軽自動車異変...「新型タント」はなぜ販売1位から6位に転落したのか

軽自動車異変...「新型タント」はなぜ販売1位から6位に転落したのか

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/01/29
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「新型タント」で軽自動車販売に異変アリ…!

2019年の国内販売を振り返ると、新車として売られたクルマの37%が軽自動車だった。国内販売ランキングの上位にも軽自動車が並ぶ。

2019年の販売1位はホンダN-BOX、2位はダイハツタント、3位はスズキスペーシア、4位は日産デイズ+デイズルークスで、ここまではすべて軽自動車だ。

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タント〔photo〕ダイハツメディアサイト

しかもN-BOX、タント、スペーシア、デイズルークスは、すべて全高が1700mmを上まわり、後席側のドアはスライド式になる。同じカテゴリーの背の高い軽自動車が、販売ランキングの上位を独占した。

小型/普通車は、5位になって、ようやくトヨタプリウスが入った。6位は再び軽自動車のダイハツムーヴ+ムーヴキャンバスで、7位は小型車の日産ノートという具合に続く。

この内、N-BOXは国内販売1位の常連だ。

2017/2018/2019年にも連続して1位になった。2015年と2016年の1位はトヨタアクア/トヨタプリウスであったが、N-BOXも2位にランクされ、軽自動車部門では1位に入っている。

そしてN-BOXは、月別の販売ランキングを見ても、現行型が発売された2017年9月以降は一貫して1位を取り続けてきた。年間販売ランキングだけでなく、月別でも1位を譲らない売れ方は凄い。

ところが2019年11月には異変が生じた。タントが2万1096台を販売して、国内販売の1位になったからだ。

N-BOXは1万8805台を販売して2位であった。

新型タント、常識では考えられない「販売格差」

タントは2019年7月にフルモデルチェンジされたから、2017年9月に登場したN-BOXに比べて設計が新しい。

本来なら2019年8月以降は新型タントが販売1位になって不思議はないが、8月と9月はN-BOXに続く2位であった。10月はN-BOXだけでなく、スペーシアとフルモデルチェンジ直後のトヨタカローラシリーズにも抜かれて4位に甘んじている。それがようやく11月にN-BOXを追い抜き、1位になったわけだ。

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タントの車内〔photo〕ダイハツメディアサイト

この後もタントの1位が続くかと思われたが、12月にはさらなる異変がタントを襲った。

1位はN-BOXに戻り、2位はスペーシア、3位はデイズ+デイズルークス、4位はカローラシリーズ、5位はコンパクトSUVの新型トヨタライズになり、タントは何と6位に転落した。

このようにタントの月別販売ランキングは、上下動が激しい。

新型になった2019年8月以降は、2位/2位/4位/1位/6位と推移している。一体どうなっているのか!?

そこで次は月別の対前年比(前年同月との販売台数比較)を見てみる。2019年8月は前年の173%、9月は184%と好調に売れたが、10月は96%で前年を下まわった。11月は再び190%に伸びて、12月は82%に落ち込む。このように販売ランキングと同様、対前年比も乱高下している。

特に11月は190%、12月には82%という販売格差は、常識では考えられない。

ダイハツの「販売店」が語る

そこでダイハツの販売店に尋ねると以下のような返答であった。

「タントは2019年7月に発売されました。安全装備やシートアレンジを充実させましたが、従来型タントを使うお客様は、新型に乗り替えるべきか迷うことが多いです。

そのためにフルモデルチェンジ直後の8月と9月は好調に売れましたが、10月は対前年比が下がりました。この反動もあり11月は大幅に増えたのでしょう。12月には特別仕様車のセレクションシリーズが急遽設定され、モデルの切り替えもあって再び減りました」。

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タントXセレクション〔photo〕ダイハツメディアサイト

2019年の販売台数を見る時に注意したいのは、10月に台風19号が上陸して甚大な被害を被り、クルマの販売どころではなかったことだ。

消費増税も行われ、10月の国内自動車販売台数は前年に比べて25%減った。10月には特殊な事情が重なったから、通常の販売台数と同一には見られない。

そうなると10月に減った車種は、11月に反動で増えることもある。タントの11月の売れ行きが前年の190%に達した背景にも、10月に減少した反動があるだろう。

ダイハツの販売店が指摘したセレクションシリーズの設定も見逃せない。標準ボディとエアロパーツを装着したカスタムの両方に用意された買い得な特別仕様車だ。

Xセレクションは、標準ボディのXに360度スーパーUV&IRカットガラスなどを含むコンフォータブルパック(3万8500円)を加えながら、価格はXと同じ149万500円に抑えた。装備を加えたのに価格は据え置いたから割安だ。

モデル末期を思わせる格安の特別仕様車

このような格安な特別仕様車は、一般的には発売から数年を経て、販売台数が下がった時に設定する。発売からわずか5か月というのは非常に珍しい。

Xセレクションを同価格で加えたら、発売時に用意したベースグレードのXは売れなくなり、グレード構成も崩れるからだ。

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タント カスタムX セレクション インパネ〔photo〕ダイハツメディアサイト

ちなみにダイハツの販売店では「セレクションシリーズは12月に急遽設定された」と述べている。おそらくメーカーは、発売から11月頃の売れ行きを見て危機感を募らせ、大急ぎで割安なセレクションシリーズを用意したのだろう。

