【寄稿】北朝鮮、はかなく散った五輪外交の夢

【寄稿】北朝鮮、はかなく散った五輪外交の夢

  • WSJ日本版
  • 更新日:2018/02/14
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――筆者のウォルター・ラッセル・ミード氏はハドソン研究所フェローでバード大学教授(外交論)

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今年の冬季五輪で最も過酷なイベントは外交の「ランジ(突き)」であることが分かった。北朝鮮の冷酷な独裁者の妹、金与正氏は大会序盤に人気を集め、迎えた側を圧倒し、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に訪朝を要請して点数を稼いだ。メディアは完全にファンと化し、金氏に最高の宣伝の場を与えた。最後に同様の宣伝があったのは2011年、ボーグ誌がシリアのバッシャール・アサド大統領の夫人について、「最も新鮮かつ魅力的なファーストレディー(中略)訓練された分析的頭脳を持つ、手足の長いやせ型の美女」とはやした時だ。

対照的に、厳格なマイク・ペンス米副大統領は9日の開会式で金氏を避けただけでなく、南北「合同」チームが紹介された時に起立せず一部韓国人の怒りを買った。ドナルド・トランプ政権は北朝鮮の孤立化に励んできたが、金氏のほほえみ外交で米国と韓国の間に亀裂が走りつつあるのか。

その答えは、少なくとも今のところは、ノーだ。過去に北朝鮮が提案した交渉や交換条件に飛び乗った韓国大統領は、後で北朝鮮が実質的な譲歩をしなかった時に政治的な報いを受けた。賢明で用心深い文氏は餌に食いつかなかった。訪朝の誘いを受け入れる代わりに、米国との直接対話を金政権に促したのだ。

終了ブザーが鳴るまでに外交の金メダルを勝ち取ったのは文氏だった。一方の金氏は手ぶらで帰国した。文氏は金氏の訪韓と南北雪解けの兆しで政治的な評価を高めながら、世間知らずあるいは熱心すぎると見られて反発を受ける事態を避けた。また、韓国を軽く見てはいけないことを米国に思い出させた。韓国政府の支援がなければ、トランプ政権の対北朝鮮政策は持続できないのだ。

これは重要だ。北朝鮮はトランプ大統領の外交政策の目玉になったのだから。米国はこの孤独な国にかつて科された中で最も厳しく包括的な制裁を結集させ、一方で軍事行動をちらつかせることで、同国を核交渉の席に着かせることができると期待している。

これはトランプ氏がこれまでに行った外交・政治的取り組みの中で最も有効だ。トランプ政権は毎年恒例の軍事演習中にB1爆撃機とF35戦闘機を朝鮮半島に移動させた。中国からインドネシアに至る国に外交の手を伸ばした。国防総省、国務省、ホワイトハウスの当局者による講演の場を設け、政府が路線を外れないようにした。

トランプ政権、とりわけ大統領は自制心に欠けるため、この種の調和的な動きができないと見られている。だが北朝鮮を巡るプロセスが比較的うまくいったところを見ると、トランプ氏とスタッフは一部に批判されるよりも巧みに米国の力という複雑な機械を操作できるのかもしれない。

それでも、どれほど厳しくても制裁によって北朝鮮の政権に核兵器を放棄させることができるとは思えない。核兵器は金王朝にとって最大の功績であるだけでなく、長命のカギだからだ。1990年代の広範な飢饉(ききん)では人口2300万人のうち最大300万人が死亡した。だが政権は権力掌握を緩めることも、路線を変更することもなかった。大勢の人が餓死するのを平気で見ている政府が、経済圧力を受けて変わるとは考えにくい。

だが軍事オプションは魅力的とは言い難い。歴代大統領は、核を持たない北朝鮮に戦争を仕掛けるアイデアを拒絶した。数十の核兵器を保有するようになったからといって攻撃に出るアイデアは、さらに魅力が薄い。戦争になれば、北朝鮮はソウルや東京を壊滅させかねない。中国が介入し、紛争が拡大する恐れもある。リスクは非常に大きく、計り知れない。米国が開戦の構えであると韓国国民が信じれば、文氏は自国が巻き込まれないよう迅速な動きに出るかもしれない。韓国政府からすれば、米国との同盟は北朝鮮との戦争を回避するための存在であり、引き起こすためにあるわけではないのだ。

北朝鮮の非核化はそれほど難しい取り組みだ。取り組みが無駄だとか取り組むべきではないと言っているのではない。外交が首脳会談を視野に入れないまま一連の小さなステップを踏むことを意味する場合もある。忍耐強く上り坂を進むうちに、新しい道筋が現れる――そして新たな選択を余儀なくされることもあろう。

この種の遅々とした外交強行軍で重要なのは、米同盟国の結束を維持する必要性だ。冬季五輪の騒動が米政権に知らしめたのは、文氏と協調政策を維持することが今後にとって重要だということだ。金与正氏とその兄が見ているだろう。

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