楽天、携帯電話事業に勝算はあるのか

楽天、携帯電話事業に勝算はあるのか

  • マイナビニュース
  • 更新日:2018/02/14
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●楽天経済圏の超拡大

楽天は2月13日、決算発表会を開催した。この中で、2019年にスタートする予定の携帯電話事業についても触れられた。多くの業界関係者が携帯事業への参入を疑問視しているが、楽天はどのような勝算を描いているのだろうか。

○他事業とのシナジーで新たな事業の柱へ

楽天がMNOに参入するというニュースは、昨年12月に報道され、楽天側もすぐにこれを肯定したため、大きな話題を呼んだ。ソフトバンクがボーダフォンの日本事業を買収したのが2006年、以来11年にわたって日本の携帯電話事業は事実上、3社の独占状態だった。そこへ日本でも屈指のIT企業が参入するとあっては、注目を集めないわけにはいかない。総務省が新たに割り当てる1.7GHz帯および3.4GHz帯を取得して、2019年度に4G(LTE)の携帯電話事業に参入するという計画だ。

しかし、話題の中心はもっぱら「なぜ楽天は今更携帯事業に参入するのか。勝算はあるのか」という点に絞られた。常識的に考えて、すでに日本中にネットワークを張り巡らせ、数千万人の会員を擁するMNO3社と同じ土俵で渡り合うのはコスト的に見合うとは思えない。それではなぜ楽天は、多大な設備投資を行ってでも、この過当競争の市場に参入するのだろうか?

楽天の決算発表会の資料によると、楽天が目指しているのは「楽天経済圏の超拡大」であり、これは9000万人を超える会員数とその会員から得られるデータ、そして楽天ブランドとのシナジー効果により生み出されるとしている。

たとえば楽天カードは利用すると楽天ポイントがたまるが、楽天モバイルの支払いが楽天ポイントで充当できることもあり、楽天モバイルユーザーにおける楽天カードの保有率は非常に高い。つまり、楽天モバイルのユーザーは楽天カードや楽天ポイントを通じて楽天に有効な購買データなどを提供する優良顧客となり、楽天のビッグデータ収集に一役買っているわけだ。

●データが生み出す効果

楽天は今後、広告事業を拡大し、自社サービス内だけでなく外部へも積極的に出稿したり、自社流通網の整備の中でクラウドソーシングも行なったりすることを考えているという。これらの事業においては、モバイルの担う役割、特に位置情報や移動データが大きな役割を果たす。

たとえばNTTドコモは自社網ユーザーの移動データも取得しており、このデータを基にした「モバイル空間統計」を他社に販売しているが、MVNOにもこうしたデータが提供されているかどうかは不明(各社あまり積極的に利用しているところが見られないので、提供されていない可能性が高い)。

楽天がもし直接自社ネットワークで運営した場合、こうしたユーザーの位置データや移動データも取得できることになる。これはマーケティング的に見て非常に重要なデータになるだろう。

結論としては、楽天は携帯電話事業そのもので稼ぐつもりではなく(当然黒字化は視野に入れているだろうが)、そこから得られるデータやシナジー効果の大きさを重要視している。それは現在MNO各社が進めている多角化と目的は同じであり、スタートの方向が逆(既存サービスを繋ぐためのモバイルネットワークの整備)になっているだけなのだろう。

○設備投資6000億円は十分か

楽天はMNO事業参入にあたり、新たに全国にネットワークをはりめぐらせるための予算として、サービス開始までに2000億、2025年までに6000億円程度を計画している。

特に後半の「6000億」の数字が一人歩きしているが、楽天側は「あくまで目安であり、実際には上下する可能性がある」とはしているものの、決算では内訳も公開されており、また設備メーカーにはすでに第一次の見積もりも取っているということから、概ねこの範囲になることは間違いない。

他のMNOを見てみると、各社とも毎年設備投資費に4000〜5000億円を計上している。これと比べ、楽天の6000億円は2025年までの設備だけでなく、10年ぶんのユーザー増に対応するための予算も含まれている。

単純に割れば2020〜2025年で年間1000億円ということになるが、そもそもほぼゼロからスタートするサービスだ。すでに数千万のユーザーを抱える既存MNOとは、ユーザーの母数が違えば収容ユーザーの設計も異なることから、単純に予算を比較するのは難しい。

それでは似たような規模のサービスはなかったかと過去を振り返ると、イーモバイルとUQ WiMAXの例がある。イーモバイルは、2008年3月期の決算資料によると、モバイル事業向けの設備投資費が四半期で86億円。年間を通じても300億円程度という規模だ。またWiMAXについては、2007年度末時点での計画段階だが、2008年度の商用サービス開始時には東京23区と横浜を中心に、京都、名古屋、大阪などに1000局程度、2009年度に政令指定都市へ3000局程度、2010年度に全国の主要都市をカバーするよう拡大し、トータルで1500億円程度としている。

こうした例を見るに、楽天のMNO事業も、いきなり全国展開するのではなく、おそらくは東名阪を手始めに大都市から地方都市へとネットワークを広げていく計画だと予測できる。単純に予算だけ比べれば楽天のほうが数倍大きいので、最初から大都市圏をカバーする可能性もあるし、用地取得などを考えても現実的な予算だとも思える。

●楽天のキャリア事業への期待

○楽天モバイルとの関係は?

ひとつ気になったのは、現在ドコモのMVNOとして運営中の楽天モバイルとの関係だ。質疑応答で、MVNOのユーザーは設備の準備が整い次第、MNOへ移行するとの説明があった。

いうまでもなくドコモはすでに全国のかなり広い範囲で利用できる巨大なネットワークを持っており、800MHz、900MHzというエリア効率の高いプラチナバンドも保持している。しかし楽天が取得を目指す1.7GHz帯と3.4GHz帯はそこまでエリア効率が高くないため、ドコモ網を使っていた人が移行すると、「つながらない」と感じかねない。

このため、しばらくはMVNOとMNOの二本立て、端末によっては両社の回線をローミングして使えるような方法がとられるのではないかと見ている(2社の契約上問題がなければ、だが)。

○プラン設定によっては台風の目となる可能性も

現在の楽天モバイルは、前述のようにMVNOではシェアトップの座を占めている。全国に200店舗弱ながら直接販売網も構築するなど、MNOとして展開する下地はきちんとおさえてきている。ネットワークエリアの狭さなど不安な要素はあるにせよ、ほかのMNO各社にないサービスが受けられるのであれば、案外ユーザーからの指示は得られるのではないだろうか。

特に料金プランのシンプルさは重要で、現在のように楽天ポイントで電話代を充当できるなら、一気に会員数を倍増する可能性もあるだろう。

また、楽天が拡大を計画する広告事業の分野でも、モバイルの占める重要度は高まっており、こうしたグループ内のシナジー効果が期待できるのであれば、楽天としては設備投資の金額も正当化できるのだろう。

いずれにしてもMVNOが一定のシェアを確保しつつも、まだまだMNO支配の構図が強い日本の携帯電話市場に、大きな変革をもたらす楔が打ち込まれるいい機会だ。楽天の思惑がどこまで通用するか、期待して注目したい。

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