相当に焦らない限り、新型車の発売直後にこのような特別仕様車は追加しない。

そしてセレクションシリーズは買い得だから、タントの生産も、既存のグレードからセレクションシリーズに移る。12月はその切り替わりに当たり、販売台数が落ち込んだ。従って1月以降の販売統計では、タントの売れ行きが再び伸びる可能性も高い。

タントの販売台数が発売早々に伸び悩み、モデル末期を思わせる格安の特別仕様車まで設定した背景には、複数の理由がある。

まずタントの商品力が、購入の決め手に欠けることだ。先代型の欠点だった後席の座り心地の悪さ、操舵感の鈍さ、不満を感じた走行安定性は大幅に改善されて安全装備も向上したが、先代型から乗り替える決定的なメリットを見つけにくい。

ほかの車種のフルモデルチェンジであれば、この内容でも問題ないが、全高が1700mmを超える軽自動車は前述の通り競争が激しい。

特にライバル車のN-BOXは、2年前の発売時点で運転支援機能などを充実させ、荷室の床もタントより低く積載容量は大きい。内装は上質だ。スペーシアはマイルドハイブリッドの採用と軽いボディで燃費が優れ、外観をSUV風に変更したスペーシアギアもそろえる。

もうひとつ「有力なセールスポイント」が欲しい

このようなライバル車に比べて、新型タントはフルモデルチェンジの内容とクルマ全体の雰囲気が地味に思える。

発売時点で、ダイハツの内部からも「ミラクルオープンドア(ピラーを内蔵したスライドドアで、前後ともにドアを開くと開口幅が1490mmに達する)を左側だけでなく右側にも付けるような革新性がないと、N-BOXを抜くのは難しいかも知れません」という声が聞かれた。

新型タントには、もうひとつ有力なセールスポイントが欲しい。

また先代タントは、モデル末期だった2018年12月にVSシリーズという格安な特別仕様車を加え、2019年に入って売れ行きをさらに伸ばしていた。

フルモデルチェンジ直前の2019年上半期(1~6月)は、対前年比が114%で、販売ランキング順位もN-BOX、スペーシアに次ぐ3位に入っている。このように先代型が最後まで好調に売れると、新型は「売れ行きが鈍い」と見られやすい。

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タント X”VS SAⅢ” フロント〔photo〕ダイハツメディアサイト

もともとタントのような実用指向の車種は、新型車が登場しても、ユーザーが購買意欲を刺激されて大急ぎで買うことはない。車検期間の満了など、相応の時期が到来して購入する。

従って優れた商品であれば、発売直後の売れ行きは冴えなくても、その後に淡々と売れ続けて息の長い人気車になる。新型タントが購入の決め手に欠けるのは確かだが、人気度の結論はまだ出ていない。

それからライバル車のN-BOXも、売れ方に問題がある。

優れた商品で好調に売れるのは納得できるが、N-BOXが販売が伸びた結果、ほかのホンダ車が売れなくなった。

「軽自動車税」の問題が浮上へ…?

その結果、2019年に国内で売られたホンダ車の51%が軽自動車になっている。さらにいえば、N-BOXだけでも、国内で売られたホンダ車の35%に達するのだ。

従って何かのトラブルでN-BOXの生産が滞ると、ホンダの国内販売は65%に激減する。今のホンダはN-BOXに頼りすぎており、小型/普通車の売れ行きを伸ばさねばならない。

今のように国内販売の40%近くを軽自動車が占める状態が続くと「軽自動車の税金を高めろ」という話になる。

すでに軽自動車税は以前の年額7200円から1万800円に値上げされ、初度届け出から13年を超えた車両は、1万2900円まで増税する悪法も適用されている。軽自動車の自動車重量税も、車検時の2年分が通常は5000~6600円だが、13年を超えると8200~8800円に高騰するのだ。

このまま軽自動車の販売比率が増え続けると、軽自動車関連の税金がますます高くなってしまう。公共の交通機関が未発達な地域では、高齢者が古い軽自動車を使って日常的な移動をしているから、軽自動車税などの高騰はお年寄りの生活を直撃する。

悪いのは税金であって軽自動車ではないが、メーカーはそこまで考える必要がある。

日本自動車工業会は「自動車税の恒久減税を勝ち取った」と喜んでいるが、軽自動車関連の税金を高めないことは、もっと大切だ。13年を超えた車両の増税も廃止しなければならない。「古いクルマを増税すれば、新車が売れて有り難い」と日本自動車工業会が考えていたら、とんでもない話だ。

軽自動車の「使命」

新型タントが販売1位から6位に転落した背景には、タントの商品力とライバル争いが絡むが、軽自動車の販売比率がさらに高まると、軽自動車規格が根底から揺らぎかねない。

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タント〔photo〕ダイハツメディアサイト

「軽自動車は誰のために存在するのか」「軽自動車の税金や維持費が高まるとどのような影響が生じるのか」――。

国と自動車メーカーや業界は、軽自動車ユーザーのことをもっと親身に考えて欲しい。

軽自動車は小型/普通車と異なり、福祉車両の性格を併せ持つ。軽自動車がこの使命を忘れては困る。

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