私が飲食店の「デカ盛りブーム」にドン引きしてしまう理由

私が飲食店の「デカ盛りブーム」にドン引きしてしまう理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/01/29
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「デカ盛り」を喜ぶ日本人

少食か大食か、どちらかと問われれば私は大食の部類に入る。どんなに洒落たおいしい店でも、出された皿の上に料理がちょっとしかのっていないと、もの足りなさを感じてしまう。「さあさあ、お腹いっぱい食べてね」といわんばかりの盛りっぷりのいい店が好きである。

そんな食いしん坊の私だが、昨今「それはさすがに……」と引いてしまう店が目につくようになった。いわゆる「デカ盛り」「メガ盛り」をウリ文句にする店である。

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具がタワーのように積まれた丼、これでもかとクリームとフルーツで飾り立てたパンケーキ。一食の適量をはるかに凌駕している。

記憶に残っているのは、ローストビーフ丼のブームだ。街で長蛇の列を見て、なんだろうと思ったら、赤々としたローストビーフがうずたかく盛られた丼の写真が目に飛び込んできた。「肉をお腹いっぱい食べたい!」という人々の欲望を剥きだしにしたような生々しいビジュアルに、私は正直、食指が動かなかった。

ローストビーフ丼のブームが起きたのは、2015年頃のこと。神戸発祥の肉料理店「レッドロック」が、2014年に東京へ進出したのを機に、次々と似たような店が登場した。

それから5年あまり。常軌を逸した量のメニューで耳目を集めようとする飲食店は後を絶たない。その現象には、メディアも大いに貢献している。

テレビのバラエティ番組では、「デカ盛り」メニューにタレントたちが「無理~!」などとはしゃぎながら挑戦する。ネットではデカ盛りや、用意した膨大な食べものを平らげるさまを延々と映し出す「大食いYouTuber」が人気だ。

フードロスが社会問題になり、廃棄する食品をできるだけ減らそうという取り組みが進む一方で、人々は洗面器みたいな大皿に盛られた料理に喜んでいる。いったいこれはどういうことなんだろう。

江戸時代から行われていた大食い競争

何をいまさら、と思う人もいるかもしれない。テレビの大食い番組も、制限時間何分という巨大なチャレンジメニューを出す店もずいぶん前からあるじゃないか、と。たしかにそうだ。

元祖大食い番組は、1989年にテレビ東京がスタートさせた「全国大食い選手権」。これがのちに『TVチャンピオン』に引き継がれ、大食い、早食い番組の先駆けにして名物企画となった。

さらに大食い競争にかぎっていえば、江戸時代の文化・文政年間に盛んに行われていたことがわかっている。

有名なのは、文化14(1817)年に両国柳橋の料亭「万八楼(まんぱちろう)」で開かれた大酒、大食の会だ。多くの見物客が見守るなか、酒組、菓子組、飯組、蕎麦組とジャンル別に分かれて競ったと、文政8(1825)年に成立した曲亭馬琴ら編の随筆集『兎園小説』に記されている(ただし食べた量の記録の真偽のほどは定かではない)。

このように「大食い」はかなり昔から、エンターテインメントとして消費されてきた歴史があるのだ。

ただ、最近は「食べる側」と「見る側」の境界がどんどん曖昧になってきているのではないか。以前は、胃袋に自信がある人間が挑戦するものだったのが、今はもっと多くの人がカジュアルに手を出している気がするのだ。いわば大食いエンターテインメントの大衆化である。

それを加速させた一つに、2007年頃に起きた「デカ盛り」「メガ盛り」ブームがある。

大食いを加速させたのは誰?

波は、2005年頃からじわじわときていた。2005年にテレビ東京の『TVチャンピオン』で「デカ盛り王選手権」が放映され、まず「デカ盛り」という言葉が市民権を得る。『TVチャンピオン』といえば、先にふれた大食い企画が有名だが、この企画で競われるのは大食いではなく、デカ盛りメニューやそれを提供する店の知識だ。

じつは2005年というのは、しばらく放映されていなかった大食い番組が復活した年でもある。

発端は2002年に愛知県の中学生が給食で、ロールパンの早食い競争をして喉につまらせ、死亡するという事故が起きたことだった。これを機に各局とも放送を自粛。テレビ東京が「大食い王決定戦」の名で、大食い番組を復活させたのが、2005年だったのだ。

