齢者の医療に特化した東京都健康長寿医療センターなど、現代医学の最先端技術と病床数を誇るモンスター病院が林立。中小規模の一般病院やクリニックも多い。彼によれば大山で飲んでいると、看護師など医療関係者らしき人たちの飲み会に遭遇することはよくあることだそうだ。

◆上京組にうれしい丁度いい田舎感

一方で大山は治安が悪いといった評判もネットなどでは散見されるが――。

「昔はわからないけど、今はせいぜい酔っ払いがクダをまいている程度では? 僕は20代前半、浅草に4年くらい住んでいたことがあるんですけど、浅草の方がよっぽど武闘派というか、柄の悪い酔っ払いのおっちゃんが少なくなかった。大山の酔っ払いは素朴で親しみやすい。夜になると道に唾が吐かれまくっているのは萎えますが(笑)。浅草は歴史や誇りもあるし、どれくらい長く浅草に住んでいるかで、住民同士マウントとりあったりもしていたけど、その点、大山は僕のような地方出身者や新参者が馴染みやすい印象です」

地方出身の一人暮らし独身男性にとって、気軽に知り合いが増える街は大きな魅力だろう。

また、学生時代に分倍河原や調布など京王線に住み、4年前、転職を機に大山に引っ越してきたという広島出身の前田健太郎さん(仮名・29歳・独身・彼女いない歴10年)にも、同様に話を聞いてみた。

「行きつけのお店はつくりやすいし、引っ越してそういうお店を離れたくない気持ちは僕もあります。タイ料理とかカレー屋とか外国人が経営するお店もやけに多いし、彼らが地元住民として普通に溶け込めているくらいですからね(笑)。ガールズバーの女の子もいかにもな感じの、商売っ気のある子があんまいない。スナックなんかも家族で気軽に入れる雰囲気」

しかし、20代の独身男性には少し物足りないのでは?

「池袋や新宿みたいに本格的な歓楽街がある街は、あくまで遊びに行く街。大山に住むのは経済的な事情ももちろんあるけど、池袋に住むという発想自体、僕にはあんまないかも。終電近くになるとお店はほとんど閉まるし、朝5時まで飲めるお店もなくはないけど、実際に大山で朝まで飲んだことはない。これくらい田舎の方が僕は落ち着きます。オシャレ要素が皆無なのもいい。今更、引っ越して新しい街でいちいちお店とか道とか覚えるのも面倒くさい」

彼らの取材中、一人2千円で馬肉と酒をアホほど飲み食いさせてくれた「馬ヲムム」では、大勢の会社帰りの男性やカップルが酒と肴を味わい上機嫌で家路つく姿が見受けられた。住む街をコスパで選ぶなら一考の価値アリだ。<取材・文/伊藤綾>

※大山町24-3・68万4000円/戸越3-5-19・104万0000円/上野5-15-13・213万0000円/高円寺北2-6-2・184万8000円(東京都財務局・東京都基準地価格いずれも/㎡、平成29年)

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