イタリアが「パンデミックの震源地」と成り果てたシンプルな理由

イタリアが「パンデミックの震源地」と成り果てたシンプルな理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/03/25
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「日常生活を変えないように」

どうやらイタリアでは、「政治の失敗」が新型コロナウイルスの爆発的感染を招いてしまったようだ。

https://www.nytimes.com/2020/03/21/world/europe/italy-coronavirus-center-lessons.html

上記ニューヨーク・タイムズ紙の報道によれば、当初、イタリアの政治家たちはコロナ・ウイルスの影響で自国経済が悪化することを何よりも恐れた。そのためウイルスの脅威を過小評価し、「感染を恐れて日常生活を変えないように」と国民に呼びかけたという。

中でもイタリア与党「民主党」のニコラ・ジンガレッティ党首は先月27日、「ミラノでの食前酒」と題した自撮り写真をフェイスブックに投稿。パーティで若者らと元気よく乾杯する自身の映像を公開した。

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https://www.iltempo.it/cronache/2020/03/07/news/selvaggia-lucarelli-nicola-zingaretti-positivo-coronavirus-aperitivo-notte-delle-bacchette-1292060/

それから10日後、ジンガレッティ党首は自身が新型コロナウイルスに感染したことをフェイスブックを通じて明らかにし、国民に警戒を呼び掛けた。

しかし、とき既に遅し。この党首をはじめ自国の政治家たちから「ウイルスは恐れるに足らず」という誤ったメッセージを受け取ったイタリア国民は、ナイト・ライフなど普段通りの生活を楽しんだ。

結果、瞬く間にウイルスは広がり、3月24日現在、感染者は累計6万3927人以上、死者数は6077人以上に達している。

感染拡大の背景にあるもの

イタリアの政治家がコロナウイルスの脅威よりも経済を重視した背景には、恐らく自国の高い失業率があるだろう。特に若者の失業率は深刻で、イタリアでは大卒者の10人に4人が卒業後3年以内に仕事を見つけることができないと言われる。

こうした若者たちに職(収入)を確保すべく努めるか、それとも感染の拡大を食い止めるか――苦しい二者択一を迫られたイタリアの政治家らは感染拡大の危険性に目をつむり、普段通りの経済活動を続行する道を選んだようだ。

勿論、イタリアの科学者たちはジュゼッペ・コンテ首相ら政府関係者に対し、当初から感染の強力な封じ込めを進言した。ミラノをはじめイタリア各地に設置された対策本部では、疫病学者など専門家チームがかなり早い時期からビデオ会議を通じて、イタリア政府の関係者に大規模イベント禁止など断固たる措置の必要性を訴えた。

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〔PHOTO〕gettyimages

専門家チームは「それを早くしないと、いずれ病院など医療システムが崩壊する」と警告した。しかし彼ら科学者からの度重なる要請は、その度に経済を優先するイタリア政府から却下された。

首相や閣僚、政府高官らはウイルスの脅威を見くびり、国民の間に誤った安心感を植え付けた。こうした楽観的な幻想と、封じ込め対策における初動の遅れが、後の爆発的感染を引き起こしたと見られている。

やがて科学者たちが警告した通り、イタリアの医療システムは崩壊。ウイルス感染による死者数が一日当たり数百人に上るようになると、イタリア政府は慌てて軍隊を動員し、北部にあるロンバルディ州の封鎖を強行した。

それでも感染拡大の勢いが止まらないことを知ると、今度は全国の公園を封鎖、市民の散歩やジョギングなど外出活動も禁止した。最終的にはライフラインに関係する一部分野を例外に、あらゆる生産拠点(工場)を閉鎖するなど経済活動の停止にまで追い込まれた。

が、いずれも対応が後手に回り、感染拡大は手がつけられなくなった。

優先順位を誤ると全てを失う

他にも理由はあるようだ。近年、イタリアと中国の結び付きは強い。特にイタリア北部には中国からの移民が多数暮らしており、春節には中国本土に帰省して、それが終わるとまたイタリアに戻ってくる。

このためイタリアの政府高官らはコンテ首相に対し、春節を終えて中国から帰国した北部の子供たちを一定期間だけ隔離することを要請した。しかし、これらの高官がいずれも政治的右派に属していたため、逆に左派の関係者が、こうした子供たちの隔離を「ポピュリスト的な扇情政策」と批判。結果、首相は隔離要請を却下したが、これも初期の感染拡大を招いた一因と見られている。

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〔PHOTO〕gettyimages

北部の地域首長(regional president)は、こう語っている。

「もし我々が最初から全ての活動を停止していれば、それから2週間後には恐らく勝利を祝っていたはずだ」

本当にそれでウイルスを封じ込められたかどうか今となっては「神のみぞ知る」だが、この発言の意図は明らかだ。

国民にとって経済が重要なのは言うまでもないが、その前に感染を食い止めることが先決。優先順位を誤ると元も子もなくなってしまうということが、イタリアのケースから学ぶべき教訓だろう。

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