そうして大食いが再び注目されるなか、マクドナルドから4枚のパテを挟んだ巨大ハンバーガー「メガマック」が登場する。2006年に首都圏での試験販売を経て、2007年初頭に売り出されるや、またたくまに話題となった。

その流れに牛丼チェーン店も乗り、「メガ牛丼」「メガ盛り」が出現。巨大サイズ化は、カップラーメン、アイスなどさまざまな食品に飛び火した。こうして2007年には、「大盛り」を通り越し、極端に量が多い「デカ盛り」「メガ盛り」ブームが起きたのだ。

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そしてもう一つ加速要因となったのが、インスタとYouTubeの普及だ。

流行語大賞で「インスタ映え」が大賞を受賞し、「YouTube」もノミネートされたのは、2017年のこと。

ソーシャルメディアのなかで目立つには、多くの人に親しみやすいテーマで、なおかつインパクトのあるビジュアルが求められる。それでいうと、「食」という万人共通の話題を土台にした「デカ盛り」の写真や、大食いの映像は、もってこいのコンテンツだ。

経済状況の悪化も影響しているのか

事実、大食いYoutuberの人気は、日本だけではなく、世界的な現象だ。その発端は、2010年頃から韓国で流行った、食べる様子を視聴者とやりとりしながらライブ配信する「マクバン」と呼ばれる動画である。

マクバンとは、韓国語で「食べる」を意味する「モクダ(muok-da)」と、「放送する」を意味する「バンソン(bangsong)」を合わせた造語だ。これが世界に広まり、Youtubeで一つのジャンルを確立するまでになった。

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そこへかねてからの日本の「デカ盛り」ブームが合流。「#デカ盛り」というハッシュタグのついた写真や、人気大食いyoutuberの映像が日々アップされるとなれば、当然、宣伝効果を狙って盛りに盛った「インスタ映え」料理をウリにする店も出てくる。それがまた客によってアップされるという循環を繰り返し、客側と店側が相互に作用し合い、増幅してきた。

ただ、そうした風潮の理由をソーシャルメディア時代の自己顕示欲だけに求めるのは、短絡的すぎる。また、2007年の「デカ盛り」「メガ盛り」ブームのときに言われたように、健康志向の反動の一言でも片付けられないだろう。

そこにはやはり、経済状況の悪化も少なからず影響しているのではないか。

デカ盛りの実食レポートを読んでいると、たびたび「コスパ」という言葉に出くわす。どこそこの店はボリュームがあるけれど、値段が高いからコスパが悪い。対してあそこの店は、1000円ぐらいでこのボリュームだからコスパがいい。デカ盛りの評価ポイントの一つとして、コスパのよさが挙げられている。

食べ物は人の命に関わるものだから

漫画に出てくるようなてんこ盛りのご飯や、どでかいトンカツ、並々と具が盛られたラーメン。安く満腹を得たいという素朴ながらも強い欲求の肥大化した形が「デカ盛り」とは言えないか。それを自分が食べるのもよし、人が食べるのを見てスカッとするのもよし。そんなふうに消費されている気がするのだ。

不況で人がものを買わなくなったと言われて久しいが、食べものだけは買わなくては生きていけない。食べものはいちばん身近な消費材であり、楽しみでもある。だからそこに商機を見出し、積極的に話題を仕掛ける輩も登場する。

だが、「デカ盛り」を見ていてどこか引いてしまうのは、食べものは楽しみであると同時に、生命を維持する役割も担っていると考えるからだ。

あるとき、特大のカップ焼きそばをコンビニの売り場で目にして、ひょいと食品成分表示を見て驚愕した。カロリーは成人男性の1日の摂取目標に届きそうなぐらいなのはもちろん、塩分にいたっては1日の目標量を大幅に上回っている。ちょうど減塩を推奨する本をまとめていたときでもあったので、塩分量の多さにとっさに「高血圧……」と連想してしまった。

ならば、写真で見るカレーやラーメンの「デカ盛り」のカロリーや塩分量はいかに。考えるとなんともおそろしい。

人の好き好きではないか、と言ってしまえばそれまでかもしれない。でも人の生命にかかわるものを提供している以上、店側にどこかに節度は必要なのではないか。そのほうが客を呼べるから、客が喜ぶから、でいいのだろうか。

「おいしく食べる」がどういうことかを、あらためて見直す時期に来ているのではないか。そんな思いが、ここ数日、デカ盛り画像ばかりを目にするなかで湧いてきた。

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