密通を許せなかった夫が、妻に与えた凄惨な罰

密通を許せなかった夫が、妻に与えた凄惨な罰

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  • 更新日:2017/10/13
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イラスト/フォトライブラリー『江戸の性事情』(ベスト新書)が好評を博す、永井義男氏による寄稿。

俗に「間男代は七両二分」と言われたように、夫ある女と密通したのが発覚しても、男が夫に対して慰謝料七両二分を支払いさえすれば、それで内済(示談)が成立した。 庶民には七両二分は大金だから、実際にはもっと安い金で内済になった。
この結果、いくら密通をしても金さえ払えば後腐れはないという風潮を生んだ。
そんな風潮のなか、金を払って内済が成立しながら、その後に惨劇が起きた密通事件が『藤岡屋日記』に記されている。

角筈村で寺子屋を主宰する樋口鎌右衛門、三十二歳は酒癖が悪く、酔うと粗暴な行動をすることもあった。
女房のお喜和は二十七歳だったが、近所に住む吉五郎という二十五歳の男と密通した。このことは近所でも噂になり、なんとなく樋口の耳にも届いたが、ふたりが密通しているという証拠はない。

弘化四年(1847)三月中旬、樋口が外出先から家に戻ると、留守中にあがりこんだ吉五郎と女房のお喜和がなにやら楽しそうに話をしている。それを見た樋口はカッとなった。
「やはり密通の噂は本当だったか。ふたりとも許さぬ。そこへ直れ」
刀を抜こうとする。その怒鳴り声を聞いて近所の人々が駆けつけ、みなで樋口をなだめた。
けっきょく、吉五郎が樋口にいくばくかの金を払い、内済が成立した。これで一件落着のはずだった。

三月二十一日の夕方、樋口が息子や娘などに命じた。
「みなで、吉五郎の家に行け。吉五郎が待っておる」
やや不審だったが、父親の命令である。息子はじめみなは連れ立って吉五郎の家に行った。ところが、やはり吉五郎の家ではとくに用事はないと言う。
心配になった息子が急いで家に戻ると、母のお喜和の首は切断されてその場に転がっていた。首を失ったお喜和は、手には数珠を持っていたという。

かたわらでは、麻裃を着た父親の樋口が腹部からおびただしい血を流しながらのたうちまわっていた。切腹をはかりながら死にきれなかったのだ。腹部からは内臓が流れ出していたという。
仰天した息子が村役人に知らせ、人々が集まってきた。
樋口はまだ意識があったため、問いに応じて答え、それによると、内済はしたもののやはり女房の密通が許せず、成敗し、自分も自害をはかったのだった。

その後、樋口が死んだのは間違いあるまい。
それにしても、樋口が女房は制裁し、間男の吉五郎は放置したままなのはうなずけないが、これも男と女の心理と考えると理解できる。
現代でも、妻が不倫した場合、夫は不倫相手の男よりも妻に怒りをぶつける。夫が不倫した場合、妻は夫よりも不倫相手の女に怒りをぶつける。樋口鎌右衛門の場合もまったく同じだった。
江戸時代と現代、時代は変わっても男と女の心理は本質的には変わらないと言おうか。

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